彼女の目に止まりたい

こうやさい

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後編

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 目の前に差し出された大きな花束に彼女は半眼になった。
「話とか聞いてない?」
 そう尋ねられたところをところをみると、前回お金にして返した話は彼女が意図的に広めたのかもしれない。少しばかりヤツに同情しないでもない。
「聞いてるけど……」
「それでもこんな花束を持ってきたわけ?」
「そうだけど」
 別にお金に替わるのでの間は最低限付き合ってくれるのでその間に口説こうと思ったわけではない。
 少しだけど多く返ってくるお金に期待したわけでも。
 本当に欲しいものはそれじゃない。
「そんなに評判がいいならいっそ商売にしたらどうかと思って」
 本当に持ち出しをしていないのであればだけど。
 仕事の片手間……ではなかったかもしれないが、生かせる技術があるならそれを使わないのはもったいないと思う。

 彼女が目を見開く。
「それって、結婚しても今の仕事を続けてもいいって事?」
「そう、なるかな」
 ……実はそこまで深く考えてなかったけど、別に妻は働いてはいけないなんて規則はないわけだし。
 けど家にいて欲しいって気持ちも確かに分かる。帰ればいつでも彼女が迎えてくれたら嬉しいし、結婚したとしても貴族の目に触れて無理矢理という可能性が彼女の場合高確率でありうるので。
 ちょっと後悔してきたものの、この期待に満ちたまなざしを裏切れるだろうか?
「これ、求婚よね? 材料提供じゃないわよね?」
「りょ、両方かな」
 ……一足飛びで求婚か確認が来た。
「ありがとう」
 彼女が嬉しそうに笑う。

 もしかして今、彼女は仕事と結婚したのだろうか?

 家事や商家なら店番などもあるが、それは彼女のやりたい仕事ではなかったのだろう。
 どことなく釈然としないものはあるが、彼女は嬉しそうだし、それが条件というならしょうがない。
 たまには構ってくれるいいなぁ。
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