魔法は秋風と共に

こうやさい

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「何だよ、通話スマホじゃ出来ない話って」
 夏休みといえば子供は外で遊ぶものだとボケかけているじーちゃんは繰り返すが、こう暑いと迂闊にそんなことが出来るはずがない。遊ぶのはどこか室内だとしても外出となれば移動がある、タクシーくるまで行けるところばかりとは限らない。ちょっと思い付いたでろくな準備もなくうろつけば後が怖い。そこまでして行ったところでオレらもなにかと忙しいから遊べるとは限らないしな。
 なのでどうしても一緒にやらなければならないこと以外は友達とは大概スマホ越しになる。……てか、会う約束するために連絡で案外用件片付いたりするし。
 だからそれでも直接しなければならないというのは――。
「飲むと使ドリンクがあるかもしれないんだって」

 魔法がおとぎ話の中の存在ではなく実在すると認められたのはオレ達が生まれる前の話で、使える人はすごく足が速いとかすごく記憶力がいいとか、そういう感じの個性として認識されている。いい意味で目立つ方のギフテッドってヤツだ。
 仕組みがあまり解明されておらず、超能力と呼ばれる事もあるが、それでもオレらは魔法と呼ぶ。生まれたときから使えないとは思いたくないそうだ。
 けれども目指してなれるわけでなく、人数は圧倒的に少なく、こんな地方都市……はっきり言えば田舎には存在していない。
 はずなのだが。

「誰かが使っていた……だけならそんな話にならないよな?」
 田舎は閉鎖的といえど別に鎖国とかいうヤツをしている訳じゃないから、人の出入りはある。碌な観光地とかないからあんま来ないけどな。
 なのでたまにそれっぽいのを使っている人がいないこともない……はっきり見せてもらったことがないからそれっぽいだけで、実は大人なら誰でも使ってるような道具の可能性もあるけど。スマホでだいぶ追いついたとはいえオレらの世界はまだまだ狭い。
 なのでそれだけでわざわざ直接会って話をしようとはしない。

 魔法の話はスマホを通さないというのはオレ達の間でやっている遊びで。
 意味がないと分かっていながら誰もが破らない願掛けで。
 忙しいはずのになぜか有る退屈のしのぎ方で。
 それでも目撃情報程度なら世間話なのだから普通にスマホでもやる。

「そもそもドリンクってどこから出てきたんだ?」
 ドリンク自体もそうだが、それで魔法を使えるようになるって発想が。
「いやバスの窓から見たんだって、中学生のおねーさんがペットボトル半分くらいを一気飲みした後、そのペットボトルを振り回したら不自然に風か」
「見てたのかよ!?」
 思わず叫ぶが。
「……いやけどバスの窓からってことは一瞬でその後も確認出来てないんだろ?」
 嘘は疑わないが見間違いは疑う。
「だいたい中学生って情報は何から?」
 中学生くらいってオレからすれば一番年齢が分かりづらい。
「制服着てた」
「あー」
 あの襟が暑そうな真っ白なセーラー服。部活かなんかの帰りなの見かけて中学生って地獄だなと夏休みの度に毎年思ってるヤツ。
 その地獄の中学生は近づいてくるのだが。
「それは目立つな」
 女子中学生は複数いるのでそういう意味では目立たないが、夏休みに制服姿で一人彷徨いていれば目立つ。
 一人?
「その人誰かと一緒だったとか、他の目撃者とかは?」
「バスは貸し切り田舎道」
 つまり乗客は自分だけで人がいない道だった、と。
「で、その人は一人だった」
「やっぱりか」
 オレらよりも大人と言っても中学生がそんな珍しいものの存在知ったら黙ってられるはずがないもんな。欠片も噂が聞こえてこないわけがない。女の友情とか信じない。
「けど目立つなら他にも目撃情報があるかもしれないな」
 魔法じゃなくとも夏休みに制服姿の少女が一人うろついていれば意識に引っかかる人はいるだろう。

「探そう」
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