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06 ハッピーエンド済!
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特定の対象の記憶を失わせたい場合、飲む前に対象者の話をするらしい……けど、忘却の魔法薬のみを飲んでしまうと、何もかも忘れてしまうと……。
「そうだ。君は三日前にマリアンナと一緒に、魔法薬の店に行き、肌が綺麗になる薬と安眠薬を買ったはずだ……そして、マリアンナは、取り扱い要注意の高価な忘却の魔法薬を買ったと聞いている。もしかしたら、そこで薬を取り違えたのかもしれない……エレオノーラが記憶が無いと気がついた時は、いつのことだった?」
それを聞いた時に、軽く頬が引き攣る感覚がした。婚約者だからって、私の行動について詳しすぎではないですか。殿下。
……ええ……それって、店への同行者はマリアンナだけっぽいし、レイモンは行ってないはずなのに、なんで知ってるの? ……き、きっと私が彼に直接言ったのかもしれないし、そういうことにして置こう。
うん。知らなくて良いことって、世界に沢山あるはず。
「……今朝、気がついたら鏡の前に居ました」
レイモンはそれを聞いて、何度か納得するように頷いた。
「肌が綺麗になる薬と安眠薬なら、昨晩飲んでいるはずだから、薬がすり替わっていて、翌朝に気がつくのなら、おかしくはないだろう。確か、さっき君はマリアンナが僕を探していたと言っていたね?」
「あ……それは、私が思い込んでいただけです。私に話しかけてくれたんですけど、怯えた様子で……そそくさと去ってしまって」
「いつもと違うエレオノーラの様子を見て、彼女の買った魔法薬との置き換わりに気がついたのかもしれない。だから、何も言わずに去ったのではないか?」
……あー……そうなのかもしれない。だから、あの時、マリアンナは……。
「私。事の次第を、ようやく理解しました……レイモン」
そっか……普通だったら完全に記憶喪失になったら、周囲の人たちも何か変って思うはず。けど、私には前世の記憶があった。だから、中途半端に誤魔化すことが出来てしまった。
今の私に前世の記憶しかないのは、この世界での記憶ではないから? だから、記憶喪失になって、転生したてみたいな状態になってた?
なんなの! 私、悪役令嬢もので、ちゃんと幸せになってたよー! 既にハッピーエンド済み! なんなのー! もう、本当に意味のわからないことになってる!
「僕もだよ。エレオノーラ……魔法薬なら、解呪すれば、すぐに記憶を取り戻す」
私は真面目な顔をしたレイモンに、ぐいっと手を引かれたので、慌てて彼に声を掛けた。
「……待ってください。レイモン」
「なんだ?」
このまま解呪出来る魔法使いの元へ私を連れて行こうとしてたらしいレイモンは、不思議そうに振り向いた。
「すぐに解呪するのは、なんだかもったいない気がして……今、記憶を失っている、この状態を楽しんでも良いですか?」
だって、記憶取り戻せばこの記憶だってどうなるかわからないし、恋仲の王子様と記憶喪失した令嬢って、なんだかすごく良いシチュエーション。
ただの偶然の産物で、もう二度とこんなこともないと思うし。
レイモンは嬉しそうに笑って、その笑顔にもなんだか既視感。きっと、私は彼のこの笑顔がすごく好きだったのね。見ただけで、嬉しくなったもの。
「君のそういうところが好きだ。エレオノーラ。良いよ。わかった。これから、どうしたい?」
「卒業式に行きましょう。私たちの人生の中で、貴族学校の卒業式は、今日だけなの! 今夜だけの空気を楽しみたいです!」
そして、私たち二人は仲良く手を繋いで卒業式会場へと向かい、ダンスを楽しみ、婚約破棄なんてするはずもなかった。
Fin
「そうだ。君は三日前にマリアンナと一緒に、魔法薬の店に行き、肌が綺麗になる薬と安眠薬を買ったはずだ……そして、マリアンナは、取り扱い要注意の高価な忘却の魔法薬を買ったと聞いている。もしかしたら、そこで薬を取り違えたのかもしれない……エレオノーラが記憶が無いと気がついた時は、いつのことだった?」
それを聞いた時に、軽く頬が引き攣る感覚がした。婚約者だからって、私の行動について詳しすぎではないですか。殿下。
……ええ……それって、店への同行者はマリアンナだけっぽいし、レイモンは行ってないはずなのに、なんで知ってるの? ……き、きっと私が彼に直接言ったのかもしれないし、そういうことにして置こう。
うん。知らなくて良いことって、世界に沢山あるはず。
「……今朝、気がついたら鏡の前に居ました」
レイモンはそれを聞いて、何度か納得するように頷いた。
「肌が綺麗になる薬と安眠薬なら、昨晩飲んでいるはずだから、薬がすり替わっていて、翌朝に気がつくのなら、おかしくはないだろう。確か、さっき君はマリアンナが僕を探していたと言っていたね?」
「あ……それは、私が思い込んでいただけです。私に話しかけてくれたんですけど、怯えた様子で……そそくさと去ってしまって」
「いつもと違うエレオノーラの様子を見て、彼女の買った魔法薬との置き換わりに気がついたのかもしれない。だから、何も言わずに去ったのではないか?」
……あー……そうなのかもしれない。だから、あの時、マリアンナは……。
「私。事の次第を、ようやく理解しました……レイモン」
そっか……普通だったら完全に記憶喪失になったら、周囲の人たちも何か変って思うはず。けど、私には前世の記憶があった。だから、中途半端に誤魔化すことが出来てしまった。
今の私に前世の記憶しかないのは、この世界での記憶ではないから? だから、記憶喪失になって、転生したてみたいな状態になってた?
なんなの! 私、悪役令嬢もので、ちゃんと幸せになってたよー! 既にハッピーエンド済み! なんなのー! もう、本当に意味のわからないことになってる!
「僕もだよ。エレオノーラ……魔法薬なら、解呪すれば、すぐに記憶を取り戻す」
私は真面目な顔をしたレイモンに、ぐいっと手を引かれたので、慌てて彼に声を掛けた。
「……待ってください。レイモン」
「なんだ?」
このまま解呪出来る魔法使いの元へ私を連れて行こうとしてたらしいレイモンは、不思議そうに振り向いた。
「すぐに解呪するのは、なんだかもったいない気がして……今、記憶を失っている、この状態を楽しんでも良いですか?」
だって、記憶取り戻せばこの記憶だってどうなるかわからないし、恋仲の王子様と記憶喪失した令嬢って、なんだかすごく良いシチュエーション。
ただの偶然の産物で、もう二度とこんなこともないと思うし。
レイモンは嬉しそうに笑って、その笑顔にもなんだか既視感。きっと、私は彼のこの笑顔がすごく好きだったのね。見ただけで、嬉しくなったもの。
「君のそういうところが好きだ。エレオノーラ。良いよ。わかった。これから、どうしたい?」
「卒業式に行きましょう。私たちの人生の中で、貴族学校の卒業式は、今日だけなの! 今夜だけの空気を楽しみたいです!」
そして、私たち二人は仲良く手を繋いで卒業式会場へと向かい、ダンスを楽しみ、婚約破棄なんてするはずもなかった。
Fin
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