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前世を思い出したのでこれから婚約破棄してくる婚約者さまへの気持ちがなくなりました
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それはめまいというにもあまりにもささやかな衝撃でした。
けれどその瞬間、なぜか前世の記憶が蘇ったのです。
わたくしが転生したのはオンノベの世界、あるいはそれに類似した世界のようです。そのものと言い張るには微妙に整合性が……。
ストーリーはテンプレといえばテンプレな男爵の庶子だったヒロインが父親に引き取られ貴族の通う学園に入れられ、そこにいる様々な貴族の方々と関わりながら成長し、ヒロインに嫌がらせをしていた婚約者である悪役令嬢と婚約破棄した殿下と最後には結婚し、結婚式の場面で終わっていました……第一部は。二部は冒頭で放置されましたわ。
成長……いえ、市井で育った事を考えると成長なのですけれど、いざ貴族の立場で育ってしまってからみると、この年齢でそれが出来るようになったからって何を言っていますの!? となるのも事実なんですのよね。努力は認めますけれど。
もっとも市井の立場など欠片も考えていなかった辺り、わたくしも世界は狭いのでしょう。
それで、その悪役令嬢がわたくしです。
嫌がらせとは申しますが、覚えている限り作中でやったことは貴族的にはほぼ挨拶のようなものなのですが。
確かに市井の……いえ、前世の感覚では嫌がらせと取れなくもない言い回しでしたが、ヒロインはとにかく殿下には正確に通じるはずですわよね?
それを口実に婚約を破棄したのか、貴族的な言い回しが理解出来なかったのかどっちなのかしら? ……どちらにしろ国の将来が不安ですわ。
少なくとも作中では口だけで実力行使はしていませんし、していない以上証拠も出ませんでしたから――ですから、貴族からすればあれは挨拶ですからいじめだという証言は出てきませんわ――破棄出来る理由にはならないと思うのですけど……フィクションとしてならいいんですけれど、それ、成り立ちます?
世の中の在り方がいきなりガラッと変わるほどの強制力があるというなら、それは殿下にではなく世界への敗北ですわね。
そういえば強制力という概念もオンノベで知りましたわ。
幸い、記憶が戻りはしたものの人格が乗っ取られたり、前世の価値観が上位になるようなことはなさそうです。
けれど一つだけ決定的に変わったことがあります。
そんな、その程度の殿下だというのにわたくしは今の今まで恋い焦がれておりました。
本当に世界が狭かったのですわね。
あるいはそれこそが強制力というものなのかしら。
殿下がまともでしたら、百歩譲っても契約の破棄をあんな形でするはずはありませんし、悪役令嬢が何もやらかさなければ物語が盛り上がりませんもの。
けれどもこれで婚約を解消するのは難しくなりましたわね。
だって殿下はもうヒロインと出会ってしまって、わたくしがもう少しでご挨拶する程度の状況にまでなっていますのよ?
殿下はわたくしが何もしなくとも既に問題視されているでしょう。なのにわたくしという補佐になりうる存在をわざわざ無くすような真似を周りが許すはずがありませんわ。
なのでわたくしが問題を起こして婚約を破棄されるか、このまま結婚して冷めた関係を築くか……殿下の没落に巻き込まれるかでしょうね。
最後は絶対に避けたいとして……破棄された後に自分の立場を回復させるのと、殿下と結婚した後に殿下の失策を補うのと。
どうしましょう、前者の方が絶対に簡単ですわ。
というより、強制力が起こらなければその程度の理由で破棄だなんて殿下が自滅するだけですわ。
よく王族としてヒロインと結婚式まで持ち込めましたわね? ご都合主義は恐ろしいですわ。
けれどわたくしここでは強制力は起こらないと判断しております。
そんなものがあったら世界は既に破綻しているでしょうから。細かくつっこみはしませんでしたけれど。
いままでそうさせないように調整をされている事こそが強制力というならあり得ますけれど、調整した以上これからをそのままの筋書き通りに進めるのは無理でしょうね。
そもそもわたくしの存在が異質ですし。
よくそんな話読んでいたわねと我ながら思いますけれど。
書いていたのが友人でしたの。
いい子でしたのよ? オンノベさえ関わらなければ。
殿下が理想だと書き始めた時は言ってましたけど……最後まで理想だったのかしら?
まさかヒロインに転生してたりしないでしょうね?
殿下に未練はありませんけれど。
そこまでの想いは少しうらやましい気はいたします。
今のわたくしにはどこにも存在しないものですもの。
けれどその瞬間、なぜか前世の記憶が蘇ったのです。
わたくしが転生したのはオンノベの世界、あるいはそれに類似した世界のようです。そのものと言い張るには微妙に整合性が……。
ストーリーはテンプレといえばテンプレな男爵の庶子だったヒロインが父親に引き取られ貴族の通う学園に入れられ、そこにいる様々な貴族の方々と関わりながら成長し、ヒロインに嫌がらせをしていた婚約者である悪役令嬢と婚約破棄した殿下と最後には結婚し、結婚式の場面で終わっていました……第一部は。二部は冒頭で放置されましたわ。
成長……いえ、市井で育った事を考えると成長なのですけれど、いざ貴族の立場で育ってしまってからみると、この年齢でそれが出来るようになったからって何を言っていますの!? となるのも事実なんですのよね。努力は認めますけれど。
もっとも市井の立場など欠片も考えていなかった辺り、わたくしも世界は狭いのでしょう。
それで、その悪役令嬢がわたくしです。
嫌がらせとは申しますが、覚えている限り作中でやったことは貴族的にはほぼ挨拶のようなものなのですが。
確かに市井の……いえ、前世の感覚では嫌がらせと取れなくもない言い回しでしたが、ヒロインはとにかく殿下には正確に通じるはずですわよね?
それを口実に婚約を破棄したのか、貴族的な言い回しが理解出来なかったのかどっちなのかしら? ……どちらにしろ国の将来が不安ですわ。
少なくとも作中では口だけで実力行使はしていませんし、していない以上証拠も出ませんでしたから――ですから、貴族からすればあれは挨拶ですからいじめだという証言は出てきませんわ――破棄出来る理由にはならないと思うのですけど……フィクションとしてならいいんですけれど、それ、成り立ちます?
世の中の在り方がいきなりガラッと変わるほどの強制力があるというなら、それは殿下にではなく世界への敗北ですわね。
そういえば強制力という概念もオンノベで知りましたわ。
幸い、記憶が戻りはしたものの人格が乗っ取られたり、前世の価値観が上位になるようなことはなさそうです。
けれど一つだけ決定的に変わったことがあります。
そんな、その程度の殿下だというのにわたくしは今の今まで恋い焦がれておりました。
本当に世界が狭かったのですわね。
あるいはそれこそが強制力というものなのかしら。
殿下がまともでしたら、百歩譲っても契約の破棄をあんな形でするはずはありませんし、悪役令嬢が何もやらかさなければ物語が盛り上がりませんもの。
けれどもこれで婚約を解消するのは難しくなりましたわね。
だって殿下はもうヒロインと出会ってしまって、わたくしがもう少しでご挨拶する程度の状況にまでなっていますのよ?
殿下はわたくしが何もしなくとも既に問題視されているでしょう。なのにわたくしという補佐になりうる存在をわざわざ無くすような真似を周りが許すはずがありませんわ。
なのでわたくしが問題を起こして婚約を破棄されるか、このまま結婚して冷めた関係を築くか……殿下の没落に巻き込まれるかでしょうね。
最後は絶対に避けたいとして……破棄された後に自分の立場を回復させるのと、殿下と結婚した後に殿下の失策を補うのと。
どうしましょう、前者の方が絶対に簡単ですわ。
というより、強制力が起こらなければその程度の理由で破棄だなんて殿下が自滅するだけですわ。
よく王族としてヒロインと結婚式まで持ち込めましたわね? ご都合主義は恐ろしいですわ。
けれどわたくしここでは強制力は起こらないと判断しております。
そんなものがあったら世界は既に破綻しているでしょうから。細かくつっこみはしませんでしたけれど。
いままでそうさせないように調整をされている事こそが強制力というならあり得ますけれど、調整した以上これからをそのままの筋書き通りに進めるのは無理でしょうね。
そもそもわたくしの存在が異質ですし。
よくそんな話読んでいたわねと我ながら思いますけれど。
書いていたのが友人でしたの。
いい子でしたのよ? オンノベさえ関わらなければ。
殿下が理想だと書き始めた時は言ってましたけど……最後まで理想だったのかしら?
まさかヒロインに転生してたりしないでしょうね?
殿下に未練はありませんけれど。
そこまでの想いは少しうらやましい気はいたします。
今のわたくしにはどこにも存在しないものですもの。
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