3 / 3
-3-
しおりを挟む
誰が考えたのでしょうね。
その聖女を王家で取り込めば、次代の繁栄は約束されると。
産む子産む子がみんな優秀なのですもの。子供達は放っておいても関係が悪くなることはなく、また良くなりすぎることもないと。ならば周りが下手な派閥争いでも起こさなければ国が発展するのは間違いないでしょう。
それで始まりの聖女を例として聖女は伴侶として王の傍らで支え尽くすべきだなんて。
神殿の方も人材が一国に偏る心配はあれど、聖女の生まれる国が決まっているわけでもなく、それで生活がより保証されるならと幾つか条件はあるにしろ許したのでしょう。
けれど事情を知らなければある意味どこから連れてこられたか分からない女を妃に据えろと言われる方は確かにたまらないでしょうね。
知っていてもなお自分は種馬じゃないと主張した方もいらしたとか。
聖女の方には産むことを押しつけておきながらなんて勝手なのでしょう、側妃も愛妾もそれでも持てる立場であったにも拘わらず。
それでも聖女は立場としては正妃でなければなりません、優秀な子供を世継ぎにできる可能性をできる限り高めるために。
きっと真実を知らないまま、ただ子供だけを産み続けさせられた方もいらしたでしょう。とじこめられる場所が神殿か王宮か、相手が複数か単数かだけの違いです。
愛されているとたとえ誤解でも思い込めていたなら良いのですけど。
その説明を、殿下はどこか呆然と聞いておられます。
「殿下に命じられたのでそうしますが構いませんかと、きちんと陛下に許可を頂きにいきましたよ?」
それほど息子は愚かだったかとため息をついた陛下を覚えております。
確かにそんな息子の血を引かない方かいいかもしれないとも。やはり少しは何か教えていたのでしょう。
聖女の婚約者は聖女を余所に行かせないために据え付けられたはずですのに。
陛下はそれでも王家の優秀な人材と血を絶やすつもりはないらしく、婚約自体の解消はなく、宛がわれたのは王家に近い血を持つ王家に従順な方たちでしたけれど。
まだ薄いお腹を撫でます。
なのでこの子が産まれれば殿下の子として育てられる事になります。
微笑むとさっきまで血の気を引かせていた殿下が赤くなります。
今までわたくしの事を混乱のあまりまともに見ていなかったでしょう?
あの方々は内心までは知りませんけれど本当に王家に従順で、わたくしにそれはそれは優しくして下さいましたわ。
殿下に植え付けられた卑屈さを溶かしてしまうほど。
自分で言うのもどうかと思いますけれど大輪の花のつぼみがほころんだように美しくなったでしょう?
身体だけといえど、愛されればこれほど変わるものなのです。
殿下はそんな事考えた事もないでしょう?
殿下が今わたくしの身体を欲しがっているのが分かります、婚約者なのだから自分もそれを自由にできると思っていることも。
ええ、確かにわたくしはあなたの婚約者です。このままあなたと結婚することになるでしょう。
けれど身体を重ねることだけはございません。そうちゃんとご命令を頂いております。
殿下の本当の子供が産まれてしまえば、子供達の間で身分による序列がつき、ややこしいことになるのは明白。
なので誰が父親か分からなくとも殿下の子でない事だけははっきりさせなければいけません。
かといってこの子は養子に出し、殿下の子だけを産み続けるなんて論外です。
そうなったなら、子供はなぜか死んでしまうかもしれませんね。
それを陛下がお許しになるかしら?
大丈夫ですよ、殿下以外に抱かれ続けるのを許して下さるなら王家に寄り添い支える優秀な子を残しますから。
殿下は始まりの聖女を望んでらしたのでしょう?
殿下の望みも叶いそうで良かったですわね。
……本当に。
その聖女を王家で取り込めば、次代の繁栄は約束されると。
産む子産む子がみんな優秀なのですもの。子供達は放っておいても関係が悪くなることはなく、また良くなりすぎることもないと。ならば周りが下手な派閥争いでも起こさなければ国が発展するのは間違いないでしょう。
それで始まりの聖女を例として聖女は伴侶として王の傍らで支え尽くすべきだなんて。
神殿の方も人材が一国に偏る心配はあれど、聖女の生まれる国が決まっているわけでもなく、それで生活がより保証されるならと幾つか条件はあるにしろ許したのでしょう。
けれど事情を知らなければある意味どこから連れてこられたか分からない女を妃に据えろと言われる方は確かにたまらないでしょうね。
知っていてもなお自分は種馬じゃないと主張した方もいらしたとか。
聖女の方には産むことを押しつけておきながらなんて勝手なのでしょう、側妃も愛妾もそれでも持てる立場であったにも拘わらず。
それでも聖女は立場としては正妃でなければなりません、優秀な子供を世継ぎにできる可能性をできる限り高めるために。
きっと真実を知らないまま、ただ子供だけを産み続けさせられた方もいらしたでしょう。とじこめられる場所が神殿か王宮か、相手が複数か単数かだけの違いです。
愛されているとたとえ誤解でも思い込めていたなら良いのですけど。
その説明を、殿下はどこか呆然と聞いておられます。
「殿下に命じられたのでそうしますが構いませんかと、きちんと陛下に許可を頂きにいきましたよ?」
それほど息子は愚かだったかとため息をついた陛下を覚えております。
確かにそんな息子の血を引かない方かいいかもしれないとも。やはり少しは何か教えていたのでしょう。
聖女の婚約者は聖女を余所に行かせないために据え付けられたはずですのに。
陛下はそれでも王家の優秀な人材と血を絶やすつもりはないらしく、婚約自体の解消はなく、宛がわれたのは王家に近い血を持つ王家に従順な方たちでしたけれど。
まだ薄いお腹を撫でます。
なのでこの子が産まれれば殿下の子として育てられる事になります。
微笑むとさっきまで血の気を引かせていた殿下が赤くなります。
今までわたくしの事を混乱のあまりまともに見ていなかったでしょう?
あの方々は内心までは知りませんけれど本当に王家に従順で、わたくしにそれはそれは優しくして下さいましたわ。
殿下に植え付けられた卑屈さを溶かしてしまうほど。
自分で言うのもどうかと思いますけれど大輪の花のつぼみがほころんだように美しくなったでしょう?
身体だけといえど、愛されればこれほど変わるものなのです。
殿下はそんな事考えた事もないでしょう?
殿下が今わたくしの身体を欲しがっているのが分かります、婚約者なのだから自分もそれを自由にできると思っていることも。
ええ、確かにわたくしはあなたの婚約者です。このままあなたと結婚することになるでしょう。
けれど身体を重ねることだけはございません。そうちゃんとご命令を頂いております。
殿下の本当の子供が産まれてしまえば、子供達の間で身分による序列がつき、ややこしいことになるのは明白。
なので誰が父親か分からなくとも殿下の子でない事だけははっきりさせなければいけません。
かといってこの子は養子に出し、殿下の子だけを産み続けるなんて論外です。
そうなったなら、子供はなぜか死んでしまうかもしれませんね。
それを陛下がお許しになるかしら?
大丈夫ですよ、殿下以外に抱かれ続けるのを許して下さるなら王家に寄り添い支える優秀な子を残しますから。
殿下は始まりの聖女を望んでらしたのでしょう?
殿下の望みも叶いそうで良かったですわね。
……本当に。
34
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
帰還した聖女と王子の婚約破棄騒動
しがついつか
恋愛
聖女は激怒した。
国中の瘴気を中和する偉業を成し遂げた聖女を労うパーティで、王子が婚約破棄をしたからだ。
「あなた、婚約者がいたの?」
「あ、あぁ。だが、婚約は破棄するし…」
「最っ低!」
愚か者の話をしよう
鈴宮(すずみや)
恋愛
シェイマスは、婚約者であるエーファを心から愛している。けれど、控えめな性格のエーファは、聖女ミランダがシェイマスにちょっかいを掛けても、穏やかに微笑むばかり。
そんな彼女の反応に物足りなさを感じつつも、シェイマスはエーファとの幸せな未来を夢見ていた。
けれどある日、シェイマスは父親である国王から「エーファとの婚約は破棄する」と告げられて――――?
召喚聖女が来たのでお前は用済みだと追放されましたが、今更帰って来いと言われても無理ですから
神崎 ルナ
恋愛
アイリーンは聖女のお役目を10年以上してきた。
だが、今回とても強い力を持った聖女を異世界から召喚できた、ということでアイリーンは婚約破棄され、さらに冤罪を着せられ、国外追放されてしまう。
その後、異世界から召喚された聖女は能力は高いがさぼり癖がひどく、これならばアイリーンの方が何倍もマシ、と迎えが来るが既にアイリーンは新しい生活を手に入れていた。
冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる
みおな
恋愛
聖女。
女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。
本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。
愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。
記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
その婚約破棄喜んで
空月 若葉
恋愛
婚約者のエスコートなしに卒業パーティーにいる私は不思議がられていた。けれどなんとなく気がついている人もこの中に何人かは居るだろう。
そして、私も知っている。これから私がどうなるのか。私の婚約者がどこにいるのか。知っているのはそれだけじゃないわ。私、知っているの。この世界の秘密を、ね。
注意…主人公がちょっと怖いかも(笑)
4話で完結します。短いです。の割に詰め込んだので、かなりめちゃくちゃで読みにくいかもしれません。もし改善できるところを見つけてくださった方がいれば、教えていただけると嬉しいです。
完結後、番外編を付け足しました。
カクヨムにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる