「殿下、婚約を解消しましょう」

こうやさい

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もしかしたらの結末

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 ところが来ないかと思っていた縁談だが、来てしまった。

 前みたく祖父といっていいくらい年上の人の後妻という名の介護か家とのつながりがほしい成金が相手辺りかと思ったら、殿下のご友人だった。
 ゲームでいうならモブを通り越して背景だけど、周回分も合わせるとよく知っていると言って問題ない人だ……けど見えてなかったことが多いと気づいたからそうでもないかも。
 それでもすぐに気を遣ったんだろうなと思った。
 彼はとにかく気が回る人で、そして自分が我慢しがちな質だった。
 なので殿下が元婚約者を気にかけていたので、その憂いを晴らすために犠牲になりに来たのだと思った。

 だからオブラートで包んで形を整えた言葉で無理はしなくていいと告げた。
 そうしたら無理ではないという。ずっとあたしが好きだったと。
 かけらも心当たりがなく慌てて記憶を探る。
 本当に我慢しがちな人だから、殿下の婚約者相手なら気持ちを表に出すはずはないし、殿下と対立してしまった後にこちらに好意を示せるはずはないのだから、心当たりなんてある方がおかしい。
 けれど思い出してしまった。周回していなければ、そしてヒロインという別視点を体験していなければ言われたとしても気づかないほどのさりげない好意を。
 ならば嘘を返すのは不誠実だろう。
 さすがにすべてを言うわけにはいかなかったけど、適当な解消の理由と、本当はそれでもまだ殿下を好きなことを告げる。

 ここで「待つ」とでも返されていたならば、みんなに愚か者扱いされたとしてもあたしはこの話を断ったと思う。
 けれど彼は「それでもいい」と言った。そのままでも変わっても構わないと。

 それは殿下に対する気持ちを持つことへの許しだったのだろうけど。
 ずっと自分を異端としていたこの世界から赦されたように思えた。

 やっと自分の居場所を見つけたような気がした。
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