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1章
第13話 温泉を取り戻せ!(前編)
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「いや~悪いね~。温泉止まっちまってさ~。営業できないんだよ。ホント、悪いね」
「ガーン!」
喜び勇んで温泉へ向かったところ、なんと温泉は営業を停止していた。
「で、でも、だって、お洋服屋さんが「堪能していってくれ」って!」
「それが突然、源泉が止まっちまったみたいでさぁ」
「え? 源泉?」
「温泉の湧き出るところだよ。たぶん闇の影響だろうって組合でも対処を検討し始めたんだけど、でもまあ闇相手じゃどうしようもないしなぁ……」
店主さんはがっくりと肩を落として首を振った。
「この街の温泉も、もう終わりかなぁ……」
「うぅ、温泉……」
期待していただけにショックは大きい。
涙が滲んでしまう
「あの! 源泉ってどこにあるんですか?」
ミーちゃんが尋ねた。
「あの山の上だけど……聞いてどうするんだい?」
「クーちゃん、あそこだって」
「え?」
「クーちゃんならできちゃうでしょ?」
「……あ!」
そうか、浄化しちゃえばいいんだ!
「え、行くのかい? 危ないし、行ったところで闇相手じゃどうにもならんが……」
「大丈夫です! わたしたちにお任せください!」
むん! と胸を張る。
今度は街の温泉屋さんを助けるんだ!
*
「はぁ……ふぅ……」
険しい山道を歩く。
体力的には大丈夫だけど、少し暑くなってきた。
襟のリボンをほどいて胸元を開く。
エプロンも外してしまいたいけど、これを外してしまうと雰囲気が出ないのでそのままにしておく。
「……そういえばクーちゃん、なんでまたメイドの格好してるの?」
「え?」
「あまりに自然に着てるものだからスルーしちゃってたけど……」
ふたりは普段着だけど、わたしはまたメイド服にお着換えしたのだった。
「え~、だってあれだけじゃ全然着足りないよ~」
「ま、まあいいけどね……」
山道を登る、登る、登る。
温泉の源泉が近いからか、気候的にも蒸し暑くなってきた。
ふたりも脱げるものは脱いでなるべく薄着になっているけど、わたしはやっぱり脱ぐことはしない。
スカートがフリフリ揺れる度に笑みがこぼれてしまう。
お着換えって、やっぱり楽しい!
「ふ~っ、闇の汚染も進んでるみたいだね」
ミーちゃんが頂上を見上げて言った。
ここからでもどんよりしているのがわかる。
「ね、ミーちゃん、温泉屋さんが言ってた通り闇が原因なのかな?」
「たぶんね。でも、なんかおかしいな……こんな部分的に闇に汚染されてるなんて。これじゃまるで――」
――シュッ!
「あ」
と、お団子が飛んできて木に突き刺さった。
「な、なんですの突然? お、お団子!?」
ベルちゃんは目をぱちくりさせている。
「お団子か、瑠々かな?」
「ふぁっ、ふぁひふぁふぁひへはるほ。ほへほへ……(あ、なにか書いてあるよ。どれどれ……)」
お団子を頬張ると、少しだけ太い串に書いてあった文字が現れた。
それを読み上げる。
――この先、変態注意。
「へ、変態?」
ミーちゃんも手紙をのぞき込んできた。
「お団子はアドバイスだったんだ……瑠々ちゃん……!」
胸がじ~んとなる。
「瑠々ちゃん、ずっとわたしたちを見守っていてね……」
「や、死んでないし」
「でもなんだろ『変態注意』って。生まれ変わっちゃうくらいに効果のある温泉なのかな?」
「う~ん、姿が変わる意味での『変態』ではないと思うけど……」
「お、お姉さま……」
と、ベルちゃんがおろおろしていた。
「手紙も気になりますが、そのような怪しい物をお食べになっては……」
「ん?」
「あ~、いや、これは大丈夫かな」とミーちゃん。
「うん、瑠々ちゃんっていってね、お団子忍法の使い手さんなんだ」
「お、お団子忍法ですの?」
「こらこら、勝手にヘンな名前つけない」
ベルちゃんに、瑠々ちゃんはかっこかわいい忍者で、お友だちになりたかったのになぜか逃げられてしまったことを説明した。
「お、お姉さまのストーカーなど許せませんの!」
『変態さん注意!』は気になるけど、ここで引き返すわけにはいかない。
わたしたちは更に山道を進んだ。
*
「――わっ!?」
源泉にたどり着くと、大きな岩が湧き出るお湯をせきとめていた。
それどころか、等間隔に並べられた岩が闇に染まったお湯を貯めているようにも見える。
まるでここに温泉を作ってしまったかのようだ。
「な、なんだこれ?」
ミーちゃんも困惑している。
「源泉が流れなくなっちゃったのは、この岩のせいだね……。闇を浄化しないとお湯にも入れないけど、そもそも流れが止まっちゃってたのはこれが原因だよ」
「自然に転がってこうなっちゃったのかな?」
「う~ん……こんなに都合よく岩が集まるわけないと思うけど……。見た感じ、どこかの誰かが――」
「――あらぁん? この気配、もしかして月の聖女かしらぁん?」
声がして振り向くと、セクシーな巨乳のお姉さんがわたしたちを見下ろしていた。
(つづく)
「ガーン!」
喜び勇んで温泉へ向かったところ、なんと温泉は営業を停止していた。
「で、でも、だって、お洋服屋さんが「堪能していってくれ」って!」
「それが突然、源泉が止まっちまったみたいでさぁ」
「え? 源泉?」
「温泉の湧き出るところだよ。たぶん闇の影響だろうって組合でも対処を検討し始めたんだけど、でもまあ闇相手じゃどうしようもないしなぁ……」
店主さんはがっくりと肩を落として首を振った。
「この街の温泉も、もう終わりかなぁ……」
「うぅ、温泉……」
期待していただけにショックは大きい。
涙が滲んでしまう
「あの! 源泉ってどこにあるんですか?」
ミーちゃんが尋ねた。
「あの山の上だけど……聞いてどうするんだい?」
「クーちゃん、あそこだって」
「え?」
「クーちゃんならできちゃうでしょ?」
「……あ!」
そうか、浄化しちゃえばいいんだ!
「え、行くのかい? 危ないし、行ったところで闇相手じゃどうにもならんが……」
「大丈夫です! わたしたちにお任せください!」
むん! と胸を張る。
今度は街の温泉屋さんを助けるんだ!
*
「はぁ……ふぅ……」
険しい山道を歩く。
体力的には大丈夫だけど、少し暑くなってきた。
襟のリボンをほどいて胸元を開く。
エプロンも外してしまいたいけど、これを外してしまうと雰囲気が出ないのでそのままにしておく。
「……そういえばクーちゃん、なんでまたメイドの格好してるの?」
「え?」
「あまりに自然に着てるものだからスルーしちゃってたけど……」
ふたりは普段着だけど、わたしはまたメイド服にお着換えしたのだった。
「え~、だってあれだけじゃ全然着足りないよ~」
「ま、まあいいけどね……」
山道を登る、登る、登る。
温泉の源泉が近いからか、気候的にも蒸し暑くなってきた。
ふたりも脱げるものは脱いでなるべく薄着になっているけど、わたしはやっぱり脱ぐことはしない。
スカートがフリフリ揺れる度に笑みがこぼれてしまう。
お着換えって、やっぱり楽しい!
「ふ~っ、闇の汚染も進んでるみたいだね」
ミーちゃんが頂上を見上げて言った。
ここからでもどんよりしているのがわかる。
「ね、ミーちゃん、温泉屋さんが言ってた通り闇が原因なのかな?」
「たぶんね。でも、なんかおかしいな……こんな部分的に闇に汚染されてるなんて。これじゃまるで――」
――シュッ!
「あ」
と、お団子が飛んできて木に突き刺さった。
「な、なんですの突然? お、お団子!?」
ベルちゃんは目をぱちくりさせている。
「お団子か、瑠々かな?」
「ふぁっ、ふぁひふぁふぁひへはるほ。ほへほへ……(あ、なにか書いてあるよ。どれどれ……)」
お団子を頬張ると、少しだけ太い串に書いてあった文字が現れた。
それを読み上げる。
――この先、変態注意。
「へ、変態?」
ミーちゃんも手紙をのぞき込んできた。
「お団子はアドバイスだったんだ……瑠々ちゃん……!」
胸がじ~んとなる。
「瑠々ちゃん、ずっとわたしたちを見守っていてね……」
「や、死んでないし」
「でもなんだろ『変態注意』って。生まれ変わっちゃうくらいに効果のある温泉なのかな?」
「う~ん、姿が変わる意味での『変態』ではないと思うけど……」
「お、お姉さま……」
と、ベルちゃんがおろおろしていた。
「手紙も気になりますが、そのような怪しい物をお食べになっては……」
「ん?」
「あ~、いや、これは大丈夫かな」とミーちゃん。
「うん、瑠々ちゃんっていってね、お団子忍法の使い手さんなんだ」
「お、お団子忍法ですの?」
「こらこら、勝手にヘンな名前つけない」
ベルちゃんに、瑠々ちゃんはかっこかわいい忍者で、お友だちになりたかったのになぜか逃げられてしまったことを説明した。
「お、お姉さまのストーカーなど許せませんの!」
『変態さん注意!』は気になるけど、ここで引き返すわけにはいかない。
わたしたちは更に山道を進んだ。
*
「――わっ!?」
源泉にたどり着くと、大きな岩が湧き出るお湯をせきとめていた。
それどころか、等間隔に並べられた岩が闇に染まったお湯を貯めているようにも見える。
まるでここに温泉を作ってしまったかのようだ。
「な、なんだこれ?」
ミーちゃんも困惑している。
「源泉が流れなくなっちゃったのは、この岩のせいだね……。闇を浄化しないとお湯にも入れないけど、そもそも流れが止まっちゃってたのはこれが原因だよ」
「自然に転がってこうなっちゃったのかな?」
「う~ん……こんなに都合よく岩が集まるわけないと思うけど……。見た感じ、どこかの誰かが――」
「――あらぁん? この気配、もしかして月の聖女かしらぁん?」
声がして振り向くと、セクシーな巨乳のお姉さんがわたしたちを見下ろしていた。
(つづく)
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