解読は解消よりも難しい

こうやさい

文字の大きさ
3 / 4

強制力はどこまでですか? 前編

しおりを挟む
 わたしが前世を思い出したのは物心がついた頃、転生した世界が前世で読んだ小説の中の可能性が高いと気づいたのは家の近くのその屋敷で働き始めてからでした。

 あいにくとわたしはモブではなく、冤罪を着せられ婚約破棄の上追放されたお嬢様にお供として連れて行かれて、お嬢様を庇い大けがを負い、生きるか死ぬかというところで次巻に引いた一応主要キャラといえるメイドでございました。
 そこまでしか読んだ記憶がないというのならその後助かる可能性は五分五分といったところでしょうが、エピソードゼロとして婚約破棄前の話を出すという予告が同時にされたところでございまして。
 当時はやっと謎に包まれたヒロインの過去がハッキリと明かされると楽しみにしていたものですが。
 今となっては死にゆくメイドの走馬灯、その死を盛り上げるための演出としか思えません。

 前世の思考のせいもあるかもしれませんけれど、高飛車な子供のために命を失うなんてまっぴらごめんですわ。

 ……高飛車とはいいましたが、前世と違い身分制度がある世界ですから、お嬢様はもしかしたら普通よりは優しいくらいかもしれませんけど、細かいところに同じ人間として見られていないように感じて。育ちの差というものでしょうか?
 そもそも仮に天使のように優しかったとしてもわたしの性格上、命を投げ出してまで助けようとはしないでしょうが。

 とはいえ、もし命じられたならお供をするのは避けられません。庇うつもりはなくてもタイミングが悪く結果的にそうならないとは限らないでしょう。
 ならばちまちまフラグを折るよりいっそその前に舞台そのものから降りる方が安全でしょうね。
 この世界は女性の立場は弱く公的には男性を立てるもの。これも腹立たしいですが、今回はそれを利用させて頂きましょう。……まぁ、単純に結婚したら特殊な場合を除き妻は夫の家に同居しなければならないというだけの話ですけれど。
 という理由で遠く閉鎖的なところに住んでる人との婚活を頑張りまして、上手く結婚にこぎ着ける事が出来ました。……愛はないですけど。

 そうして仕事を辞め、お嬢様においとまを告げましたところ、よりにもよってこのタイミングでお嬢様にも前世の記憶がある可能性が発覚いたしました。
 しかも同じ世界で小説まで知っているご様子。
 高飛車な子供なら見捨てることも吝かではないですが、他にいないかもしれない前世が同じ世界どうきょうの者と考えると、途端にやりづらくなるのはなぜでしょう?
 とはいえ自分を犠牲にしようとまではやはりそれでも思えず、そもそも予定は簡単に変えられる訳もなく、倒れたお嬢様に連絡をくれるようで書き置きを残し、出発いたしました。
 恐らく倒れたのは記憶が戻ったショックでしょう。

 旅路はなれない事もあり大変でした。
 それでも徐々に時折気が抜けるというか、考え事をする余裕が出てきました。
 当然マリッジブルーに……なったわけもなく。気になるのはお嬢様の事でした。正確にはエピソードゼロの事が。
 自分の安全はこれで確保されたと思うと、前世で読めなかった大好きな小説の続きが気になっても仕方ないでしょう? エピソードゼロですから続きといっていいのか微妙ですけれど。
 わたしが居なくなったことでどう影響が出るのかも気になりますし。

 それは嫁ぎ先に着いても変わらず、新婚生活もそこそこ、日々お嬢様からの手紙が来ないかとそわそわと待ち続けていました。

 お嬢様が考えをまとめていたのか、それとも郵便事情が予想よりも悪かったのか、手紙が来たのはずいぶん経ってからでした。
 手紙が来たということはお嬢様は恐らく小説の記憶があり、更にいえば日本語が読める程度には向こうには詳しいということ。
 もしかしたら小説について語り合えるかもしれません。
 ウキウキと手紙を読んでは返事を考え、出してからも無駄に想像力を働かせ浮かれておりました。
 それが周りからどう見えるかなどと考えもせずに。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お母さんはヒロイン

鳥類
ファンタジー
「ドアマット系が幸せになるのがいいんじゃない」 娘はそう言う。まぁ確かに苦労は報われるべきだわね。 母さんもそう思うわ。 ただねー、自分がその立場だと… 口の悪いヒロイン(?)が好きです。

前世のノリで全力面接対策したらスパイを疑われた

碧井 汐桜香
ファンタジー
前世の記憶のあるジョセフィーヌ・アイジャルは、ついに学園を卒業する。 王宮に士官するために、筆記試験は無事に好成績で突破し、最後の面接試験だ。 前世の通りにガクチカ、自己PRと企業分析。完璧に済ませて臨んだ面接は、何かおかしな様子で……?

旧王家の血筋って、それ、敵ですよね?

章槻雅希
ファンタジー
第一王子のバルブロは婚約者が不満だった。歴代の国王は皆周辺国の王女を娶っている。なのに将来国王になる己の婚約者が国内の公爵令嬢であることを不満に思っていた。そんな時バルブロは一人の少女に出会う。彼女は旧王家の末裔だった。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

馬鹿王子と悪役令嬢とヒロインと

越路遼介
ファンタジー
フィオナ王国第二王子のレオン、王立学園卒業パーティーで婚約者たる公爵令嬢ロゼアンナに『ベルグランド公爵令嬢ロゼアンナ!私の愛するキャサリンに苛めを重ねていたこと断じて許せん!貴様との婚約を……』と何故か最後まで言い切らない。いや、言いきれない。何故か。その瞬間にレオンの体内に宿りし者がいた。それは婚約破棄後の人生を全うした94歳のレオン自身の魂が若き日の、婚約者ロゼアンナ断罪の日に戻ってきてしまったのだ! ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 越路遼介と言います。前から挑戦してみたかった婚約破棄と悪役令嬢にチャレンジしてみました。前後編の短い小説ですので、気軽に読んでもらえたらと思います。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

それは思い出せない思い出

あんど もあ
ファンタジー
俺には、食べた事の無いケーキの記憶がある。 丸くて白くて赤いのが載ってて、切ると三角になる、甘いケーキ。自分であのケーキを作れるようになろうとケーキ屋で働くことにした俺は、無意識に周りの人を幸せにしていく。

ネット小説の悪役令嬢になってしまった……

菜花
ファンタジー
赤塚千冬は事故に巻き込まれて転生してしまう。けれど転生した先は直前まで読んでいた小説の悪役令嬢セレスティアだった……! 選択式の小説だったけど、ヒロインの子がセレスティアを選ばない限り死ぬまで幽閉され続けるキャラじゃない!いや待てよ、まだ本編は始まってない。始まる前に幽閉フラグを折ればいいのよ――! 冷遇された聖女の結末のセルフパロのようなものです。 詳しくは該当作を見てね!

処理中です...