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25 不思議
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「おい。少し優しくしてやれば、生意気なのも良い加減にしろよ。ジュリアスはジュリアスでも、俺が逆らえないあの男は、ここには居ないんだからな!」
両手首はしっかりと握られているから、足をばたつかせてもびくともしない。男女の体格差をここで思い知らされてしまった。
「もうっ……いい加減にしてよ!!」
叫んだ瞬間に急に手を離されたので、私は思わず尻餅をついてしまった。いきなり変わった目線の先には、逆にジュリアスに詰め寄られているエセルバードの姿。
首元を掴まれて木に押し付けられて、足は浮いている。
二人とも高い背丈は変わらないけど……ジュリアスが、腕を伸ばしてエセルバードを軽々と持ち上げているんだ。
「っ……離せ! 俺を誰だと思っている!」
「女性への暴力行為は……いい加減にされた方がよろしいんじゃないですか。父上もさすがに庇いきれなくなりますよ」
「お前。なんだと……うるさい! うるさい! もし、それ以上、何か言ってみろ。お前を破滅させてやるからな!」
静かに淡々とした態度のジュリアスに対し、真っ赤な顔のエセルバードは激高しているようだ。
「……ジュリアス。私は大丈夫だから。もう良いです」
けほけほと咳き込みながら私が言うと、どさりと重い音をさせジュリアスはエセルバードを離した。
「聖女様。大丈夫ですか?」
「ごめんなさい……私は大丈夫。もう行きましょう」
手を差し伸べてくれたジュリアスに掴まり、私は面白くない表情で座り込んでいるエセルバードを冷たく見てから背を向け歩き出した。
「……おい! 俺は知っているんだ。お前、宿屋で祝福を使っただろう? 俺付きの魔術師が言っていたんだ。祝福は魔法とは原理が違うためにかなり近くでないとわからないが、あれは祝福の波動だったと……お前ら、何を隠しているんだ?」
しまった……私が宿屋のエセルバードが居る近くの部屋で『祝福』を使ったから? 魔術師にわかってしまうなんて、聞いてないよ!
私があわあわと焦っている前に、ジュリアスは至って冷静な様子でそれに答えた。
「エセルバード殿下。聖女様は、まだ自身の祝福を知りません。何かと誤解されたのではないですか?」
「おい……馬鹿にするなよ。あいつがそれを俺に嘘をついて、何の得があるんだ……? いいや。お前、ジュリアス……父親に似過ぎているな。さっきの話し方もまるで、一緒ではないか」
私たちの中に、緊張感が走った。剣術指導でジュリアスはエセルバードが幼い頃から一緒に居たと言っていた。
長年一緒に居る人特有でわかることだって……あるのかもしれない。
「親子だから、ある程度は似るでしょう」
ジュリアスは全く動揺を見せずに、素っ気ない。
「……おいっ……! 馬鹿にするな。よく考えて見るとある程度どころか、うり二つではないか。もしかして、お前はジュリアス本人か? ああ……おかしいと思って居たよ! いきなり帰城? 代理に息子? ……今回の聖女の祝福の能力は、過去に戻す力か?」
エセルバード……なんでそういう推理だって出来るのに、人間的にとても残念なの?
ほんっとうに、不思議だよ!
両手首はしっかりと握られているから、足をばたつかせてもびくともしない。男女の体格差をここで思い知らされてしまった。
「もうっ……いい加減にしてよ!!」
叫んだ瞬間に急に手を離されたので、私は思わず尻餅をついてしまった。いきなり変わった目線の先には、逆にジュリアスに詰め寄られているエセルバードの姿。
首元を掴まれて木に押し付けられて、足は浮いている。
二人とも高い背丈は変わらないけど……ジュリアスが、腕を伸ばしてエセルバードを軽々と持ち上げているんだ。
「っ……離せ! 俺を誰だと思っている!」
「女性への暴力行為は……いい加減にされた方がよろしいんじゃないですか。父上もさすがに庇いきれなくなりますよ」
「お前。なんだと……うるさい! うるさい! もし、それ以上、何か言ってみろ。お前を破滅させてやるからな!」
静かに淡々とした態度のジュリアスに対し、真っ赤な顔のエセルバードは激高しているようだ。
「……ジュリアス。私は大丈夫だから。もう良いです」
けほけほと咳き込みながら私が言うと、どさりと重い音をさせジュリアスはエセルバードを離した。
「聖女様。大丈夫ですか?」
「ごめんなさい……私は大丈夫。もう行きましょう」
手を差し伸べてくれたジュリアスに掴まり、私は面白くない表情で座り込んでいるエセルバードを冷たく見てから背を向け歩き出した。
「……おい! 俺は知っているんだ。お前、宿屋で祝福を使っただろう? 俺付きの魔術師が言っていたんだ。祝福は魔法とは原理が違うためにかなり近くでないとわからないが、あれは祝福の波動だったと……お前ら、何を隠しているんだ?」
しまった……私が宿屋のエセルバードが居る近くの部屋で『祝福』を使ったから? 魔術師にわかってしまうなんて、聞いてないよ!
私があわあわと焦っている前に、ジュリアスは至って冷静な様子でそれに答えた。
「エセルバード殿下。聖女様は、まだ自身の祝福を知りません。何かと誤解されたのではないですか?」
「おい……馬鹿にするなよ。あいつがそれを俺に嘘をついて、何の得があるんだ……? いいや。お前、ジュリアス……父親に似過ぎているな。さっきの話し方もまるで、一緒ではないか」
私たちの中に、緊張感が走った。剣術指導でジュリアスはエセルバードが幼い頃から一緒に居たと言っていた。
長年一緒に居る人特有でわかることだって……あるのかもしれない。
「親子だから、ある程度は似るでしょう」
ジュリアスは全く動揺を見せずに、素っ気ない。
「……おいっ……! 馬鹿にするな。よく考えて見るとある程度どころか、うり二つではないか。もしかして、お前はジュリアス本人か? ああ……おかしいと思って居たよ! いきなり帰城? 代理に息子? ……今回の聖女の祝福の能力は、過去に戻す力か?」
エセルバード……なんでそういう推理だって出来るのに、人間的にとても残念なの?
ほんっとうに、不思議だよ!
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