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これ以上壊せない 後編
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けれどある日、従兄が困惑気に僕を訪ねてきた。
父が結婚せずに子供が出来なかったら彼が王太子になるはずだった。
高確率でそうなるはずだったのに降ってわいた政略結婚の結果僕が生まれその話は消えてしまった。
そのことで周りがいろいろ言っていただろうのにゆがまずに友人になってくれたかけがえのない従兄だ。
その従兄曰く、彼女が迫ってきたという。そして拒否したら泣かれたと。
言ったのが他の人なら理由を考える前に激怒していたかもしれないが、相手は父より信頼している従兄で、迫ったのが彼女だと言われれば、悲しいかな絶対ないとは言いきれない。
彼女になにかあったら従兄を頼れといった記憶がある。
そして性的な行為を仲のよい男女ならすることがあるとも。
彼女にとっての仲のよいは恋愛感情を指さない。
指すのは信頼や友情や承認や……依存だろう。
彼女は従兄にも僕の婚約者だということを認めてもらいたかったに違いない。
けれどそれは端から見れば不貞を迫ったことに他ならない。
従兄辺りならまだ事情を察することの出来る立場だがそうでない場合も今後いくらでも出てくるだろう?
彼女に真実を伝える? 今更?
確かに当時よりは安定しているように思えるけれど、本当に安定しているのなら従兄に迫りもしないだろう。
ならばまだ教えるわけにはいかない。
従兄には結局不都合がなく嫌でないのなら少し付き合ってやってくれないかと言った。
暫くたって納得すれば収まるだろう。
……そうやって、彼女に触れた男性はもう二桁を超えた。
本来なら王族の婚約者に手を出す人はそうそういないものなのだろうが、彼女は父には対象外になったとはいえ、いやだからこそ僕らの対象に入ったし、好奇心も下心もある年代だし、何よりかわいい。
その上相手を恋愛対象に見ないし、純潔を奪いでもしない限り将来を考える必要もない。
許可が出たとなればよほどの理由でもない限り手を出さないはずがない。
それでも僕が彼女の特別である自信はある。
そんな風に触れなくとも関係を保てているのは僕だけであり、僕がいれば彼女は僕を優先して他の人のところには行かないのだから。
それに優越感を感じるとともに、どろりとした感情がわき上がる。
僕だって触れたいと思わない訳でも嫉妬しない訳でもない。
けれど僕までそういう関係を築いてしまったら、それ以外の彼女はどうなってしまうのだろう?
彼女をこれ以上壊せない。
周囲が僕を暗愚だと思っていることは知っている。
確かに王族としては彼女を切り捨てるのが正解なのだろう。
今はまだそれでも多かれ少なかれ事情を知っている信用出来る仲間内だけの話だ。
けれどもし時がたち結婚し王妃になってすらもこんな状況が続いたら?
国益の為に王妃を売った王と僕は言われるかもしれない。
油断できない相手に無防備な姿をさらし、情報を漏らしたり人質にされる王妃に彼女はなるかもしれない。
何より子供が生まれたとき、本当に僕の子かどうか疑われてしまうだろう。
なのに職務すら放り出して彼女と一緒にいようとする。
それでも彼女が手放せないのは父のせいでそうなったという負い目もある。
けれど王のせいで不幸になった人なんて、歴史をひもとくまでもなくいくらでもいる。
だから言い訳の一つに過ぎないことは分かっているし、その過去は表向きはなかったことになっているので他人に説明出来る訳じゃない。
彼女が今父をどう思っているかも聞けていない。
あるいはすでに気づいているのではと心配しても尋ねることも出来ない。
彼らのように無責任に触れることすら望めない。
きっと僕は父以上の暗君と呼ばれる事になるだろう。
---------------------------------
続きとか陛下視点のプロットとかもあったんだけど、あんま読んで楽しいものでもないし、形になってもいないので万一気が向いて需要がありそうだったらってことで。
てかこれもない方がよかったかも。けど今書けてる文章は貴重。
父が結婚せずに子供が出来なかったら彼が王太子になるはずだった。
高確率でそうなるはずだったのに降ってわいた政略結婚の結果僕が生まれその話は消えてしまった。
そのことで周りがいろいろ言っていただろうのにゆがまずに友人になってくれたかけがえのない従兄だ。
その従兄曰く、彼女が迫ってきたという。そして拒否したら泣かれたと。
言ったのが他の人なら理由を考える前に激怒していたかもしれないが、相手は父より信頼している従兄で、迫ったのが彼女だと言われれば、悲しいかな絶対ないとは言いきれない。
彼女になにかあったら従兄を頼れといった記憶がある。
そして性的な行為を仲のよい男女ならすることがあるとも。
彼女にとっての仲のよいは恋愛感情を指さない。
指すのは信頼や友情や承認や……依存だろう。
彼女は従兄にも僕の婚約者だということを認めてもらいたかったに違いない。
けれどそれは端から見れば不貞を迫ったことに他ならない。
従兄辺りならまだ事情を察することの出来る立場だがそうでない場合も今後いくらでも出てくるだろう?
彼女に真実を伝える? 今更?
確かに当時よりは安定しているように思えるけれど、本当に安定しているのなら従兄に迫りもしないだろう。
ならばまだ教えるわけにはいかない。
従兄には結局不都合がなく嫌でないのなら少し付き合ってやってくれないかと言った。
暫くたって納得すれば収まるだろう。
……そうやって、彼女に触れた男性はもう二桁を超えた。
本来なら王族の婚約者に手を出す人はそうそういないものなのだろうが、彼女は父には対象外になったとはいえ、いやだからこそ僕らの対象に入ったし、好奇心も下心もある年代だし、何よりかわいい。
その上相手を恋愛対象に見ないし、純潔を奪いでもしない限り将来を考える必要もない。
許可が出たとなればよほどの理由でもない限り手を出さないはずがない。
それでも僕が彼女の特別である自信はある。
そんな風に触れなくとも関係を保てているのは僕だけであり、僕がいれば彼女は僕を優先して他の人のところには行かないのだから。
それに優越感を感じるとともに、どろりとした感情がわき上がる。
僕だって触れたいと思わない訳でも嫉妬しない訳でもない。
けれど僕までそういう関係を築いてしまったら、それ以外の彼女はどうなってしまうのだろう?
彼女をこれ以上壊せない。
周囲が僕を暗愚だと思っていることは知っている。
確かに王族としては彼女を切り捨てるのが正解なのだろう。
今はまだそれでも多かれ少なかれ事情を知っている信用出来る仲間内だけの話だ。
けれどもし時がたち結婚し王妃になってすらもこんな状況が続いたら?
国益の為に王妃を売った王と僕は言われるかもしれない。
油断できない相手に無防備な姿をさらし、情報を漏らしたり人質にされる王妃に彼女はなるかもしれない。
何より子供が生まれたとき、本当に僕の子かどうか疑われてしまうだろう。
なのに職務すら放り出して彼女と一緒にいようとする。
それでも彼女が手放せないのは父のせいでそうなったという負い目もある。
けれど王のせいで不幸になった人なんて、歴史をひもとくまでもなくいくらでもいる。
だから言い訳の一つに過ぎないことは分かっているし、その過去は表向きはなかったことになっているので他人に説明出来る訳じゃない。
彼女が今父をどう思っているかも聞けていない。
あるいはすでに気づいているのではと心配しても尋ねることも出来ない。
彼らのように無責任に触れることすら望めない。
きっと僕は父以上の暗君と呼ばれる事になるだろう。
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続きとか陛下視点のプロットとかもあったんだけど、あんま読んで楽しいものでもないし、形になってもいないので万一気が向いて需要がありそうだったらってことで。
てかこれもない方がよかったかも。けど今書けてる文章は貴重。
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