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08 式後①

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 私用にサイズ直しされた結婚式用の豪華な白いドレスは、最高級の素材が使われていて、派手過ぎずどこか古典的クラシカルなデザインも洗練されて美しく、本来着るはずの居なくなってしまった女性に代わって、新婦として私はそのドレスを着用した。

 おそらく一生に一度しか着ない結婚式用のドレスが、王族が着ていてもおかしくない、こんな最高級なドレスで良かったと素直に思った。

 細身な体型の彼女に合わせた式用ドレスを、王室のお針子室が急ピッチでサイズを直してくれたんだけど、本当に元々私用に作られたかのように、まるで生地が吸い付くような着心地だった。

 流石は国内で一番のお針子たちが集う、王室のお針子室。

 モーベット侯爵……いいえ。今では、晴れて書類上の私の夫となったジョサイアは、式まで時間がなく私用に作り直しすることが出来ないことを、いよいよ結婚式が始まろうという、その瞬間までずっと気にしていた。

 まず、彼から渡された招待客リストを見て、私はこの結婚式を「結婚するはずだった人が逃げたので、今回は中止にします」と言えなかった理由を知ることが出来た。

 ジョサイアは、隣国の貴族学校に現王……つまり、その頃の王太子と共に通っていた時、同級生に異国の王子などの錚々たる顔ぶれがうち揃い、なんならその父親、つまり親交国の国王なども結婚式に出席するためにヴィアメル王国にまでやって来ていた。

 学生時代に仲良かった彼らは、今でもとても親しく、お互いの国へ遊びに行くこともあったらしく、家族ぐるみで付き合いがあったらしい。

 間に合わせで選ばれただけなのに「僕の愛する妻、レニエラです」と、直接彼らに紹介をされ、私の笑顔が引き攣ってしまったのは、ほんのご愛嬌だった。

 もちろん、主役の一人である新婦は交替しているので、大事な結婚前に娘が逃げてしまい、あまりの強い衝撃に魂が抜けて無気力になってしまったマロウ伯爵と、私の父ドラジェ伯爵と私が直接相談して、ある程度は招待客の入れ替えは行なった。

 けれど、私たちは同じ国の貴族同士だったので、親しい貴族として縁のある招待客も被っているようだった。

 とは言え、既に招待して予定を空けてくれる人を減らしてしまうことも難しく、マロウ伯爵家のごく近しい血縁だけが多少減って、ドラジェ伯爵家として親しくしている親戚などを招待し、そもそもの人数を大幅に増やすしかやりようがなかった。

 それほど、次期宰相候補として目されているモーベット侯爵ジョサイアが、結婚式に呼ぶほどに親しいと思われたい人が多いのだと思う。

 未来が確定している権力者には、早々から擦り寄っていたいものね。

 なんなら、婚約破棄をされてもう結婚するのは絶望的だと思われていた私が、とても良い相手と結婚をすることが出来て、うちの親族まわりは、ほぼ全員が「本当に良かった」と嬉し涙を流す人も居るくらいに幸せそうな満足顔で帰って行った。

 ほんっとうに、心配かけて、ごめんなさい。その上、一年後には、離婚してしまうんだけど。
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