彼女の目に止まりたい

あったかもしれないしなかったかもしれない後編の続き

　こうして彼女と結婚し、妻は本格的に匂い袋やいろいろな小物を作り始めたわけだが、これがまぁ、儲かった。あの時ヤツに返したお金は他の人に投資代わりにされたり金銭的に頼られたりしても困るからむしろ一部減らしていたらしい。結婚したときに差額を更に返そうとしたが、結婚祝いだと受け取ってもらえなかったそうだ。悪いことをしたかと少し反省していた。
　おかげでこっちは日々遊びほうけている……訳ではないが、仕事は馘首になった。上役が妻に惚れていたことを後になって知ったが、これは妻には言ってない。あるいは自覚がないだけでへまをしてた可能性もあるしな。

　なので新しい仕事を探しつつ、家事をやっている。
　家事が楽だと思っていたつもりはないが、正直参っている。
　仕事自体も想定以上に難しかったが、とにかく他人と関わる機会がない。
　女性がやるなら洗濯時に井戸端でしゃべる機会もまだあるのだろうが、混ぜてはくれない。混ぜてくれたとしても楽しい話題少なそうだけどな。
　恐らく妻も同じように思う質なのだろう。
　……なのにあれだけ美人なのだから外に出たら出たでいろいろ絡まれてるんだし苦労してきたのだろう。
　今、妻の求めているものが手に入っているならいいが。

　……それはそれとして仕事早く見つからないかなぁ。
　自分の収入がないのも不安なもんだし。
　もしかしてその辺り妻もだろうか？
　思った以上に考え方は似ていたかもしれない。