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セルフパロディー[元作品名]
これはゲームだったけど 前[これはゲームだったのに]
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もう、どれくらい経つだろうか。
塔の中、一人そんなことを考える。
もう何年も経ったような気もするし、もしかしたら一日も経っていないのかもしれない。
今はまだ殺す気はないのだろう。水や食事は用意されている。ただ食欲がないだけ。
水はさすがに飲んだけれど、全部涙になって流れてしまった気がする。
冷静に考えるなら魔王を攻略するのが一番正しいのだろう。万一助けることを国が選択しても攻略対象は下手をすればチュートリアルで顔を合わせただけの人もいる。倒せるだけのメンバーが集まらなくて、国を危険にさらすだけだろう。
仮に助けられたとしても逆ハーを作りたい訳じゃない。感謝を抱くことはあっても恋心を抱くことはきっとない。
殿下しか要らない。
だから魔王を攻略する事も出来ない。そうしたら自分も助かるし、国を、延いては殿下を助けることになると分かっているのに。
ゲームならば開き直ってしまえばいいのに、中途半端にしかなれない。
上層部は国を継ぐ予定のない王子のしかもまだ結婚していない相手と国となら天秤に掛けすらしないだろう。
だからどうか殿下があたしを見捨てる判断をしている事を他力本願にも祈る。
あの酷い言葉がすべて本心からならきっと叶っただろうに。
なんて我が儘なのだろう、未だそれを嫌だと思う自分がいる。
それが一番悲しいのかもしれない。
見捨てられデッドエンドとはあったが、それが時間切れで結果的にそうなったのか、積極的に国が見捨てたのかまでは知らない。
もし前者だとしたら、ここであたしが衰弱死してしまったとしても、きっと魔王は要求を続けるのだろう。
無駄に殿下を苦しめるのだろう。
窓の外を見る。
閉じ込める場所に体を出せる以上の大きさの窓があるのはおかしいと考えるのはある意味正しいのだろう。
けれど降りるための足場もなければパラシュートもない。部屋にある布を全部細長く切って繋いでも地面には届かない。ビルのように非常用の何かが用意されている訳でもはしご車があるわけでもない。
そこを魔王は出入り口にする。窓と表現するのがおかしいのかもしれない。
飛べるからこそ出来る事で、何の能力もない人間にとっては閉じ込められているのと同じだろう。シーツ辺りで空気抵抗を作って多少速度を弱めても、相当の魔法の才があってもきっと同じ事。
……けれどそれは生きて出たいならという前提がつく。
何か特殊な方法でも取られていない限りこの部屋は見張られていない。少なくとも見える範囲にそれらしき形跡はない。
そういえば魔王の姿も見ていない。どうやって蜜月エンドに行ったのかと、ほんの少しゲームを思い出して苦笑する。選択肢はある意味偉大だった。
つまり飛び降りれば外に出られるはずだ。
もちろん、死んでしまうだろうけれど、体も潰れてぐちゃぐちゃになるだろうけれど、たぶんこの花嫁衣装はある程度残るだろう。代々の王家に嫁ぐ者に着せられる品で、状態保存の魔法と位置を知らせる魔法が掛かっていると聞いた。あとサイズ変化もするそうでわりと真面目に普段着にもその機能欲しかった。けれど失われた魔法だとかで新しく作るのは不可能だとか。
それを穢してしまうのは少し忍びないけれど。それを見ればもうあたしが人質にはなっていないと分かるだろう。
正確な場所は分からないけれど、ここは魔界ではないはず。ならばきっと情報は届く。
あの日、ドレスを見せたとき、視線を逸らしながら「まぁ、みすぼらしくはないな」と言われたことを思い出す。ドレス姿なんてこの世界なら見慣れてるだろうのに耳が赤かった。
今度は完全にみすぼらしくなるけれど出来ればそこは許して欲しい。
覚えていないとはいえ一度は体験しているはずなんだけど。
しょせんゲームなんだしと思う気持ちと、だとしてもここに存在しているという思いと。
結局のところ死ぬのはそれでも怖いわけだけど。
窓を開け放つ。
風が思ったよりも澄んでいて、どこかすがすがしい気分になる。
これでもう、重荷にはならなくて済む。
塔の中、一人そんなことを考える。
もう何年も経ったような気もするし、もしかしたら一日も経っていないのかもしれない。
今はまだ殺す気はないのだろう。水や食事は用意されている。ただ食欲がないだけ。
水はさすがに飲んだけれど、全部涙になって流れてしまった気がする。
冷静に考えるなら魔王を攻略するのが一番正しいのだろう。万一助けることを国が選択しても攻略対象は下手をすればチュートリアルで顔を合わせただけの人もいる。倒せるだけのメンバーが集まらなくて、国を危険にさらすだけだろう。
仮に助けられたとしても逆ハーを作りたい訳じゃない。感謝を抱くことはあっても恋心を抱くことはきっとない。
殿下しか要らない。
だから魔王を攻略する事も出来ない。そうしたら自分も助かるし、国を、延いては殿下を助けることになると分かっているのに。
ゲームならば開き直ってしまえばいいのに、中途半端にしかなれない。
上層部は国を継ぐ予定のない王子のしかもまだ結婚していない相手と国となら天秤に掛けすらしないだろう。
だからどうか殿下があたしを見捨てる判断をしている事を他力本願にも祈る。
あの酷い言葉がすべて本心からならきっと叶っただろうに。
なんて我が儘なのだろう、未だそれを嫌だと思う自分がいる。
それが一番悲しいのかもしれない。
見捨てられデッドエンドとはあったが、それが時間切れで結果的にそうなったのか、積極的に国が見捨てたのかまでは知らない。
もし前者だとしたら、ここであたしが衰弱死してしまったとしても、きっと魔王は要求を続けるのだろう。
無駄に殿下を苦しめるのだろう。
窓の外を見る。
閉じ込める場所に体を出せる以上の大きさの窓があるのはおかしいと考えるのはある意味正しいのだろう。
けれど降りるための足場もなければパラシュートもない。部屋にある布を全部細長く切って繋いでも地面には届かない。ビルのように非常用の何かが用意されている訳でもはしご車があるわけでもない。
そこを魔王は出入り口にする。窓と表現するのがおかしいのかもしれない。
飛べるからこそ出来る事で、何の能力もない人間にとっては閉じ込められているのと同じだろう。シーツ辺りで空気抵抗を作って多少速度を弱めても、相当の魔法の才があってもきっと同じ事。
……けれどそれは生きて出たいならという前提がつく。
何か特殊な方法でも取られていない限りこの部屋は見張られていない。少なくとも見える範囲にそれらしき形跡はない。
そういえば魔王の姿も見ていない。どうやって蜜月エンドに行ったのかと、ほんの少しゲームを思い出して苦笑する。選択肢はある意味偉大だった。
つまり飛び降りれば外に出られるはずだ。
もちろん、死んでしまうだろうけれど、体も潰れてぐちゃぐちゃになるだろうけれど、たぶんこの花嫁衣装はある程度残るだろう。代々の王家に嫁ぐ者に着せられる品で、状態保存の魔法と位置を知らせる魔法が掛かっていると聞いた。あとサイズ変化もするそうでわりと真面目に普段着にもその機能欲しかった。けれど失われた魔法だとかで新しく作るのは不可能だとか。
それを穢してしまうのは少し忍びないけれど。それを見ればもうあたしが人質にはなっていないと分かるだろう。
正確な場所は分からないけれど、ここは魔界ではないはず。ならばきっと情報は届く。
あの日、ドレスを見せたとき、視線を逸らしながら「まぁ、みすぼらしくはないな」と言われたことを思い出す。ドレス姿なんてこの世界なら見慣れてるだろうのに耳が赤かった。
今度は完全にみすぼらしくなるけれど出来ればそこは許して欲しい。
覚えていないとはいえ一度は体験しているはずなんだけど。
しょせんゲームなんだしと思う気持ちと、だとしてもここに存在しているという思いと。
結局のところ死ぬのはそれでも怖いわけだけど。
窓を開け放つ。
風が思ったよりも澄んでいて、どこかすがすがしい気分になる。
これでもう、重荷にはならなくて済む。
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