ライバル令嬢に選択肢取られてるんですけど？

本編

「殿下が頑張っているのは分かっております。ですが少し立ち止まって周りを見渡してみてはいかがでしょう？　きっと何かが見えてくるはずですわ」
　いやそれあたしが選択肢選んでから言う台詞じゃね？


　気がつくと生前にやっていた乙女ゲーの世界にプレイヤーキャラヒロインとして転生していた。
　何で生前で何で転生と分かるのかというと死ぬ瞬間の記憶がバッチリあるからだね。
　あれで助かってて夢オチでしたとか言われたらそっちの方が転生よりも嘘っぽい。
　なので転生したことを前提として話を進める。

　その似非中世風学園乙女ゲー、攻略対象との愛を育みパラメが条件を満たせば卒業式の前日に告白してくれて、その中から一人を卒業式のエスコート役に選べる逆ハーなしのゲームなのだが、攻略対象の中に通称チュートリアル王子、あるいはノーマルエンド殿下と呼ばれているキャラがいた。
　王子殿下とかって最難関を張れそうな立場にありながら、とある強制イベントでの選択肢を間違わなければ、それ以外の時はどれだけ邪険にしようとも卒業式前日には告白しこくってくるというちょろさからそう呼ばれている。
　オープンベータテストで見つかったバグだけど妙に受けたのでそのまま正式採用になったとかなんとか。
　そのせいかその選択肢を外した場合は最難関なのは間違いないらしいけど。
　性格設定として王子でありながら婚約者の優秀さにコンプレックスを抱えて生きていたが、ヒロインによって世界を広げられいつの間にかヒロインに惹かれていたという……うん、ベタだね。
　後本来のノーマルエンドもあるよ一応、お友達として複数と一緒に卒業式に向かう、通称「なぜそこで逆ハーにしてくれないエンド」が。

　で、その世界を広げるきっかけとなった押さえておかなければならないセリフを今その王子の婚約者であるライバル令嬢が王子に対して言っている訳なんだけど。
　実のところゲーム中にはその令嬢を見たことはない。完璧令嬢、人形令嬢等、多分美人で有能なんだろうけど冷たい人なんだろなと思う噂が聞こえてきただけだ。王子にまともに付き合えば会う機会も出てきたかもしれないけれど、最推しキャラは別にいたうえ王子に特に関わってなくて、そもそもまともに付き合わなくても告白はしてくるもんだから交流とかわざわざ深めなかったし。
　けどまさか選択肢次第とはいえライバル令嬢がヒロインと同じようなセリフを吐くとは予想外。そりゃよっぽどお上品な言い回しはしてますけどね。
　ヒロインが言わなきゃライバル令嬢が言うから攻略が難しくなるって事だったの？　けどそもそもイベント開始しなかったんだけど？
　しかしコンプレックスの原因がそのライバル令嬢なのに……いいのかよ王子、そんなちょろくて。

　……けどまぁ、別に最推しじゃないし。
　王子の行動如何によっては今後国が荒れたりする可能性もあるわけだし。
　転生したって事はそれに付き合わなければならない訳だから、そうなるぐらいならしっかりした人に手綱握っててもらった方が安心だし。
　これはこれであたしにもいいことよね、うん。
　強制イベントが起こらないことも確認出来たわけだし、ならシナリオ補正とかないだろうから必勝法もない代わりに攻略対象以外でも構わないんだろうし。

　ちなみに最推しは非攻略キャラでしたが何か？