悪役令嬢が攻略対象の幸せを願っては駄目ですか?

こうやさい

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何故かは分からないけれど

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「少し違うわ」
 大きな鏡の中のわたくしの姿を見て、ふとそう思う。
「どこかお気に召しませんか?」
 髪を結ってくれていたメリダが、どこか恐る恐る尋ねてくる。
「そうじゃないの」
 メリダの腕は完璧。お子様顔だというのにスチル通りの見事な縦ロールがちゃんと似合うように出来てる。
 スチル? お子様顔?
 じっと手を見る。
 ぷにぷにすべすべの明らかに幼児の手が、自分の思い通りにグーパーする。
 椅子から立ち上がろうとして、身長が足りない事に気づく。

「……せっかく髪を結ってもらったのに悪いのだけど、少し気分が悪くなったの」
 なるたけ不自然に聞こえないように心がけるが、幼児がこんな言葉遣いをするだろうか?
 けどイメージ上の公爵令嬢だし、こんなものという気もする。
 記憶はあるはずなのに違和感がつきまとう。
「朝食はいいからもう少し眠らせてちょうだい?」
「お、お医者様は……」
 メリダの顔色が真っ青になる。
「昼食までに治らなかったらお願いするわ。だから下がってちょうだい」
「か、かしこまりました」

 そうしてメリダは下がっていったけれど、恐らく報告を聞いたお父様達が心配してすぐに来るだろうから時間がない。
 もう一度やたら豪華な鏡の中を確認する。
 金髪碧眼ちょいつり目更に縦ロールという幼いながらもテンプレ通りの悪役令嬢に成長するだろうなという容姿をしている。
 それでも高級そうなレースふりふりのドレスはこの子の方が似合う。……まぁ、もう着たい時期も過ぎてたけど。
 これでも若い頃は憧れたのよ、ゲームのヒロイン転生。
 けどこの年齢としになって、しかも悪役令嬢の方に転生するとは思わなかった。
 いや、その頃に早死にしなくてまだよかったと思うべきか? まだ充分早死にで通る気もするけど。
 一応倒れたところまでは記憶にあるから、死んで転生したのよねぇ、これって。
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