その距離が分からない

こうやさい

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 彼女に連絡が付かなくなったのはその日のことだ。
 最初は出したメッセに既読が付かないな程度の違和感だったが、それこそバッテリーが切れたとか、置き忘れたとか、単に見る暇がなかったとかその程度の話で、例の作者よりも謎はなかった。
 ただ、翌朝にも未読のままだった。
 大学でも会わなかったが、これは約束をしなければ良くある事なので別にいい。
 けれど彼女の友達には会ったので聞いてみたら、今日は会ってないという。一緒にお昼を食べる約束をしてたのに、と。
 風邪でも引いて寝込んだが、スマホをなくして連絡出来なくなったのかと、講義が終わったら一緒に彼女のアパートに向かう約束をする。一人暮らしなのだからあり得ないことじゃない。
 そうして辿り着いた扉の前でインターフォンを鳴らす。……反応はない。
 スマホに発信してみると中から微かに着信音が聞こえてくるので少なくとも一度は帰っているのだろう。
 大家さんに開けてもらうよう頼むべき案件かどうか悩んだが、寝込んでいるにしてもインターフォンや着信があれば少しは動く気配がするだろうし、留守の可能性が高いだろうと見合わせる。

 けれど翌日も未読のままで大学には来ずに扉の向こうで着信音は鳴り響いた。

 彼女の友達は大家ではなく彼女の親の方に連絡したらしく、中に誰もいないことは確認されたそうだ。
 やたらでかい肩掛け鞄といくつかのものがなくなっていたが、ないと分かる程度には彼女が愛用している鞄だったので、それだけで自主的な失踪とは判断出来ない。
 ご両親は捜索願いを出したらしいが、大学生ともなれば恐らくそこまで熱心に探されることはないだろう。
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