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48 婚約者②
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「レニエラ様。なんだか、今日はご機嫌で表情が明るいですね。何か良いことがありましたか?」
酒として使うために、果汁の抽出作業をしているカルムは、近くでそれをぼうっと見ていた私に明るく声を掛けた。
「……ふっ……普通よ! 別に、何もないわ」
首をぶんぶんと横に振って、慌てて否定した私に、カルムは意味ありげに微笑んだ。
「お嬢様は、本当に嘘が下手ですからね。顔が自然とほころんで、わかりやすいですよ。今結婚している人と、上手くいったりしたんですか?」
あ……そうだ。このカルムには一年後に、離婚するって言ってあった。けど、今の状況では、きっと継続することになると思う。
「……実は、私が結婚した人は今まで思っていた人とは、全然違うみたいなの。カルム」
嫌味でもなくにこにこと微笑むカルムは、それはこの前とは話が違うではないかとは言わなかった。
「それは、良かったです! ……レニエラ様は、ご結婚された方を好きになったんですね?」
不意に思いもしなかったことを問われて、私は戸惑った。
「え……好き? 好きなのかしら?」
私は昨夜、ジョサイアからの告白を受け、それについては何も答えてはいない。
……好き? 確かに、私はジョサイアのことは、好きだとは思う。有能だし真面目で優しくて驕ったところもなく、美形侯爵と名高い通りに姿も良い。
彼と両想いになれるなんて、私はつい昨日まで思ってもいなかった。
けど……出来れば、顔合わせの日から、全部やり直したい。強がって、彼の言葉を先回りして、早とちりして……なんだか、今、とても恥ずかしい事態になってしまった。
「え? なんで、疑問形なんですか?」
一旦仕事の手を止めたカルムは、私が戸惑っていることが、不思議な様子だ。
「……ねえ、カルム。私、彼に愛して欲しいなんて望んでないって、言ってしまったんだけど……それを挽回するには、どうしたら良いと思う?」
「あ……そうなんですか……どうにも、複雑な事態になっていますね」
力仕事でにじむ汗を布で拭ったカルムは、言葉の通り複雑そうな表情をした後、にっこり笑って言った。
「あれは間違いだと気がついたので、これからは愛して欲しいって、その人に素直に伝えれば良いと思いますよ」
「……そうなの?」
そんなにも、簡単なことなの?
「そうです! 大体は、何も言わなくてこじれるんですから、自分のして欲しいと思うことは、素直に口に出した方が良いですよ」
カルムの言葉を聞いてそれもそうねと、私は何度か頷いた。素直に言えば良いんだわ。
私もジョサイアのことが、好きですって。
酒として使うために、果汁の抽出作業をしているカルムは、近くでそれをぼうっと見ていた私に明るく声を掛けた。
「……ふっ……普通よ! 別に、何もないわ」
首をぶんぶんと横に振って、慌てて否定した私に、カルムは意味ありげに微笑んだ。
「お嬢様は、本当に嘘が下手ですからね。顔が自然とほころんで、わかりやすいですよ。今結婚している人と、上手くいったりしたんですか?」
あ……そうだ。このカルムには一年後に、離婚するって言ってあった。けど、今の状況では、きっと継続することになると思う。
「……実は、私が結婚した人は今まで思っていた人とは、全然違うみたいなの。カルム」
嫌味でもなくにこにこと微笑むカルムは、それはこの前とは話が違うではないかとは言わなかった。
「それは、良かったです! ……レニエラ様は、ご結婚された方を好きになったんですね?」
不意に思いもしなかったことを問われて、私は戸惑った。
「え……好き? 好きなのかしら?」
私は昨夜、ジョサイアからの告白を受け、それについては何も答えてはいない。
……好き? 確かに、私はジョサイアのことは、好きだとは思う。有能だし真面目で優しくて驕ったところもなく、美形侯爵と名高い通りに姿も良い。
彼と両想いになれるなんて、私はつい昨日まで思ってもいなかった。
けど……出来れば、顔合わせの日から、全部やり直したい。強がって、彼の言葉を先回りして、早とちりして……なんだか、今、とても恥ずかしい事態になってしまった。
「え? なんで、疑問形なんですか?」
一旦仕事の手を止めたカルムは、私が戸惑っていることが、不思議な様子だ。
「……ねえ、カルム。私、彼に愛して欲しいなんて望んでないって、言ってしまったんだけど……それを挽回するには、どうしたら良いと思う?」
「あ……そうなんですか……どうにも、複雑な事態になっていますね」
力仕事でにじむ汗を布で拭ったカルムは、言葉の通り複雑そうな表情をした後、にっこり笑って言った。
「あれは間違いだと気がついたので、これからは愛して欲しいって、その人に素直に伝えれば良いと思いますよ」
「……そうなの?」
そんなにも、簡単なことなの?
「そうです! 大体は、何も言わなくてこじれるんですから、自分のして欲しいと思うことは、素直に口に出した方が良いですよ」
カルムの言葉を聞いてそれもそうねと、私は何度か頷いた。素直に言えば良いんだわ。
私もジョサイアのことが、好きですって。
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