悪役令嬢が攻略対象の幸せを願っては駄目ですか?

こうやさい

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何故かは分からないけれど

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 昼食にお父様はいなかった。今日は登城の日だったとリーゼロッテの記憶が教えてくれる。
 リーゼロッテは知らなかったようだけど、お父様は宰相をやっている。
 陛下と学園で競い合い友情を築き、最年少で宰相になった……とアニメの設定資料集にあった。
 ゲームも含めて基本設定はメディア的に不都合が出る部分以外はほぼ共通。
 その中でお父様の出番があったのはアニメとゲームのみ。
 乙女ゲームなんて攻略対象が殿下とかじゃなきゃ親なんで出てこないからむしろ出番は多い方だと思う。
 お母様は一緒に食卓……と呼ぶにはいささか大きい気がするテーブルに着いていた。
 リーゼロッテの具合が悪くなさそうなことに少しほっとしているようだったが、それ以上にわたしもほっとした。
 どうして? と一瞬思ったが、リーゼロッテはわたしの記憶の中のスチルで両親が年老い、やつれた姿を見ている。
 年老いたというほど年月は経っていないはずだが、片や娘が断罪され義息は結果駆け落ちするほど娘を断罪した相手に入れ込んでいる、片や娘が殺されて義息がその犯人を庇っている状態ともなれば、どちらのルートのスチルも老け込んでいるのは絵師さんのせいではないだろう。
 スチルという概念を理解しているわたしが思っているよりもリーゼロッテはそれに不安を感じていたのだろう。
 ……もうしばらくこの感覚には慣れそうもない。
 食事の前に大丈夫なのか散々確認され、メニューは別に消化に良さそうなものを用意され、そのくせ消化に悪そうなデザートが出てくるって……いや、リーゼロッテの好物だから意図は分かるんだけど。
 ちょっと混乱が胃に来てたらどうしようと思ったものの、若いせいか幸いそんな事もなく。
 完食したわたしリーゼロッテを見て、お母様は表情を緩めた。
 ……それでも今日は寝ておくようにいわれたけど。
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