戦闘猫乃物語

猫乃つづり

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反撃編

作戦会議

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 「あー喉がいてぇな、なぁ星川」 
 「竜崎さんが喉飴ナメないからですよ」
 「あぁんなんか言ったか?」
 「いや、何でもないです」

 作戦会議が始まる直前、というのも何か厳粛な感じだと思う感じだと思いきや、存外、そんな感じの雑談がその他諸々、起こってるようで、

 「こほん、こほんやっと来たかミー」
 「まぁな大佐」
 「僕のことも忘れないでよ」

 そうだったそうだったと、大佐はキャシーにすまんなと言って、ミー達は大佐の座る席の空いてるところに座るというよりもどうやら、席はミー達のために決められてるようであることも大佐から聞くと

 「大佐、僕たちとはぐれて寂しかったでしょ」

 とからかいの言葉を入れてみるキャシー、相変わらずの生意気さにミーは少し苦笑いを浮かべる。
 まさか、こんなことを言われて、寂しかったとかという思いはないのだろうと確信していたからだ。
 理由は明白、大佐はその程度で甘ったれるオス猫ではないのだから、まして、戦闘猫のー

 「べっ別に寂しくなどないのじゃからな」

 きらりりんと、涙が一つでているのが見えたような気が幻覚だったか、その詳細は……触れないほうがよいのだろう。
 大佐もミーと同じように、若いものに負けてられないゆえの対抗心なのか、必死に時代を追うために必死だったのか、とにかくミーはこの件に対して何も言わないことにして、キャシーもスルーするのかと思いきや

「ちょっとさすがに僕でも引いたかな、うん、ごめん」

 グギッ

 若者の正直な言葉に結局、大佐のメンタルはノックアウトされるのだった。
 すると、突然、どこからともなく、秘書が現れるとほとんどのものが驚きの声を上げる

 「やっと来たね、ちょっと遅かったんじゃないかな」

 局長はしかめ面とは反対のにっこりスマイルで、秘書に対して穏やかに言うのであった。
 しかし、眼前にはどこにもいないように見えるのだが……

 「すいません、どうやら例のものの調整に時間がかかってしまいました。」
 「ああ、ちょっと疲れたからもう寝たい……」
 「まだ、ですよ!本田さん!ゴニョゴニョゴニョ」
 
 声が聞こえた時は既に皆の前にいた。
 、、、、、、
 いつの間にか

 ということに誰も疑問点を抱かないのは
 ここにいるものは全員、周知の通りなのだろうか。
 しかし、ここにいるものの中には驚きの声はあげずとも、
 ミーにとっては初めてのことであったため、一体、秘書はどんな能力《スキル》
 を持っているのか?一種の緊張をも含んでいた

 (白虎はもしかしたら、俺よりも)

 思いあたる節はあった。
 それは前回の東京スカイツリーでの
 偽装アメリカ軍(中国側の何らかの勢力によるものらしい) の核兵器を使った
 自爆して、アメリカと日本の間に亀裂を生じたところへの
 日本方面の侵略を考えていた思惑は防げたのだが、
 実のところあの作戦も、

 (世良がいなかったら……) 

 失敗していた、ミーの暮らす町も、東京も、そして、おばあちゃんも……
 守れなかったのだから……
 
 「どうしたのだ、ミー」

 声を静かにして大佐がミーの心配をしていることに気がつき

 「いや、何でも……」
 「本当に大丈夫か?ひどく汗をかいてるのだが」
 
 それでも気にかける大佐に、内心、自分は大丈夫とは言えなかった。
 恐れてるのか?
 自分は逃げたい
 そんな心の中の声が支配しようとしてきたとき

 ビクッ

 ミーの毛むくじゃらの額に猫じゃらしが

 「ほにゃ~」

 思わずそんな声を上げる

 ふと、皆の視線が集まる

 「あっ」

 しまった思わず猫じゃらしのあのもじゃもじゃに触れられると猫特有の発声をあげてしまう。
 
 「いっいやこれはあの……ですね」

 汗がダラダラ、皆の視線、一点にしかも、張り詰めた空気の中の視線は一つでさえも気まずいのに、それが集まると衛生から照射されるレーザーよりも強いのではと錯覚してしまう。

 「こほん」

 局長はにこやかに咳ばらいすると

 「少し真剣な話をしてるから__ 」

 そう言いかけた時だった。

 「キャア!可愛いわぁミーちゃん!」

 そんなとき、場違いにも程がある人物はすぐにも分かる。
 猫好きの奴をミーは知っている。
 こんな、人間だとおっさんであるというのに……

 「西園寺馨様、少し身の程をわきまえてください」
 「あっ……こほん!すいません、あのですねミーはん命令です」
 「なっ何でしょう!?」

 馨は局長に言われて、さっきの猫好きの時のキャッキャッした感じとはうってかわって、一人の財閥の令嬢としてのピシッとした感じで
 ミーは予想外のことに少し動揺を隠せなかった。
 本当なら、自分は既にこの会議室から追い出されていたのだろうと……
 しかし、もう自分はどうやら追い出されるのだろうと心に決めている、なぜなら

 (自分がこんなにも怖じけづいているのだから)

 会議室はそれ相応の覚悟のある者であると同時に実力があるものがここにいるべきなのだから
 ミーは一瞬だけ戸惑った感じだったが、この先の展開を甘んじて受け入れる覚悟さえある。
 ちなみに、猫じゃらしをしてきた奴を後でぶっとばそうという気概はおきそうにはなかった。

 「ミーはん」

 予定調和である令嬢による一言が

 「とにかく、私の膝のだから辺りに座ってそれで良しとしましょう」
 
 ハッ?

 その場にいる誰もが心の中でもしくは声でと、音色は違えど、馨以外の誰もが目が真ん丸になって、そのようなワードを思いつくのは当然であり、ミーも一匹で

 「いや、普通は出て行きなさいとか、そんな命令でしょうが!」

 と相手が令嬢であれど思わずツッコミをいれてしまう。
 そして、当の令嬢は頬を桜と比べるとほんのり紅く染めて

 「べっ別にいいんやないの、とにかく膝にほら早く!」

 +座らなければ、桜吹雪の舞を食らわすぞと言ってきたので、ミーは抵抗しても無駄だと思ったので、ため息をついてしぶしぶ了解して、馨の命令に従って、膝にこんまりと腰掛ける、結果となった。
 どこからか、男性陣から何か敵対的な視線さえもピクッと鼻先で感じるのは気のせいかどうかもわかりたくもない、ミーであった。

 (キャシーめ……)

前言撤回
後でこの会議が終わったら殴ろうかの選択をミーは考えようとするが、
多分これはキャシーなりの励まし(?)なのだろう
と明るく考えようとして気持ちを落ち着かせて、会議は気を取り直して進む。

 「こほん、それでは今の状況を説明する。説明は僕よりも竜崎君頼んだよ」
 「えっと……俺……」

あまりの突然のことに竜崎はびっくりする。
サングラスが心なしかふにゃっと柔らかくなった感じさえした。

 「うん、嘘それじゃ本当は頼むよ」
 「わかりました、それじゃ私から説明させていただきます」
 「おい、こんにゃろー!」 
 「ごめん、ごめん後でハンバーガー買ってきてあげるからさ」

 と言って、竜崎は絶対だぞといって、おさまるのだった。
 そして、説明は当然、秘書で、
 
 「それでは表示される資料をご覧ください」

 すると、目の前に天井の機会から照射された光を利用して、ホログラフを生み出し、会議に参加している者に資料である情報からホログラフが映し出されるといったものでどうやら、一つの席に一つのホログラフといった感じなので、ミーは馨に資料を見せてもらうことにした。
 資料に映っているものはどうやら、何か武器を装備した巨大兵器で、見るからに危険なものだということがわかる。

 「これは諜報機関『鴬《うぐいす》』のメンバーからの情報によると、特殊大陸用戦略兵器インベーダー99というものだそうです」

 なぜ、99なのかは、歴史がそれを物語っておることから、狙いは当然………

 「秘密裏に開発されてることから、狙いは恐らく日本を狙うために開発されているものだと思われます」

 やっぱりな、とミーは思った。
 一回失敗したからどうとかであきらめていたら、はなから狙うことなどないはずである。
 でも、なぜ、そのような兵器を作るのか?というのが疑問なのだが?

 「日本周辺の中の島を力づくでも奪って、日本征服を狙うひいては、アジア全土を支配する足がかりにするためであることが鶯のメンバーの見解だそうです」 
 「そして、僕たちがそれの破壊を命じられて、ひいては開発現場の制圧といわけだよ、だよね」
 「はい、局長の言う通りです」
 
 局長はニッコリと微笑みは崩さなかった。

 「おいおい、しかしなぁ制圧つったって、逆に中国との戦争に発展してしまうんじゃねぇのか?」

 竜崎が、眉をあげて疑問点を指摘するのだった。
 確かに、破壊と制圧を中国で行うことはできるのだろうか?
 よりにもよって、敵の本拠地を攻めるのだから、地の利は圧倒的に相手の方が有利で、ただでさえ自国の防衛で手一杯であることは前の作戦でわかってることをミーは知っている
 そのこたえとして局長は焦ることもなく、ともすると、にこやかに答える

 「そこらへんは安心してくれ、既に中国政府に許可は取っている」

 えっ!

 その場にいるものが驚きの声をあげたり、あげずともびっくりしてるものもいた。

 「おいおい、そんなにびっくりすることはないじゃないか、ね、そうでしょ?」
 「局長、今のは同意しかねます」

 と、秘書でさえも、皆がそのようになるのは普通だと思ったのだろうから、局長が平然としてられるのには新たな疑問を生じさせることにもなる

 「といっても、穏健派からの依頼のようなものなんだけどね」
 「しかしよぉ、穏健派でも信用できるもんなのかよ!ていうか穏健派だけで対処しようとはしねぇのかよ!」
 「竜崎さんちょっとキレてないで」
 「うっせー!俺はキレてねぇーぞ!コラァ」

 竜崎の物言いは激しくキレたような物言いで星川になだめられるぐらいのものであったが、彼の言い分には納得がいく
 
 「竜崎君、すごいね!的を得てるよ確かに、僕達が対処せずとも解決するのかもしれないけどね……」

 局長は竜崎の論点を褒めてはいるが言葉の続きが気になる一同

 「でもね、解決できるといっても、それは悪い方向で解決するってことなんだよ」
 「あぁ~手っ取り早く言うと、あれだろ局長、梅スライム何だ、うぅ気持ちが悪い~」
 「うっ梅スライムじゃないです!あれですよね、あれ超絶合体ガレンガロンの……じゃなくて!うーん」

 どうやら、梅の頭の中はガレンガロンで大半をしめてるのかもしれない。 
 突然、本田からの急なバトンパスに戸惑うのも無理はなかった。
 されど、会議は進んでゆくのであって、梅がわかりやすく言い換えようと頭を動かしてると

 「局長の言葉をわかりやすく言い換えれば、今は穏健派が政権を動かしてるから問題はないが穏健派の逆、つまり強硬派が実権を握ることになるということですね、局長」
 「その通りで、日本政府に要請がかかって、僕達が担当することになったのさ、はい、星川君なんだい?」
 「しかし、局長、穏健派でも僕達のような機関はあるのだから、そこを頼らないのはなぜなんですか?」

 星川が手を挙げて、疑問点を口にする

 「確かにそのような機関は登場するよ、しかし、現にその味方が100%味方だったら、そんなことは起こらないよ、でも、信用できないだったら……」
 
 あっといって、星川は気づく

 「わかったようだね、味方の中に敵が含んでたら、敵の敵を頼ればいいってことだよ」

 なぜ、日本に頼ったかは分かる、しかし、まだ疑問点は残る

 「しかし、それで我々にメリットはあるのでしょうか?」

 凛々しい顔で和服姿に白虎隊の制服を外套のように肩にかけた、大和剣士、二番隊隊長の柊上総《ひいらぎかずさ》が新たに生じた疑問点を口にする。
 無論、その作戦には何か有益《メリット》がなければ、防衛するのとなんら変わらないもしくは損する場合だってあるからだ。
 局長がにこやかに答える。

 「まぁその点は心配しなくても大丈夫だよ。だって、こちらが有利になるようなことを提示してくれたわけだからね」

 そして、局長は秘書に目配せすると

 「後は、今、君達のディスプレイ上に写ってるのが僕が提示するメリットだけど、どうかな?」

 この場にいる一同がそのディスプレイ上に表示されるものに目を向ける。
 
 「納得してくれたかな?」

 柊はしばらくそれを見て、

 「はい、局長がこの作戦を計画した理由、納得しました」
 
 と頷きながら答えるのであり、どうやら、一同、満場一致で決まるのを感じとると

 「それじゃ、後はこの作戦において成功するかいなかは………」
 
 ピィーピィー

 警告音が鳴り響く、耳につんざく嫌な音で、聞くものを不安にさせる。
 周囲に緊張がほとばしる。

 「子猫ちゃんちょっとどいてくださりまへんか?」
 「あぁわかった」

 ミーは馨の言うことに応じて、膝から足を跳躍させてそっと降りる。
 
 「どうかしたのかい?というか、先に仕掛けられたようだね」

 局長が馨に対して、馨が何故、立ち上がった理由がわかってる様子で緊急事態のアラームがなったとしても、落ち着いた様子で語りかける。
 馨は耳に装着してるイヤホン状の連絡機器から、その向こう側の誰かと連絡を取っている。
 そして、それを聞き終えると馨は緊張感をはらんだ声で
 
 「料理番衆に命令して捕らえようとしましたが、あと一歩のところで召喚されましたわ」 

 「召喚?」

 ミーは聞き慣れない言葉に思わず声を発する

 「魔術で何かしらを媒介にして打ち出すもののことで、まずいことになりましたわ局長はん力及ばずごめんな」
 「いや、別に大丈夫だよ今のところ、料理番衆がどうにかしてるのなら、この会議は終わって、また後日、確認会議《ブリーフィング》で行うとしよう。今はとりあえず、総員」 

 そして、局長は先ほどにこやかな表情とはうってかわって

 「総員、各自防衛に勤めろ、第一部隊と第二部隊は至急その場所に向かうように、残りの隊は転移能力があることを意識し、それまで、警戒を怠るな以上、キャシー君はもう既にどこにそれがいるかは特定できてるのかい?」

 キャシーはニヤリと笑って

 「まぁね、料理番衆がいるところの生体反応から導き出したわけだけど、場所は……」
 
 キャシーは言いずらそうにして、

 「会議室目の前!」

 その直後轟音をたなびかせて、壁が破砕する。
 その倒れた姿は先ほど、ミーにとって見覚えのあるものであった。
 
 「大将……」
 「ゲホゴホゲホ早くここから待避を馨様……」
 
 と言って額に血を垂らせながら、意識を失ったように倒れるにであった。

 「フハハハ、残念だったな貴様ら、俺ら突撃《エクスプローラ》によりにもよって、まんまと突破される形になるとはなぁ!」

 目の前にいる巨人のような人物にミーは勝てるのかと疑ってしまうのであった。


 
 

 
 
 

 
 

 
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