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あの日の気の抜けた炭酸のようにぼーっとした日々を過ごす。
せめて恋人だったならもう少し探すのに関われたのに思わずにいられない。
それとも疑われただけだろうか。
あのときしていた会話を思い出す。
そういえばと件の作者のページを開いていた。
普通に新作がそこにあった。
けれどそれを望んでいた彼女はいない。
作品に感想覧でもあったらもしかしたら彼女が書いているかも探すところだが、この作者は基本感想を受けつけない。
けれどよくよくみるとその話に限って感想を書けるようになっていた。
覗いてみると、どこどこで見かけたとか、昔見たとか、あとネタとかネタとかネタとか、小説の感想というより頑張りすぎた痛グッズを落としたので探すために拡散されたものに対する反応のような事が書かれていて、新作の内容がどんなものなのか全然予想が付かない。あらすじも夢だったような話としか書いてないし。
しょうがないので本文を読みに行く。
それはよくある異世界転移もので、評価されない小説を書くのに疲れた主人公がいっそ異世界に転移してドキュメンタリーでもと逃避した途端リアルトリップし、最初はネタになると喜んだが、すぐに我に返り書くどころではない状況だということに慌てたが、しばらくして迎えに来たという読者を名乗る女の子と共に無事帰還、けれど還った時にはなんと二ヶ月も経っておりその子は周りにいなかった。それぞれ違う時間と場所に還ったのか、それとも彼女は還れなかったのか、誰かしらないかと読者に尋ねる話だった。正直今までのに比べて面白くないし、いろいろな意味で短い。
それで感想覧が大喜利状態になっているのかと納得する。思ってたより人気あったと判断していいんだろうかこの状態?
彼女なら俺の隣で寝ているよってネタ、まだあるんだ。
僕の会いたい彼女は未だ見つからないというのに。
作中の彼女は言う。あなたの作品を待っている人がいると。
主人公は返す。君しか待たないのなら還る必要はないと。パニックして還りたがってたくせにそこは意地張るんだ。
彼女は更に言葉を重ねる。あたしの好きな人も待っていると。
『楽しみだね』
『本当にね』
少なくともその好きな人は彼女が還って来なくなってまでも読みたいとは思ってないだろうな。
『異世界転移でもしてなきゃまた書いてくれることも有るかもしれないし』
無関係だと分かっているのにいちいち思い出されてたまらない。
この主人公は届くかどうか分からない話を彼女のために書き続けるのだろうか?
それとも彼女の好きな人のために?
少なくともやれることがあるだけうらやましい。
画面の向こうを眺めながらそう思った。
せめて恋人だったならもう少し探すのに関われたのに思わずにいられない。
それとも疑われただけだろうか。
あのときしていた会話を思い出す。
そういえばと件の作者のページを開いていた。
普通に新作がそこにあった。
けれどそれを望んでいた彼女はいない。
作品に感想覧でもあったらもしかしたら彼女が書いているかも探すところだが、この作者は基本感想を受けつけない。
けれどよくよくみるとその話に限って感想を書けるようになっていた。
覗いてみると、どこどこで見かけたとか、昔見たとか、あとネタとかネタとかネタとか、小説の感想というより頑張りすぎた痛グッズを落としたので探すために拡散されたものに対する反応のような事が書かれていて、新作の内容がどんなものなのか全然予想が付かない。あらすじも夢だったような話としか書いてないし。
しょうがないので本文を読みに行く。
それはよくある異世界転移もので、評価されない小説を書くのに疲れた主人公がいっそ異世界に転移してドキュメンタリーでもと逃避した途端リアルトリップし、最初はネタになると喜んだが、すぐに我に返り書くどころではない状況だということに慌てたが、しばらくして迎えに来たという読者を名乗る女の子と共に無事帰還、けれど還った時にはなんと二ヶ月も経っておりその子は周りにいなかった。それぞれ違う時間と場所に還ったのか、それとも彼女は還れなかったのか、誰かしらないかと読者に尋ねる話だった。正直今までのに比べて面白くないし、いろいろな意味で短い。
それで感想覧が大喜利状態になっているのかと納得する。思ってたより人気あったと判断していいんだろうかこの状態?
彼女なら俺の隣で寝ているよってネタ、まだあるんだ。
僕の会いたい彼女は未だ見つからないというのに。
作中の彼女は言う。あなたの作品を待っている人がいると。
主人公は返す。君しか待たないのなら還る必要はないと。パニックして還りたがってたくせにそこは意地張るんだ。
彼女は更に言葉を重ねる。あたしの好きな人も待っていると。
『楽しみだね』
『本当にね』
少なくともその好きな人は彼女が還って来なくなってまでも読みたいとは思ってないだろうな。
『異世界転移でもしてなきゃまた書いてくれることも有るかもしれないし』
無関係だと分かっているのにいちいち思い出されてたまらない。
この主人公は届くかどうか分からない話を彼女のために書き続けるのだろうか?
それとも彼女の好きな人のために?
少なくともやれることがあるだけうらやましい。
画面の向こうを眺めながらそう思った。
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