あらすじから逆算する『結局悪役令嬢?』

こうやさい

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セルフパロディー[元作品名]

これはゲームだったけど 後[魔王と御使い]

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 突然、ものすごい音と共に壁が何かで無理矢理壊された。
 当然視線はそちらの方に向く。埃でほとんど何も見えなかったけど。
 空気の流れが変わったせいか急に風が吹いてバランスを崩す。
 予定とは違ったけれど目的は達せられそうだ、と思うか思わないかのうちに何かに腕を窓とは反対方向に引っ張られる。
 勢い余って倒れそうになる寸前に誰かに抱き留められた。
 感じるのは床よりも柔らかく暖かい何か。
 理解より先に涙が溢れる。
 ぼんやりとした視界を占めるのは誰かの服で顔は見えないんたけど。
 エスコートされるときすらここまで近づいたことはなかったけれど。
 間違えるはずがない。
「殿……」
 うっかり抱きつこうとしたらものすごい勢いで引き剥がされた。
「無事か? 何で泣いてるんだ!? どこか痛いのか!?」
 瞬きと共に涙が伝い、視界と思考がクリアになる。
 予想通りの人物が珍しく慌てたような表情で目の前にいる。
 乙女ゲーム脳のままだったらこのままハッピーエンドだったんだろうなと、少しだけ思う。
「殿下こそ何故ここにいらっしゃるんですか?」
 ゲームだとしても、そうじゃなくともあり得ない。
「殿下自ら来る必要はないでしょう? そもそも助けに来る必要も」
 そんなこと言われなくても分かっているはずの人なのに。
「殿下に何かあったらどうすればいいんですか……」
 捕らわれた側の台詞ではないと思うが、それ以外の言葉もない。
「……助けに来る必要については」
 返ってきた殿下の声はどこか固い。
「おまえが巫女認定されたことで必要になった」
「巫女?」
 思いがけない事を言われて涙が完全に引っ込む。
 巫女というのはゲームだと魔王以上に設定でしかない存在で、昔御使い様を閉じ込めた王子がいて、怒った御使い様はその王子を魔界に追放し自らもこの世界からいなくなり、けれどそれでは世界が傾いてしまうからと助けようとしてくれた人の子孫に時々バランスを直すために巫女が生まれるという、この世界でも伝説の話だ。ちなみに王子が世界を呪い魔王になったんだそうで。
 ……なにそれ、誘拐されたから巫女って事になったわけ? そこまで魔王御使い様に執着してる訳? 怖っ。
「元々、巫女が存在する兆候はあったので秘密裏に最初は叔父上が、途中から僕が中心になって探してはいたのだが」
「中心?」
 思わず周りを見回すと、ゲームだとモブだった人達の中に攻略対象がちらほらと。
「……面識のある方もいらっしゃいますが、もしや殿下の部下でしたの?」
「表向きは無関係だ」
 ……この人達って休日にイベントこなすしか好感度が上がらないのに、王子の呼び出しが同時に掛かることが多かった人達よね?
 休日にしか会えないキャラだから呼び出しにかち合う回数も多いのかと思ってたら、もしかして王子スケジュール握ってましたか? 何時からあった、そんな設定。
「……まさか、おまえが巫女だとは思っていなかった」
 そうだった。いま重要なのはそっちだ。
「……とりあえずそれも説明して頂きたいのですが、その前に魔王はどうなりました? 攫われてきて以来一度も見てないんですけれど」
「すでに巫女の力で追い返されている」
「はい?」
「おまえが魔王の存在を拒絶したからだな」
 それは確かに目一杯してましたけど。
「……巫女ってそんなに凄いのですか?」
 自分の事なのに人ごとのように尋ねる。
「ああ。攫われれば救出するし、望みがあるなら出来る限り尊重する」
 それは巫女の能力ではなく権力の話なのだけれど。
「……望めば叶えてくれると?」
 殿下の肩が少し震える。
 思い出すのは好きだったと言いながら離れて行く王子のスチル。
 あれは自分よりヒロイン気持ちを優先するほど彼女が好きだったという描写だと思っていたけれど。
 改めてこちらの常識で考えると王子殿下との婚約はたとえ王子殿下でもそんな簡単に解消出来る訳がない。メイン攻略対象は王子殿下より身分が低いこともあり、気持ちがどうでも簡単に王子殿下が引ける状況ではない。
 もしかして表に出ないだけであの時既にヒロインは巫女認定を受けていた? だから望みが叶えられた? ゲームのヒロインこのせかいでくらすひとは魔王を無意識で拒絶していたから滅多に出てくる事はなかった?
 そう考えればつじつまは合う。
 どこまでがシナリオ通りなんだろう?
 今のこの気持ちさえも?
 …………いや、違う。
 ゲームのヒロインは政略から逃れられなかっただけで王子に恋情は持っていなかった。
 王子を好きだったのは前世のあたし。
 殿下を好きになったのは今のあたし。
 これはゲームだったけど。
 もしかしたら今もゲームなのかもしれないけれど。
 この気持ちだけはシナリオの中にはない。
「でしたら殿下」
 殿下の表情が少し歪む。何を考えているのだろうと思う。
 殿下がまだシナリオの中にいるかどうかは分からないけれど。
 何時まで好きでいてくれるか分からないけれど。
「この婚姻は貴方のなさりたいようにしてください」
 殿下の顔が呆ける。予想外の事を言ってしまったらしい。
 けれど、国は巫女を手放したがらないだろう。
 そして、恐らくその為もあり巫女の願いを叶えてくれるという。
 ならばあたしが殿下を好きでいる以上、今後心変わりをしても殿下は逃れることが出来ない。
 政略だということは変わらない。
 それでも、だからこそ。
「……おまえは」
 殿下が恐る恐るという感じで、口を開く。
「わたしと離れたいとは思わないのか?」
「ええ、まったく」
 まだ通じてなかったのかと思ったが、こちらもゲームと混同していたのだから信じられなくともしょうがない。
「けれど無理に縛り付けたくもないですから」
 それはとても甘美で――とても淋しい。
 もう、ゲームだからとは思えない。
「この国を離れるつもりも不用意に何かを望むつもりもありません。ですから今でもその後でも好きになさってください」
 殿下はしばらく無言だった。
 無言のまま足を踏み出し――。
「その……」
 抱きしめられ、反射的に叫びそうになったが、何かを言いかけた殿下に気づきそれを止める。
「……わたしは口が悪いので、よほど明確な事でも言わない限り、きつい台詞でも適当に流して欲しいのだが……」
 …………確かにツンデレには婚姻を強制するよりも無茶な要求だったかもしれない。
 そう考えると我ながら酷い。
 けれど今度は笑いがこみ上げそうにすらなる。
 これからもそんな風にいられたら幸せだろうなと思う。
「――愛している」
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