【本編完結】まさか、クズ恋人に捨てられた不憫主人公(後からヒーローに溺愛される)の小説に出てくる当て馬悪役王妃になってました。

花かつお

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番外編

とある医師の話

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 ノガンはエミュー領の領主夫夫の妻、ロードナ・エミューの主治医である。

 いつものようにロードナの定期的な診察を終えて他愛ない会話が始まった。

「そういえば、前から聞きたかったんだけど、ノガンの話し方って、独特だよね?生まれ故郷がそうなの?」

 目の前の赤い髪の青年がそう尋ねてきた。

「くっ……ついに聞かれたアルか……ロードナ様この口調は……口調は、とある人物の真似アルよ!!」

「えっ真似なの!?その口調、まさかの真似だったの!?」

「そうアル、この語尾は、『黒い英雄シリーズ』の主人公を助ける一人、ノーガーの真似アルよ!」


「ノガン、それって異色の児童文学と言われてる『黒い英雄シリーズ』!?確か、友人や信じていた家族達に酷い裏切りにあう少年主人公が復讐のついでに世界を救っちゃうお話だよね!?」


「ロードナ様も読んだ事アルのか!?良かった!!まだ未読だったら、全シリーズを贈るところだったアル☆」


◇◇◇


 そう、『黒い英雄シリーズ』はアカデミー在学中の頃、図書館に今月の新刊!超オススメと紹介されてたのを試しに読んだのがキッカケだったアル……ふう、懐かしいネ。そして同じように本好きの友人、数人と共にハラハラドキドキしながら主人公の華麗なる復讐劇と魅力的な登場人物たちにすっかり、どっぷりとハマっていったアル。


 そして、ある日、友人の一人が本の挿絵を見ながら、ワタシに向かって

『前から思ってたんだけど、ノガンって主人公の仲間の一人、暗黒商人ノーガに似てるよね?』


◇◇◇

「あー!!だから、ノガンと初めて会った時に既視感デジャヴを覚えたのは、糸目で丸メガネの中華っぽい服を着た暗黒商人さんに似ていたからだ!いやあ、白衣だったから気づかなかったよ~言われてみたら、まんま暗黒商人さんだね!」

「ふふふっ、まさかロードナ様も、そう言ってくれて嬉しいネ。この白衣の下の服を再現する為に、布地から取り寄せて作ったね!」

「うわっ……ガチファンすぎる……ノガン、けど君の旦那さんは、その格好の事は何も言わないの?」

「旦那さまは……最初ワタシの格好を見て鼻で笑ったアル……だから、『黒い英雄シリーズ』を貸して読ませたアル……あの救いある第5巻を……外してから……フフフ」

「なっなんて事を、あの巻を!?殺伐した主人公がようやく、小さな希望を持った話の巻を?!」


ロードナ様が、言う通り
通称『黒い英雄シリーズ』は

裕福な家に生まれた主人公、幼い頃に母とは死別、母がいない寂しい気持ちを抱えながらも、祖父母と父、継母の家族と仲良く暮らしていた。そして友人達と世界の『英雄』を目指すのだが……友人達がある日、街の教会にある、災いが封印されている神像を主人公が触って壊したと罪を擦り付け裏切り、また仲が良いと思っていた家族も、実は主人公の亡くなった母親を、祖父母らが虐げて、自死させた事を主人公に告げる。理由は父親と結ばれたかった街の権力者の娘だった継母のせいだった。それを知った主人公は激昂し家族達に向かって怒り叫ぶが、子供の主人公は邪魔だと捨てられる。
というのが第1巻『ぼくらは、まちの英雄になるぞ!!めざせ!ヒーロー』のあらすじより

内容もアレだけど、タイトル詐欺作品だとよく言われていたアルね。

「まさか、あのタイトルから、ほんと、復讐もの追放系だなんて、思わないよ……続く2巻も『ピカピカひかれ!金の英雄になったぼく!』のタイトルもひど過ぎるし、読んだら、主人公が借金奴隷になる話だし地獄だよ。主人公がドンドン闇落ちしていく様が、読者の間じゃ通称『黒い英雄シリーズ』ってなったんだよね確か、けどノガン5巻だけ貸さなくても、気になったら、書店で購入できるよね?そこが狙い目だったの」


「フフフ……ロードナ様、本を貸した時は……黒い英雄シリーズは、ちょうど全巻セット半額セールだったある、そのせいで、本は売り切れ中だったある。………だから4巻まで、読み終わった後に、続きの巻が無いと気づいた旦那さまは、必死に王都中の本屋を巡った後に、どこにも無くて、途方に暮れて、ワタシに懇願してきたよ……「頼むノガン『黒い英雄』の続きを読まして欲しいお願いだよ!」と足元にひざまずいた時は最高だったアル!!謝りながら、お詫びに結婚しようと言われたから、ワタシも許す、ついでに結婚したよ♪」
    

ん?ロードナ様、ワタシの顔を見ながら
真っ青になってる?もしや、貧血?

「ち、違うから!!そもそも何で、その展開で結婚するの!!オカシイからね!」

アカデミーの友人と同じ反応するなとノガンは

「ロードナ様、ワタシ、好きな物を分かち合えるタイプだから、あんなに求めくれるなら結婚ぐらいするアルよ?」

ニヤリと笑うノガンを見てロードナは諦めたように

「もう、ノガンが楽しそうで、良かったよ……」

「みんな、ワタシがそう言うと何故かすべて諦めた顔をするのよネ?」


コテンと首をかしげ、不思議そうに思ったが、今日は、大好きな作品の事をたくさん語り合えて楽しかったとニコニコするのだった。


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