このバグが直るまで

こうやさい

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前編

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「侯爵家の令嬢としての矜持があるのなら、せめて大人しく罪を認めろ」
 これ、乙女ゲームの悪役令嬢斬罪シーンだ。タイトルなんていったっけ? 一番好きなゲームなのになぜか出てこない。

 とある事情から悪役令嬢は特待生の平民であるヒロインにどのルートでも厳しく当たるだけど、断罪があるのは王太子ルートと悪役令嬢の婚約者の令息ルートと逆ハールート。学校の先生だの子爵家令息だのだけじゃ侯爵家の令嬢に逆らえないという身もふたもなさがやけにリアル。
 ちなみにどのルートかは人数と立ち位置で分かる。王太子中心で取り巻きがモブなら王太子ルート、攻略対象が全員そろっていれば逆ハールート。間に逆ハーまでは行かなくても攻略対象が味方してくれるルートもある、モブのグラとセリフ差し替えただけだけど。
 ちなみにそのどれでもなく今中心にいるのは悪役令嬢の婚約者なのでそっちのルート。身分的には婚約者の方が悪役令嬢より低いし、三男の上婿養子決定だから断罪成功しないと婚約破棄できたとしても碌な事にならないし必死。
 この人なぜか悪役令嬢とはいえ王太子ですらいない婚約者持ちというレアな立ち位置で、最初は悪役令嬢とそこそこ仲良くしてたので、ヒロインと会ってからの態度の変わりようが悪役令嬢以上に非難囂々。基本がヒロイン視点にも拘わらず、婚約者がそれでもいるのに必要以上に優しくするなと突っ込まれまくってた。

 まぁ、そんなこんなで顔はいいんだけど声はいいんだけどと言われつつ、人気はなかったんだけど、あたしは結構この人好きだった。
 リアルに好きだった人に人種置いとけば顔が似てたからってのもあるんだけど、この人みたいな人ならあたしが死んだ後も引きずらずに幸せに生きてくれるんだろうなと思ったから。

 一応不治の病じゃなかった。ただちょーっと難しいだけで。
 急激に病状が悪化するわけじゃなかったから、友人達とは徐々に距離を置いた。
 好きな人に告白なんて、もちろん出来る訳なかった。憂いているようで実際は願望なのかもしれないけどさ、たとえ振られたとしてもあたしが死んだと知ったら気にするだろうなー、と思ったから。
 で、空いた時間に乙女ゲーム始めてさー。見事どはまり。あんなに本数があるなんて。残された時間の少なさを嘆いたのはこれが一番の理由だったかもしれない、薄情な。

 けど、今ってゲームやってたっけ?

 そこまで来てやっと気づいた。
 立ち位置的にあたしって悪役令嬢なんじゃ……。
 状況も忘れて自分の服やら靴やらアクセサリーやらに目を向け、顔をぺたぺた触る。
 いや触ったってよくわかんないけどなんか鼻が高いし、服は確かに断罪シーンの悪役令嬢のものだし、視界にちらつく髪色も悪役令嬢のものだ。

 そっかー、手術して目が覚めてないんだなこれ。まだ昏睡して夢見てるだけなのか、ゲーム内転生かはしらないけど。
 ゲームそのものはしたけど、ゲーム内転生ものは詳しくないんだけどなぁ。攻略とか考察とか探したときに見つけたから存在自体はかなり知ってるんだけど、読んだのは少しだし、なんかお約束テンプレがベースらしいから、そこを勘違いしてる可能性があるからなぁ。

「……大丈夫か?」
 ……悪役令嬢が断罪されてる最中に心配されてしまった。これはいけない。
「貴方もわたくしに罪があるとおっしゃいますの?」
 ゲームの令嬢をまねて言ってみる。……うん、大根というか棒読み。

「……大丈夫か?」
 また心配された。
 話進まないからショックで錯乱か何かしたことにして無視してくれないかな? 多分それであってるし。
「わたくしは何も間違ったことはしておりませんわ」
 ……これもある意味事実だったりするし。
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