あらすじから逆算する『結局悪役令嬢?』

こうやさい

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落ちもの[童話?]

魔王と御使い

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 神の御前に立ったとき、少女が口にしたのは何か知らない音のような言葉でした。
 瞬間、世界は光に満ちました。

   *  *  *

 とある世界のとある国に一人の小さな王子さまがいました。
 この王子さまはなかなかの我が儘で乳母の言うことも教育係の言うことも聞きません。
 頼りのお妃様は王子さまを生まれた時に儚くなられ、王様はそんなお妃様の忘れ形見である末息子が可愛くて仕方なく甘やかしてばかりです。
 お兄様お姉様は学生で寮生活の真っ最中でお城にいらっしゃいません。
 もはや止めることは誰も出来ませんでした。

 ある日護衛を巻いた王子さまは勝手に王子さまにとっては遠くの湖まで遊びに行きました。
 そこには先約がいました。
 そのことに腹を立てた王子さまがその人影を睨み付けようとしましたが、次の瞬間動けなくなってしまいました。
 あまりにも美しい女の子が見えたからです。
 年のころは王子さまとあまり変わらないでしょう。
 つややかな黒髪が縁取る小さな顔、華奢な体を包む白いゆったりとした上質な服、真っ赤な唇。
 やや大人びているその姿を、驚きで見開かれた目があどけなく見せていました。
 一目で女の子を気に入った王子さまはその場で求婚しましたが、女の子が受けるはずがありません。
 腹を立てた王子さまは、王子さまを追ってきた護衛に命じ、女の子を捕まえてしまいました。

 王子さまは周りの大人達に命令し、捕まえたことを内緒にさせました。
 そして婚約者にすると言い張りました。
 こうして女の子は塔に閉じ込められてしましました。
 王子さまは毎日結婚する気になったかと尋ねますが、断り続けます。
 事情を知っている大人達は、女の子を助けられないか、せめて家族に連絡出来ないかと狼狽えましたが、女の子はあの場所に帰りたいというだけです。
 ただあそこに帰すだけでは王子さまに見つかるのはもちろんのこと、猛獣に襲われる心配があります。
 上質な服を着ていた以上、他国の貴族の娘の可能性もあります。怪我を負わせるわけにはいきません。
 結局帰すことは出来ませんでした。

 そうしてなすすべもなく月日が経っていきました。

 王子さまも年頃になり、すっかり分別が付いてもよさそうなものですが、中身はほとんど変わっていませんでした。
 未だ、既に子供とは呼べなくなっている少女を閉じ込めたままでした。
 意地で求婚を続けていますが、色よい返事は返ってきません。
 事情を知らない大人達はそろそろ王子に結婚をと勧めます。
 ずっと前から結婚を約束した人がいるという王子さまに、ならば式を挙げてしまいなさいと勧めます。
 誰を連れて来たも何も言わないつもりでした。
 既に王子さまは周りの大人達に諦められていたからです。

 神の御前で愛を誓えと命じたとき、少女は初めて承諾しました。
 言った王子さますら驚きましたが、それならばと式の準備は大急ぎで進められます。
 周りは皆どこから現れたか分からないとはいえ、ずっと王子さまの婚約者だったという少女を歓迎しました。
 笑顔一つ浮かべなくとも、少女は充分に愛らしかったのです。
 過去を隠すために秘密を知る者達は遠ざけらたので、止める人は誰もいませんでした。
 そうして式が始まり、神の御前に立ったとき、少女が口にしたのは愛の言葉ではなく、何か知らない音のような言葉でした。

 瞬間、世界は光に満ちました。

 まぶしさに慣れた目に映ったのは一人立ち尽くす王子さまと、それを見下ろすように高いところを飛んでいる少女の姿でした。
 少女の背中には羽根がありました。
 少女は神様の御使い様だったのです。
 飛んだまま少女は事情を語ります。
 必要があり力を封じ休んでいたこと、そこを王子に捕らわれたこと、ずっと閉じ込められていた事、一部の場所でなら封印を解くことができること。
 騙したと騒ぐ王子さまに同調するものは一人もありません。ただ伏して赦しを乞うばかりです。
 わたくしの分の責任は王子のみに取らせましょうと御使い様は言いました。
 御使い様は王子さまのせいで起こったありとあらゆる憎しみと痛みと悲しみを集め、王子さまに詰め込むと、違う世界に飛ばしてしまいました。
 そうして御使い様は帰っていってしまいました。

 御使い様がいなくなった国はゆっくりと衰退していきます。
 そして魔王まで産まれてしまいました。あの王子さまの執念でしょう。
 なので助けようとした人々の子孫の中に時折巫女が産まれるとか。
 そして巫女のいる時代だけは持ち直すのだとか。

 そんな、おとぎ話にございます。
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