殿下に対する恋愛相談

殿下に対する恋愛相談

　まぁ、殿下。いくら年上の幼なじみといえと、仮にも婚約者に対して恋愛相談をするものではありませんわ。

　殿下の夢は欲のない可愛らしい女性と結婚することでしたわね。
　それは無理ですわ。
　いえ、殿下が見初められた女性が嘘を吐いていると言っている訳ではありませんわ。
　ただ表に出すか出さないかはとにかく、強い欲の一つもないような女性が殿下の隣で末永く生き続けることはなかなか難しいと思いましてよ？
　殿下というお立場の横に立つにはそれなりの気合いと能力が要りますの。

　まぁ、守って差し上げますの。殿下はお優しいですわね。
　けれどそれを成し遂げるにはまだまだ成長する必要がありますわ。
　少なくとも婚約者に恋愛相談をしていては駄目ですわ。
　信用して下さるのは有り難いですけれど、近くにいる方も全員信用していらっしゃいますの？
　良くも悪くもわたくしが殿下と将来結婚することを前提に行動していらっしゃる方はいらっしゃいますわ。
　予定が狂うのは殿下もお好きではないでしょう？
　なのでその方々に納得してもらわなければなりませんわ。
　その相談を問題に近すぎる人相手にやってしまっては、対策を取る前に知られてしまって怒り始めてしまうかもしれませんもの。
　それ以外にも問題はありますけれど、今回は止めておきますわね。

　大丈夫ですよ、出来るようになるまではわたくしがいますから。
　わたくし達は政略での婚約ですけれど、将来結婚するということが政略なのではありません。
　わたくしは殿下が成長するまでの盾として選ばれました。
　本当のお相手が見つかるまでの仮の存在です、解消されることこそが政略なのです。
　それまでに殿下がお相手を守り切れるようになれば、夢が叶うこともあるでしょう。
　頑張って下さいね。

　……辛い思いをするのはわたくしだけで充分です。