もう二度と乙女ゲームはしない

こうやさい

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帰ってこなくなるかもしれないし

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 ……警戒していた夜の方も、妙なプレイはもちろん、手を出してこないどころか同じ部屋で寝ることもない。ベッド一つしかないんだけど。
 最初の三日くらいはさすがに気が張ってて疲れてるわりに寝付きが悪かったんだけど、夜中に入り口から様子を見に来てくれていただけだった。
 いつまでもソファーで寝かせてるから眠りが浅いせいもあるかもしれない。あたしの感覚ではそこそこいいソファーだけど、やっぱりソファーだし、狭くて寝心地が悪いだろう。
 そういう場合日本だったら安いお布団一組買いましょうである意味済むんだけど、ベッドをそのノリでもう一つ買っていいものなのか。金銭的なこともそうだけど使わなくなったとき取る場所が滅茶苦茶ちがう。

 ……だいたい、もうちょっとしたらアトリエから帰ってこなくなるかもしれないし。

 そうなったとき、空っぽのベッドの前であたしは悲しみにくれるだろう。
 この身体の持ち主がじゃない、だ。

 嘘かホントか知らないけど、誘拐された子供が不安のあまり原因の誘拐犯に懐いたなんて話がある。
 それと比べればいくらやることがエグくてもディスプレイの向こうで他の人を相手にやっていたのをどこかお気楽に見ただけに過ぎず。
 実際に心細い状況に置かれたあたしには気遣いと優しさを見せる彼にあたしが恋情、あるいはそれに錯覚するものを抱いたとしても何の不思議もない。
 ……元々見た目は好みだったせいはあるだろうけど。
 ゲームでは行動棚上げしてもそこまでじゃなかったんだけどなー。

 特殊な状況のせいもあるだろうけど、多分彼が表情を変えるから。
 授業用の貼り付けた変わらない笑みでも、絵を描いていたシーンの、そしてトゥルーエンドで見るどこか芸術以外を拒絶しているように見える表情でもなく。
 時には困惑してみえたり、嬉しそうにしている事もあったり、見つめられたり。
 ゲームはフルアニメーションじゃなかったからか、そんな細かい表情を見ることはなかった。
 いや、見つめられはしてたのか。どのみち別の人を見ていたというだけで。

 いつまで、この生活を続けなければならないのだろう。
 いつまで、この生活を続けられるのだろう。

 自分がどちらを望んでいるのかわからなかった。
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