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恐らく途中で放置されます
秘めたる想いであったけど 後編
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陛下なのですから父様ぐらいなら命令すればわたくしの立場を止めるくらいは出来ます。
それでもそうなさらないところに好感を持ちますが、これは同時に陛下の権力の弱さを表しています。
わたくしが挙げた問題点のうち半分以上は発言力が強ければどうにでもなるものです。
陛下の子供とわたくしが同い年なのですから親子ほど年の離れたという表現は間違いではないですが、父様より陛下は十以上年下です。わたくしに兄がいることを差し引いてもそれだけ陛下が早く結婚して子を成したということが分かります。
元々先王陛下が急な病で亡くなり、母親もすでに亡く、母親の実家も没落していた中で急遽即位なさったそうです。
手っ取り早く後ろ盾を得る手段として国内の有力貴族の娘と政略で婚約、結婚をし、向こうは後ろ盾の見返りとして外戚としての権力を確固とするために早く子を求めたと。
緩やかに陛下の発言力は増していますが、本来ならば殿下に諸外国から婚約者をもらい外交を強化や、あるいは婚約者を権力の均衡を取れる家から選び相対的に発言力を強めるなどという手段が殿下の悪評のせいで取れなかったようです。
ですからわたくしが婚約者などをやっていたのですけれど。正直家柄をいうならぎりぎりです。
なのでわたくしと結婚したところで陛下の発言力は増しません。
再婚する気になったのならと忠臣ならば権力が強められる家の女性を薦めるでしょうし、野心があるなら自分の家の関係者を薦めるでしょう。殿下の母方のご実家は再婚そのものを止めるかもしれませんし。
殿下が立派に国を担える目算があるのなら余生……というには若すぎますけど、今後を心穏やかに過ごすため毒にならないのなら気に入った女性と再婚することも許されたかもしれませんけど。
現実は殿下は更に婚約破棄をしたという悪評を加え、わたくしは息子の婚約者な上に更にそれを破棄された女という害にしかならない存在です。
わたくしとて話だけ聞いていたなら間違いなく反対します。なまじ王妃教育を受けただけに感情だけで動く危険性が少しだけですけれど分かりますもの。
なので父様を止めることまでは出来ますけれど、その後の保証が出来ないためそうなさらないのでしょう。
わたくしとしては近くにいたいと思うだけなので、結婚には拘らないのですけれど、わざわざ今から父様との関係を悪くする必要はありませんし、不用意な行動は極力なさらない方がそこを突かれずにすみますから、それを望みまでは致しません。
「待つ? まさか殿下と復縁しろとでも言われたのか!?」
「あの、わたくし城から帰ってきたのですけど?」
訂正するより先にそちらを突っ込んでしまいます。その辺の人が言ったのならまだしも陛下に対してその言葉遣いは不敬です。
「そんな無茶な要求をするやつを敬う必要がどこにある!?」
「お前なら黙って従うと思われてるってことだぞ!?」
兄様まで一緒にならないでください。その気持ちは嬉しいですけど。
「陛下を悪く言わないでくださいませ」
……確かにそう要求されていても従うかもしれない危うさをわたくしは持っていますけど。というか、確実に従いましたわね。
「それにそうはおっしゃいませんでした」
「なら何故に?」
「その……」
照れくささのあまり口ごもったのを、もっと無茶な要求でもされたとでも思ったのかと兄様が怒りを募らせます。
「きゅ、求婚をされまして」
「誰に?」
「……陛下に」
「!? …………なるほど」
あの兄様? 驚くまではいいんですけれど、何故にそんなすぐに納得なさるのですか?
「陛下が何をどこまで考えてらっしゃるかは分からないが、お前は昔から陛下がお好きだったからなぁ」
「父様!?」
昔はとにかく、特に殿下と婚約してからはそれを表に出した覚えはありませんのに!?
「そうね」
そう横から声がします。
「母様!?」
いつの間に!?
「起きて来られて大丈夫なのですか?」
そしてどこから話を聞いておられたのですか?
「あなたが帰ってきたというのに寝てなんていられないわ」
「ご心配をおかけして申し訳ございません」
母様にふわりと抱きしめられる。
「あなたが苦しんでいないのならそれでいいの。けれど親なのだから心配はさせてちょうだい」
「そうだぞ」
「……決めたのなら好きなようにやりなさい」
「……ありがとうございます」
家族だからといって無条件に愛されるわけではないことは知っているつもりです。
特に貴族階級ではそれが顕著だとか。
この状況なら心配ではなく体面を気にして他所へ追いやられてもおかしくはないはず。
なのに受け入れてくださるのだからうれしいです。
……それでも陛下の手を取りたいと思うわたくしは酷い人間なのでしょう。
苦労がわたくしだけですむはずはありません。もしかしたら家族の方がより酷い可能性もあるでしょう。
なのに待つということをやめたくないんです。陛下を優先してしまうのです。
それを知っても許してくださるのだからわたくしは幸せですわね。
……だからといって昔からずっとだとばれていたのは、正直婚約破棄されたときより居たたまれないですけれど。
それでもそうなさらないところに好感を持ちますが、これは同時に陛下の権力の弱さを表しています。
わたくしが挙げた問題点のうち半分以上は発言力が強ければどうにでもなるものです。
陛下の子供とわたくしが同い年なのですから親子ほど年の離れたという表現は間違いではないですが、父様より陛下は十以上年下です。わたくしに兄がいることを差し引いてもそれだけ陛下が早く結婚して子を成したということが分かります。
元々先王陛下が急な病で亡くなり、母親もすでに亡く、母親の実家も没落していた中で急遽即位なさったそうです。
手っ取り早く後ろ盾を得る手段として国内の有力貴族の娘と政略で婚約、結婚をし、向こうは後ろ盾の見返りとして外戚としての権力を確固とするために早く子を求めたと。
緩やかに陛下の発言力は増していますが、本来ならば殿下に諸外国から婚約者をもらい外交を強化や、あるいは婚約者を権力の均衡を取れる家から選び相対的に発言力を強めるなどという手段が殿下の悪評のせいで取れなかったようです。
ですからわたくしが婚約者などをやっていたのですけれど。正直家柄をいうならぎりぎりです。
なのでわたくしと結婚したところで陛下の発言力は増しません。
再婚する気になったのならと忠臣ならば権力が強められる家の女性を薦めるでしょうし、野心があるなら自分の家の関係者を薦めるでしょう。殿下の母方のご実家は再婚そのものを止めるかもしれませんし。
殿下が立派に国を担える目算があるのなら余生……というには若すぎますけど、今後を心穏やかに過ごすため毒にならないのなら気に入った女性と再婚することも許されたかもしれませんけど。
現実は殿下は更に婚約破棄をしたという悪評を加え、わたくしは息子の婚約者な上に更にそれを破棄された女という害にしかならない存在です。
わたくしとて話だけ聞いていたなら間違いなく反対します。なまじ王妃教育を受けただけに感情だけで動く危険性が少しだけですけれど分かりますもの。
なので父様を止めることまでは出来ますけれど、その後の保証が出来ないためそうなさらないのでしょう。
わたくしとしては近くにいたいと思うだけなので、結婚には拘らないのですけれど、わざわざ今から父様との関係を悪くする必要はありませんし、不用意な行動は極力なさらない方がそこを突かれずにすみますから、それを望みまでは致しません。
「待つ? まさか殿下と復縁しろとでも言われたのか!?」
「あの、わたくし城から帰ってきたのですけど?」
訂正するより先にそちらを突っ込んでしまいます。その辺の人が言ったのならまだしも陛下に対してその言葉遣いは不敬です。
「そんな無茶な要求をするやつを敬う必要がどこにある!?」
「お前なら黙って従うと思われてるってことだぞ!?」
兄様まで一緒にならないでください。その気持ちは嬉しいですけど。
「陛下を悪く言わないでくださいませ」
……確かにそう要求されていても従うかもしれない危うさをわたくしは持っていますけど。というか、確実に従いましたわね。
「それにそうはおっしゃいませんでした」
「なら何故に?」
「その……」
照れくささのあまり口ごもったのを、もっと無茶な要求でもされたとでも思ったのかと兄様が怒りを募らせます。
「きゅ、求婚をされまして」
「誰に?」
「……陛下に」
「!? …………なるほど」
あの兄様? 驚くまではいいんですけれど、何故にそんなすぐに納得なさるのですか?
「陛下が何をどこまで考えてらっしゃるかは分からないが、お前は昔から陛下がお好きだったからなぁ」
「父様!?」
昔はとにかく、特に殿下と婚約してからはそれを表に出した覚えはありませんのに!?
「そうね」
そう横から声がします。
「母様!?」
いつの間に!?
「起きて来られて大丈夫なのですか?」
そしてどこから話を聞いておられたのですか?
「あなたが帰ってきたというのに寝てなんていられないわ」
「ご心配をおかけして申し訳ございません」
母様にふわりと抱きしめられる。
「あなたが苦しんでいないのならそれでいいの。けれど親なのだから心配はさせてちょうだい」
「そうだぞ」
「……決めたのなら好きなようにやりなさい」
「……ありがとうございます」
家族だからといって無条件に愛されるわけではないことは知っているつもりです。
特に貴族階級ではそれが顕著だとか。
この状況なら心配ではなく体面を気にして他所へ追いやられてもおかしくはないはず。
なのに受け入れてくださるのだからうれしいです。
……それでも陛下の手を取りたいと思うわたくしは酷い人間なのでしょう。
苦労がわたくしだけですむはずはありません。もしかしたら家族の方がより酷い可能性もあるでしょう。
なのに待つということをやめたくないんです。陛下を優先してしまうのです。
それを知っても許してくださるのだからわたくしは幸せですわね。
……だからといって昔からずっとだとばれていたのは、正直婚約破棄されたときより居たたまれないですけれど。
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