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本編
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目を覚ますと今度は悪役令嬢になっていた。
……えーっとこれも夢? どこからどこまで?
何でこんなことに?
とりあえず周りを観察してみる。
寝ぼけたまま顔を洗うことになって悪役令嬢のなかに入ってるのは気づいたけど、これ、階段から落ちる直前に見た姿じゃないよね? サイズが違うし……主になんのかは言うまい。
えーっとヒロインの入学直後くらい?
スマホで日時を確認……は出来ないから新聞? いきなり誰かに聞くのは怪しいよね、日付だけならとにかく。
中世ヨーロッパって新聞あるもんだっけ? まぁ風なシロモノにそれ気にしちゃイケナイ。テストに出る訳じゃない。
で、それによるとちょうどヒロイン入学直前って辺り。
つまり殿下との婚約はすんでいて、ヒロインは殿下と顔合わせしていない。実は殿下とヒロインは幼い頃会ってたとかって伏線は知ってる限りないし、一度だけやった騎士様ルートでそのエピソード使ってたから使い回している可能性はないはず。……殿下付きの騎士だから近くにいて一目惚れしてたとかってオチでもなきゃ。
つまり殿下はこれからヒロインと恋に落ちる。そして悪役令嬢は断罪される。
だったらやることは破滅に追い込まれないよう対策を取ること。
……けどそれヒロインが王太子様ルートを選んだ場合よね?
魔王が出る方が大事な気がするけど、それヒロインがなんとかしてくれたらその後悪役令嬢王太子様と結婚してたよね? それ見た時点でそれ以上進めるのやめたからその後は知らないけど。もしかしたら王太子様のスチル他にもあったかもしれないけど耐えられなかったんだもん。
それにもしヒロインが階段から落ちて死んだのが夢じゃなかったのなら。
あの後悪役令嬢が殿下と結ばれる続きがあったかもしれないわけで。少なくともヒロインと婚約するからって理由で婚約破棄はされなくなったはずだし……冥婚だっけ? 死んだ人と婚約するシステムなんてこのゲームにはなかっただろうし、仮にあっても殿下には許されないだろうから最悪でも側妃とかあるだろうし。
よし、やっぱり殿下との結婚を狙おう。
* * *
結果、断頭台に縁づいてしまう羽目になってしまったわけで。
中世ヨーロッパにギロチンって……あれ近世だと思ってた。中世もだけど近世もわりと幅広いからなぁ、風だとなおさら。
いやさ、前回あたし階段から突き落とされた訳だからさ、突き落とさなきゃならないかなーと考えた訳で。
その結果死んだわけだから、人殺さなきゃならないってことだよ?
それに気づいた時には怖くて眠れなくて、すっごい葛藤して、けど一度ヒロインとして死んでから今こうなってるわけだから、殺さないと自分の幸不幸の問題じゃなく展開に矛盾が出るかもってやっと決心したんだよ?
けど腕力が足りなかったのかやり方が悪かったのか結局ためらってしまったのか、ちょっと怪我させただけで終わったわけで。
これで婚約破棄確実だと思ったら、なんかすでに破棄されてたことになってて、殿下の婚約者を害した罪とかに問われるのってなに? 何でそんな事になるの?
……入れられた牢の口の軽い看守によると、どうもあたしはやり過ぎたらしい。
いやだって誰が味方かとか分からないというか……ゲームの婚約破棄場面で味方してくれた人がほぼいなかったから、その人たちは信用出来ないし? 打算はとにかく善意でかばってくれそうな人はなおさら巻き込めないし。
あと嫌がらせのイベントってルートによって微妙に変わるし、それと関係なくランダムでも起こったのよね。それも覚えてる分全部やっちゃったからなぁ。
律儀にやりはしたが、嫌がらせとその結果はゲームで見えてもやり方まで見せてくれてるのはあまりなかったわけで……うん、その手の才能なかったってことだね。
証拠とか残しまくって、もともと危うい立場だったので今回のことで遡って婚約は破棄されてヒロインと婚約してたってことになったらしい。
破棄する前にヒロインと出来てたんだから裏切ったのはそっち……とか責めたいけど、それゲームからだったしなぁ。ゲームだと何でそれ許されるんだろ。
で、そのついでに関係ない罪まで着せられたらしく断頭台に至る、と。
そんなイベントなかったはずなのに。
ギロチンは罪人を無駄に苦しめないように考案されたって聞いた事あるし、確かに手動で首を切られるとなると刀だろうが斧だろうが一撃で死ねるとは限らないから嘘でもないんだろうけどさ。
それ以上に執行人に優しい仕様だと思うよ個人的。
……あの時、突き飛ばしたとき手のひらに感じた感触を未だ覚えている。
人を殺すというのはこういうことなのだと。
結果が同じでも、それが人から遠ざかれば遠ざかるほど精神は気休め程度でも楽になるだろう。
執行人を恨むつもりはない。
強いて恨むなら自分自身をだろうか?
首に刃が触れたとき、ただ冷たいと思った。
……えーっとこれも夢? どこからどこまで?
何でこんなことに?
とりあえず周りを観察してみる。
寝ぼけたまま顔を洗うことになって悪役令嬢のなかに入ってるのは気づいたけど、これ、階段から落ちる直前に見た姿じゃないよね? サイズが違うし……主になんのかは言うまい。
えーっとヒロインの入学直後くらい?
スマホで日時を確認……は出来ないから新聞? いきなり誰かに聞くのは怪しいよね、日付だけならとにかく。
中世ヨーロッパって新聞あるもんだっけ? まぁ風なシロモノにそれ気にしちゃイケナイ。テストに出る訳じゃない。
で、それによるとちょうどヒロイン入学直前って辺り。
つまり殿下との婚約はすんでいて、ヒロインは殿下と顔合わせしていない。実は殿下とヒロインは幼い頃会ってたとかって伏線は知ってる限りないし、一度だけやった騎士様ルートでそのエピソード使ってたから使い回している可能性はないはず。……殿下付きの騎士だから近くにいて一目惚れしてたとかってオチでもなきゃ。
つまり殿下はこれからヒロインと恋に落ちる。そして悪役令嬢は断罪される。
だったらやることは破滅に追い込まれないよう対策を取ること。
……けどそれヒロインが王太子様ルートを選んだ場合よね?
魔王が出る方が大事な気がするけど、それヒロインがなんとかしてくれたらその後悪役令嬢王太子様と結婚してたよね? それ見た時点でそれ以上進めるのやめたからその後は知らないけど。もしかしたら王太子様のスチル他にもあったかもしれないけど耐えられなかったんだもん。
それにもしヒロインが階段から落ちて死んだのが夢じゃなかったのなら。
あの後悪役令嬢が殿下と結ばれる続きがあったかもしれないわけで。少なくともヒロインと婚約するからって理由で婚約破棄はされなくなったはずだし……冥婚だっけ? 死んだ人と婚約するシステムなんてこのゲームにはなかっただろうし、仮にあっても殿下には許されないだろうから最悪でも側妃とかあるだろうし。
よし、やっぱり殿下との結婚を狙おう。
* * *
結果、断頭台に縁づいてしまう羽目になってしまったわけで。
中世ヨーロッパにギロチンって……あれ近世だと思ってた。中世もだけど近世もわりと幅広いからなぁ、風だとなおさら。
いやさ、前回あたし階段から突き落とされた訳だからさ、突き落とさなきゃならないかなーと考えた訳で。
その結果死んだわけだから、人殺さなきゃならないってことだよ?
それに気づいた時には怖くて眠れなくて、すっごい葛藤して、けど一度ヒロインとして死んでから今こうなってるわけだから、殺さないと自分の幸不幸の問題じゃなく展開に矛盾が出るかもってやっと決心したんだよ?
けど腕力が足りなかったのかやり方が悪かったのか結局ためらってしまったのか、ちょっと怪我させただけで終わったわけで。
これで婚約破棄確実だと思ったら、なんかすでに破棄されてたことになってて、殿下の婚約者を害した罪とかに問われるのってなに? 何でそんな事になるの?
……入れられた牢の口の軽い看守によると、どうもあたしはやり過ぎたらしい。
いやだって誰が味方かとか分からないというか……ゲームの婚約破棄場面で味方してくれた人がほぼいなかったから、その人たちは信用出来ないし? 打算はとにかく善意でかばってくれそうな人はなおさら巻き込めないし。
あと嫌がらせのイベントってルートによって微妙に変わるし、それと関係なくランダムでも起こったのよね。それも覚えてる分全部やっちゃったからなぁ。
律儀にやりはしたが、嫌がらせとその結果はゲームで見えてもやり方まで見せてくれてるのはあまりなかったわけで……うん、その手の才能なかったってことだね。
証拠とか残しまくって、もともと危うい立場だったので今回のことで遡って婚約は破棄されてヒロインと婚約してたってことになったらしい。
破棄する前にヒロインと出来てたんだから裏切ったのはそっち……とか責めたいけど、それゲームからだったしなぁ。ゲームだと何でそれ許されるんだろ。
で、そのついでに関係ない罪まで着せられたらしく断頭台に至る、と。
そんなイベントなかったはずなのに。
ギロチンは罪人を無駄に苦しめないように考案されたって聞いた事あるし、確かに手動で首を切られるとなると刀だろうが斧だろうが一撃で死ねるとは限らないから嘘でもないんだろうけどさ。
それ以上に執行人に優しい仕様だと思うよ個人的。
……あの時、突き飛ばしたとき手のひらに感じた感触を未だ覚えている。
人を殺すというのはこういうことなのだと。
結果が同じでも、それが人から遠ざかれば遠ざかるほど精神は気休め程度でも楽になるだろう。
執行人を恨むつもりはない。
強いて恨むなら自分自身をだろうか?
首に刃が触れたとき、ただ冷たいと思った。
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