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前編
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そりゃタバコは身体に悪いかもしれないが、ここまで喫煙者を雑に扱う必要はないんじゃないか?
毎度の事を内心愚痴りながら放課後の屋上への階段を昇る。
確かに職場が中学校で俺が教師である以上その辺ですぱすぱ吸わせろとは言わん。職員室が全面禁煙でもこのご時世だ許容範囲といえよう。
けど喫煙していい場所がどこにもないってのは酷すぎないか? 屋上で隠れてタバコって何時の時代の不良学生だよ。
いや赴任した当初はさりげなく喫煙場所作ってくれませんかーとお伺い立ててたんだよ。けど喫煙者が俺一人ってのはさすがに予想外だった。同世代や下の世代はすっかりタバコを吸わなくなってるし、上の世代は吸い過ぎで既に止められてるときたもんだ。
仕事中ぐらい我慢できると言い切りたいが、拘束時間が長い上ストレス掛かるし、正直なとこスマホ中毒のガキ共を笑えない状況だからなぁ。
いや、毎日は行ってないぞまだ寒いし。さすがにちょっと休憩行くのにコートとマフラーまでは持ち出せない。完全に外に出にでないと緊急避難訓練になっちまうしなぁ。なんでこんなところにまで火災警報器が付いてるんだよ、俺みたいなのがいるからだろうけど。
勝手に作った合鍵で屋上へと続くアルミ製のドアの鍵を開ける。屋上は詳しく知らんが落下事故だがなんだかが起こる前から基本生徒立ち入り禁止で、職員も用がなければ来ないから、理由があるときに鍵借りて、似たような鍵に札に付けて戻せば怪しまれなかった。その晩に合鍵作って、屋上に忘れ物したってまた借りて元の鍵に戻したから次使う人も気づかなかっただろう。
……いやうん、不良学生以下だな。
ドアから外に出て振り返り、もう一度鍵を使い戸締まりする。生徒に内側から開けられても困るが、根性のある泥棒さんに外側から開けられても困るって事で両方の側から鍵を使って閉めるようになっている。俺が閉めてるのは時間稼ぎの為だな。
そしてもう一度振り返ると、そこにはいつもと違った事があった。
「……今見たことは誰にも言わないように」
制服の上に真っ黒で長そうな手編みっぽいマフラーをぐるぐる巻きにして口から肩まで埋めたモノクロの女生徒がそこに立っていた。マフラーに押さえつけられているだけの結ばれていない長い髪の毛がずいぶんと印象的だ。
言ってから、タバコを吸うところは見られていないのだから、何か用があったことにして追い出せばそれで済んだことに気づいたが今更遅い。人間後ろめたいことがあると判断が鈍るな。
「てかお前どこから入った?」
合鍵作った俺が言うのも何だが、鍵は確かに閉まっていた。
「あたしはずっとここにいたわよ」
マフラーから顔を出しながらとぼけている風でなく彼女が答える。
「ただレイヤーが今まで重ならなかっただけ」
レイヤーってグラフックソフトとかで使うあれか? 意味が分からん。
それとも中二病ってヤツか? 俺もそれぐらいの時はかっこつけて意味の分からん横文字を……。
…………使ってたか? あんま覚えてねえな。使ったかどうかじゃなくその時代のことそのものが。
確かに結構前の話だが、まだボケるには早すぎねえか? 日常に必要ないことは忘れやすいが、仮にも赴任したのが母校なら何かしら思い出すものじゃないのか? 上書きされたのか?
あの頃はそう、制服も違って……。
目の前の女生徒をまじまじと見つめる。その寒そうな格好は昔の制服だった。なんで真っ先にそれに気づかねぇ俺。
マフラーと髪とで一部は隠れてたし、変わったといってもそこまで派手に切り替わった訳でもないとはいえ何故に違和感を覚えなかった?
「……お前、何者だ?」
今の制服を着ているなら俺のように何らかの手段で入り込んだ生徒だろうで納得も出来た。けれどわざわざ昔の制服を着て立っている女は生徒と同世代に見えたとしても異質でしかない。
「どうやってここに入った?」
「屋上は密室というには隙間が多すぎると思わない?」
笑顔で逆に尋ね返される。
確かに校舎の中から来ることにこだわらなければ上はがら空きで、フェンスに長いロープでも結んでおけば運動神経があれば昇って来れなくはないだろう。どちらも見つからないかどうかは別として。
「だから入ってきたと?」
「違うわ。なのに閉じ込められているの」
「何だそれ?」
最近のガキが考えることは分からん……ガキだよな?
---------------------------------
ちなみに自分タバコ駄目です(どうでもいい)。
毎度の事を内心愚痴りながら放課後の屋上への階段を昇る。
確かに職場が中学校で俺が教師である以上その辺ですぱすぱ吸わせろとは言わん。職員室が全面禁煙でもこのご時世だ許容範囲といえよう。
けど喫煙していい場所がどこにもないってのは酷すぎないか? 屋上で隠れてタバコって何時の時代の不良学生だよ。
いや赴任した当初はさりげなく喫煙場所作ってくれませんかーとお伺い立ててたんだよ。けど喫煙者が俺一人ってのはさすがに予想外だった。同世代や下の世代はすっかりタバコを吸わなくなってるし、上の世代は吸い過ぎで既に止められてるときたもんだ。
仕事中ぐらい我慢できると言い切りたいが、拘束時間が長い上ストレス掛かるし、正直なとこスマホ中毒のガキ共を笑えない状況だからなぁ。
いや、毎日は行ってないぞまだ寒いし。さすがにちょっと休憩行くのにコートとマフラーまでは持ち出せない。完全に外に出にでないと緊急避難訓練になっちまうしなぁ。なんでこんなところにまで火災警報器が付いてるんだよ、俺みたいなのがいるからだろうけど。
勝手に作った合鍵で屋上へと続くアルミ製のドアの鍵を開ける。屋上は詳しく知らんが落下事故だがなんだかが起こる前から基本生徒立ち入り禁止で、職員も用がなければ来ないから、理由があるときに鍵借りて、似たような鍵に札に付けて戻せば怪しまれなかった。その晩に合鍵作って、屋上に忘れ物したってまた借りて元の鍵に戻したから次使う人も気づかなかっただろう。
……いやうん、不良学生以下だな。
ドアから外に出て振り返り、もう一度鍵を使い戸締まりする。生徒に内側から開けられても困るが、根性のある泥棒さんに外側から開けられても困るって事で両方の側から鍵を使って閉めるようになっている。俺が閉めてるのは時間稼ぎの為だな。
そしてもう一度振り返ると、そこにはいつもと違った事があった。
「……今見たことは誰にも言わないように」
制服の上に真っ黒で長そうな手編みっぽいマフラーをぐるぐる巻きにして口から肩まで埋めたモノクロの女生徒がそこに立っていた。マフラーに押さえつけられているだけの結ばれていない長い髪の毛がずいぶんと印象的だ。
言ってから、タバコを吸うところは見られていないのだから、何か用があったことにして追い出せばそれで済んだことに気づいたが今更遅い。人間後ろめたいことがあると判断が鈍るな。
「てかお前どこから入った?」
合鍵作った俺が言うのも何だが、鍵は確かに閉まっていた。
「あたしはずっとここにいたわよ」
マフラーから顔を出しながらとぼけている風でなく彼女が答える。
「ただレイヤーが今まで重ならなかっただけ」
レイヤーってグラフックソフトとかで使うあれか? 意味が分からん。
それとも中二病ってヤツか? 俺もそれぐらいの時はかっこつけて意味の分からん横文字を……。
…………使ってたか? あんま覚えてねえな。使ったかどうかじゃなくその時代のことそのものが。
確かに結構前の話だが、まだボケるには早すぎねえか? 日常に必要ないことは忘れやすいが、仮にも赴任したのが母校なら何かしら思い出すものじゃないのか? 上書きされたのか?
あの頃はそう、制服も違って……。
目の前の女生徒をまじまじと見つめる。その寒そうな格好は昔の制服だった。なんで真っ先にそれに気づかねぇ俺。
マフラーと髪とで一部は隠れてたし、変わったといってもそこまで派手に切り替わった訳でもないとはいえ何故に違和感を覚えなかった?
「……お前、何者だ?」
今の制服を着ているなら俺のように何らかの手段で入り込んだ生徒だろうで納得も出来た。けれどわざわざ昔の制服を着て立っている女は生徒と同世代に見えたとしても異質でしかない。
「どうやってここに入った?」
「屋上は密室というには隙間が多すぎると思わない?」
笑顔で逆に尋ね返される。
確かに校舎の中から来ることにこだわらなければ上はがら空きで、フェンスに長いロープでも結んでおけば運動神経があれば昇って来れなくはないだろう。どちらも見つからないかどうかは別として。
「だから入ってきたと?」
「違うわ。なのに閉じ込められているの」
「何だそれ?」
最近のガキが考えることは分からん……ガキだよな?
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ちなみに自分タバコ駄目です(どうでもいい)。
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