あらすじから逆算する『結局悪役令嬢?』

こうやさい

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双子入れ替わり[エセミステリ?]

隣の花は赤い 後

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「――よく知ってらっしゃいますわね」
 いきなり聞こえた声に執事と二人そちらの方を向く。
「いつも迎えて下さる方がいらっしゃらないので、よほど忙しいのかとお行儀が悪いけれど勝手に入らせてもらったわ」
 婚約者がいつもと同じにこやかな笑みで挨拶をする。
 出迎えかなかったのは確かに怠慢ではあるが、彼女が来たのは約束の時間よりも早いせいもある。他のものは忙しかった上、一番聡い執事は今それどころではなかった。
 彼女が時間より早く来たのは、恐らく女児の死体が発見された事を知ったからだ。
「おまえは何者だ!?」
 思わず叫ぶ。
「まぁ酷い。五年も婚約者をやっていますのに」
 ころころと彼女は笑うが婚約したのはもっと前だ。
「おとう様……さっきおっしゃってた従僕がすべて教えてくださいましたの。殺すように命じられたことも、だから連れて来て育てていることも」
 彼女がしているのは告白だ。
「いつか冷静になって迎えに来てくれるかもしれないからと、苦しい生活の中で自分を犠牲にして礼儀作法やいろいろなものを学ばせてくれましたわ。ですから帰っても『少しおてんばになったね』ですみましたの。むしろ元気になったと喜んでくださいましたわ」
 誰かと――本来の婚約者と入れ替わったということの。
「けれど実の父は冷静になるどころか、わたくしの事なんてしたことどころか存在すら忘れて後妻を迎えて幸せにしてらしたわ。それを知ったおとう様はとうとう心労が祟って亡くなってしまいましたの」
 その従僕が心底その娘を案じていたのか、何か企んでいたのかは知らないが、それは潰えてしまったというわけだ。
「お姉様がおとう様と暮らしていた近くの別荘に療養に来たのはちょうど同じ時期でしたわね」
 告白は続く。
「その頃はまだお姉様ちをわけたしまいに憧れがありましたから、こっそりと見に行きましたの。お嬢さまというのは下々の顔なんて見る気すらないんでしょうね。帽子を持ち上げてお姉様にだけ顔を見せたけれど、確かに目が合ったけれど、気持ち悪いぐらいそっくりなのに何も反応しませんでしたわ」
 どこか遠くを見る視線で語り続ける。
「この人もわたくしがいる事に気付かないのだなと分かりましたわ。ならばほんとうにわたくしがいなくなればいいと思いましたの」
 普通ならば自殺の決意に聞こえるかもしれないが。
「だが、君がいなくなれば不審に思う人が……」
「親が死んだ直後なら、いなくなっても誰かを頼って外に出て行ったのだと思うのが精々ですわ」
 確かにその可能性を考える人は多いだろう。
「それにおとう様はむやみに顔をさらさせませんでしたの。肌が弱いといつも大きな帽子を被せて。色白な令嬢の方がもてはやされますからそうしたのでしょうけれど。結果、はっきりわたくしの顔を知る人はいませんでしたのよ」
 恐らく閉鎖的な場所だろうのにそんなことがあり得るのだろうか。執念を感じる。
「ちょうど連れてきた世話係と地元の世話係が入れ替わる時で目が離れたんでしょうね。自分でも不思議なほど上手くお姉様を連れ出せましたわ」
 成功を喜ぶような無邪気な笑顔で続ける。
「崖がありますの。そこから突き落としましたの。油断していたのか少し押せば簡単に転げていきましたわ。それだけで隠したりはしていませんの、本当ですのよ?」
 けれど今まで見つからなかった。なのに今になって見つかってしまった。
「後は自分の服の中からお姉様が来ていたような服を引っ張り出してきて、それを着て野原にうつ伏せに寝っ転がっていましたわ。そうしたら上手いことお姉様が倒れたのだと誤解されて。既に連れてきた世話係は帰ったようでしたわ」
 倒れていると思い込めば顔色は見ても他の細かい差異なんてみなかったのだろう。
「なんだ言っても緊張していたんですわね。その後本当に三日ほど寝込んでしまって。おかげで記憶が曖昧でも怪しまれませんでしたわ」
「そ、それを私に言って何になる!?」
 やっとその疑問に行き当たる。
「婚約者のよしみで味方をしていただけないかと」
 彼女はつややかに笑う。これが本来の姿なのかもしれない。
「私の婚約者は……」
「お姉様だとおっしゃるの? 純愛ですこと。純愛を貫いてわたくしと結婚すれば得るはずの何もかもを捨てるのね」
 それは確かに一個人の判断で捨てるには大きい。例え個人で判断することが許されても大きすぎる。
「それに貴方も気づかなかったではありませんか」
 ……確かにそうだった。違和感は持っても追求はしない。その程度の気持ちでしかなかった。
「わたくしこれでも知られる覚悟もしてましたのよ。最初から間違われない可能性、お姉様の死体が見つかって真実がばれる可能性、家族や貴方に気づかれる可能性」
 確かに起こりえる可能性だっただろう。
「けれどもう覚悟なんてそんなものすっかりなくなってしまいましたの。ですからもし聞かれたら証言してくださいな。そんなこと思った事もなかったと」
 確かに下手に入れ替わり云々などというと感づかれるかもしれない。
「きっと手癖の悪い子供がいたんですわ。気に入っていたブローチを盗っていくなんて酷いこと。だから天罰が下ったんですわね」
 そうして彼女は自分を殺す。
 私は……。
「…………せっかく婚約者きみが来てくれたというのに立たせっきりで失礼したね。――お茶の用意を」
 執事に向かって言う。
「……かしこまりました。いらっしゃいませ
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