34 / 34
姫様のプレゼント大作戦!⑤
しおりを挟む「そろそろ帰りましょうか」
「ええ⋯⋯」
祭りを満喫した俺たちは、すっかり夕暮れ色に染まった道を少し距離を空けて歩いて行く。
ふと隣を歩く姫様を見ると、無意識だろうか、彼女は自らの耳元をしきりに気にしている様子で、俺がプレゼントしたイヤリングに触れていた。
そんな姫様の姿を見て、上がりそうになる口元を必死に抑え、平然を装う。
——なんだかんだ言いつつも、気に入ってくれたんだな。⋯⋯それに、夕日を浴びる横顔がすごく⋯⋯綺麗だ。
夕焼けをたっぷりと浴びた姫様の金色の睫毛は、キラキラと光を反射して輝いていた。その光景に目がチカチカと眩む。
すると、ジーッと横顔を見つめる俺の視線に気付いた姫様は、此方を向いて頬を膨らませた。
「レオ、さっきから何なんですっ?」
「ふふっ⋯⋯なんでもございませんよ」
可愛らしい姫様の反応に、思わず笑みが溢れる。
「もうっ! 笑っているではありませんか!」
「姫様の気のせいですよ」
ここに来るまではあんなにも憂鬱だったのに、まるでその事が嘘だったように、姫様と2人でくだらない事で言い合いながら歩く帰り道は楽しかった。
✳︎
城に着くと、辺りはしんと静まり返っており、廊下にはぼんやりとした灯りがちらほらと見えるだけであった。
——なんだ、この妙な静けさは⋯⋯? ⋯⋯まさか、また盗賊が入ったのか!?
先程までの和やかな雰囲気から一転して、ぴんと空気が張り詰める。
「姫様、私から決して離れないで下さい」
そう言って俺は、彼女を庇うように前に立ち、懐に忍ばせていた短剣を手に取って、握りしめた。
「レオ⋯⋯⋯⋯」
しかし、そんな俺の言葉に、姫様はなんだか微妙な顔をしており、その事に多少の引っかかりを覚えたが今はそんな場合では無いと、構わず彼女の手を引く。
コツコツと静まり返る廊下に、俺と姫様の足音だけが響いた。
——春告祭の短い間に、二度も盗賊に入られるとは情けない。今後は城の警備をもっと強化しなければな⋯⋯。
そう思いながら侵入者がいるであろう、唯一、扉から光が漏れ出ている部屋を目指す。
そこには数人が潜んでいる気配がして、出来る限り息を殺して近づいた。
出来ることなら、姫様を安全な城の外へと逃したいが、何処に奴らが潜んでいるかもわからないところで彼女を1人にするのは危険だ。
それなら、俺の側にいた方が何倍も安全である。
部屋に向かう途中、これから起こるであろう戦いに備えて、壁に飾ってあった剣をすらりと抜いた。
「あっ⋯⋯! レオ、それは⋯⋯!」
そんな俺を見て、姫様は何故か焦っているようだ。
「? 姫様、お静かに。ご不安なのは分かりますが、貴女の事はこの私が絶対にお守りいたしますのでご安心ください」
「レオ⋯⋯⋯⋯」
「さ、姫様は私の後ろに。すぐに終わります。⋯⋯どうか、私を信じてください」
不安に揺れる姫様の瞳を見て、俺は彼女を安心させるように、出来るだけ優しく言った。
そして、ごくりと息を飲み、バンっと勢いよく扉を開け放つ。
しかし、そんな俺を待っていたのは予想だにしなかった光景であった。
おそらく次あたりで終わる予定です。次回も読んでくださると嬉しいです!
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
異世界の花嫁?お断りします。
momo6
恋愛
三十路を過ぎたOL 椿(つばき)は帰宅後、地震に見舞われる。気付いたら異世界にいた。
そこで出逢った王子に求婚を申し込まれましたけど、
知らない人と結婚なんてお断りです。
貞操の危機を感じ、逃げ出した先に居たのは妖精王ですって?
甘ったるい愛を囁いてもダメです。
異世界に来たなら、この世界を楽しむのが先です!!
恋愛よりも衣食住。これが大事です!
お金が無くては生活出来ません!働いて稼いで、美味しい物を食べるんです(๑>◡<๑)
・・・えっ?全部ある?
働かなくてもいい?
ーーー惑わされません!甘い誘惑には罠が付き物です!
*****
目に止めていただき、ありがとうございます(〃ω〃)
未熟な所もありますが 楽しんで頂けたから幸いです。
転生した女性騎士は隣国の王太子に愛される!?
桜
恋愛
仕事帰りの夜道で交通事故で死亡。転生先で家族に愛されながらも武術を極めながら育って行った。ある日突然の出会いから隣国の王太子に見染められ、溺愛されることに……
幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない
ラム猫
恋愛
幼い頃に、セリフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セリフィアはそれを喜んで受け入れた。
その後、十年以上彼と再会することはなかった。
三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セリフィアはその場を離れた。
しかし治療師として働いているセリフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。
それどころか、シルヴァードはセリフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。
「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」
「お願い、セリフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」
※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
うっかり結婚を承諾したら……。
翠月るるな
恋愛
「結婚しようよ」
なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。
相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。
白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。
実際は思った感じではなくて──?
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
【完結】微笑みを絶やさない王太子殿下の意外な心の声
miniko
恋愛
王太子の婚約者であるアンジェリクは、ある日、彼の乳兄弟から怪しげな魔道具のペンダントを渡される。
若干の疑念を持ちつつも「婚約者との絆が深まる道具だ」と言われて興味が湧いてしまう。
それを持ったまま夜会に出席すると、いつも穏やかに微笑む王太子の意外な心の声が、頭の中に直接聞こえてきて・・・。
※本作は『氷の仮面を付けた婚約者と王太子の話』の続編となります。
本作のみでもお楽しみ頂ける仕様となっておりますが、どちらも短いお話ですので、本編の方もお読み頂けると嬉しいです。
※4話でサクッと完結します。
麗しのラシェール
真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」
わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。
ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる?
これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。
…………………………………………………………………………………………
短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる