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迷いの森編
リュカとヤキモチと特別な銃弾②
しおりを挟む「これが頼まれていたものだ」
リュカはそう言って、桐の箱を開けた。
「わ⋯⋯! すごい、完璧だわ!!」
中の実包を見たアリスは、思わず感嘆のため息を漏らす。
「さ、触ってみても良い?」
アリスは興奮を隠せないようすでリュカに尋ねた。
「ああ、もちろんだ。これはお前の為に作らせたのだからな」
「ありがとう、リュカ!」
アリスは満面の笑みでそう言うと、恐る恐る箱の中の実包を手に取る。
弾丸の外側を覆うように取り付けられたサボット(プラスチック製のカバー)の中には、アリスの持つ実包と寸分違わない形の弾頭が詰まっていた。
太陽の光を受けて僅かに青みを帯びたそれがキラリと輝く。
(なんだか、いつもと違う気がするような⋯⋯?)
持ち上げた時の質量に違和感を覚えたアリスは、自身の持つ実包をもう片方の手に取り比べてみる。
「少しだけ軽い⋯⋯?」
「ああ、この金属は他の金属に比べて軽く、耐久性に優れているのが特徴なんだ。⋯⋯これでは使い物にならないか?」
「ううん、多少飛距離には影響があるかもしれないけれど⋯⋯慣れれば問題ないと思うわ! 本当にありがとう、リュカ!!」
「それでは、首都の鍛治師にこれと同じものを作るよう言っておこう」
子どものようにはしゃぐアリスを見たリュカは、微笑ましげな視線でそのようすを見つめ、フッと柔らかい笑みを漏らした。
✳︎✳︎✳︎
試作品の実包を手に、アリスの部屋を訪ねてきたリュカと世間話に花を咲かせてしばらく経った頃。
リュカはそれまでの楽しげな雰囲気から一点して、何かを言い出すタイミングを窺《うかが》っているようにソワソワと落ち着きのないようすであった。
「⋯⋯リュカ? さっきからどうしたの?」
見兼ねたアリスがそう言うと、リュカは彼らしからぬようすで何度も口を閉じたり開いたりしては言いづらそうに口をつぐむ。
しかし、いつまでもそうしていては埒《らち》が明かないと思ったのだろうか、しばらくの沈黙の後、リュカはようやく口を開いた。
「⋯⋯アリス。俺たちがこんなにゆっくり話すのは久しぶりだな」
「え⋯⋯? そうだったかしら?」
「⋯⋯ああ。最近はリアムともすっかり打ち解けただろう? それに、ブランとノワールたちにかかりきりじゃないか。⋯⋯最初にお前と出会ったのは俺だというのに」
最後の方は話すというよりも呟きに近く、小声であったがアリスの耳にははっきりと届いた。
「⋯⋯⋯⋯」
予想外のリュカの言葉に、驚きを隠せないアリスはポカンと口を開ける。
「最近の俺は何処かおかしいんだ。⋯⋯お前が他の者と親しげにしているところを見ると、胸の辺りにもやもやと言い知れない不可解な感情が広がるんだ」
そう言って、リュカは表情を翳らせ、何かに縋るような仕草で自身の胸を抑えたのだった。
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