32 / 73
33 運命の番②
しおりを挟む
「……ねえ。獣人って『運命の番』が居るって本当なの?」
獣人には運命的な唯一無二の存在が居るという。
一度(ひとたび)出会ってしまったならば『運命の番』のことしか見られなくなってしまうというのだ。
とてもロマンチックで、素敵な関係だと思う。
「はい。本当です。獣人同士であれば、お互いが運命の番であるとわかるそうですが、相手が人であると獣人側にしかわからないので……結構な厄介ことになっている状況もあるようですね」
淡々とそう言ったデュークが踊り慣れていない事は明白だ。
何故かと言うと、社交界で王族の姫である私に逆らおうと思う令嬢がもし居るならば、彼女にはあまり良い未来は待ってはいないだろう。
「あの……私がデュークの運命の番っていう、可能性は?」
「ないっす」
デュークに上目遣いで聞いた私の期待に満ちた言葉は、間髪を入れずにあっさりと否定された。
「まあっ……もしかしたらそうだけど、まだわかっていないだけかもしれないじゃない」
彼にきっぱりと否定され、私は面白くなかった。
「『運命の番』は一目見たらそうだと認識するそうです……けど、俺は……居たとしても、出来れば会いたくないっす。運命の番のような正気を失ってしまうような存在のせいで、我を忘れれば……何をしてしまうか。自分でも、それはわからないんで」
『運命の番』というとてもロマンチックな存在は、怠惰な彼からすれば普段の自分にある余裕を奪い去ってしまう嫌なものでしかないのかもしれない。
「私はデュークになら、何されても構わないわ」
頭の上で彼の手を取ってくるりとターンをした私に、デュークはとてもわかりやすく顔を顰めた。
「そういうの……たとえ思っていたとしても、口には出して言わない方が良いっすよ」
「あら。だって、私は本当にそう思っているもの」
デュークには未だに冗談だと思われているしれないけど、私だって成人していて彼と結婚したいとまで考えている。
「……そうだとしてもです。姫が思っているより、世界はとても危険なもので溢れているので」
「もし……『運命の番』なら。私をこのお城から、連れ去ってくれた?」
私は軽い冗談のつもりだったんだけど、デュークはなぜか浮かない表情をしている。
「俺はこれまでに運命の番に会ったことがないので、他から聞いた話で想像するしかないすけど……運命の番に会った獣人は結ばれれば、それはそれは幸せそうですが結ばれない場合の苦しみは、想像を絶します」
「まあ」
それも普通の恋人であっても時や状況が合わなければ別れることがあるのだから『運命の番』だって、そうなのかもしれない。
「も、し身分差で結ばれないくらいなら、俺は一人でここを去って生きます。姫は俺が居なくなっても、すぐに代わりが出来るでしょうが……獣人にとっての『運命の番』はそれほどにまで拘束力があるものなので」
彼がたとえたのは『私がデュークの運命の番だった場合』の話だ。
それはちゃんと理解しているはずなのに、なぜかデュークは苦しそうだった。
してはいけない期待だと、わかっていた。けれど、胸がときめいた。
「……私も、一生デュークだけを想うと誓ったら?」
「だから、そういうのは重いですって……姫は、才色兼備で身分もある。俺には本当に……勿体無いっすよ」
デュークは物のわかった大人だし、私は彼にわがままを言っているだけ……いつまでもそんな関係でなんて居たいはずがない。
獣人には運命的な唯一無二の存在が居るという。
一度(ひとたび)出会ってしまったならば『運命の番』のことしか見られなくなってしまうというのだ。
とてもロマンチックで、素敵な関係だと思う。
「はい。本当です。獣人同士であれば、お互いが運命の番であるとわかるそうですが、相手が人であると獣人側にしかわからないので……結構な厄介ことになっている状況もあるようですね」
淡々とそう言ったデュークが踊り慣れていない事は明白だ。
何故かと言うと、社交界で王族の姫である私に逆らおうと思う令嬢がもし居るならば、彼女にはあまり良い未来は待ってはいないだろう。
「あの……私がデュークの運命の番っていう、可能性は?」
「ないっす」
デュークに上目遣いで聞いた私の期待に満ちた言葉は、間髪を入れずにあっさりと否定された。
「まあっ……もしかしたらそうだけど、まだわかっていないだけかもしれないじゃない」
彼にきっぱりと否定され、私は面白くなかった。
「『運命の番』は一目見たらそうだと認識するそうです……けど、俺は……居たとしても、出来れば会いたくないっす。運命の番のような正気を失ってしまうような存在のせいで、我を忘れれば……何をしてしまうか。自分でも、それはわからないんで」
『運命の番』というとてもロマンチックな存在は、怠惰な彼からすれば普段の自分にある余裕を奪い去ってしまう嫌なものでしかないのかもしれない。
「私はデュークになら、何されても構わないわ」
頭の上で彼の手を取ってくるりとターンをした私に、デュークはとてもわかりやすく顔を顰めた。
「そういうの……たとえ思っていたとしても、口には出して言わない方が良いっすよ」
「あら。だって、私は本当にそう思っているもの」
デュークには未だに冗談だと思われているしれないけど、私だって成人していて彼と結婚したいとまで考えている。
「……そうだとしてもです。姫が思っているより、世界はとても危険なもので溢れているので」
「もし……『運命の番』なら。私をこのお城から、連れ去ってくれた?」
私は軽い冗談のつもりだったんだけど、デュークはなぜか浮かない表情をしている。
「俺はこれまでに運命の番に会ったことがないので、他から聞いた話で想像するしかないすけど……運命の番に会った獣人は結ばれれば、それはそれは幸せそうですが結ばれない場合の苦しみは、想像を絶します」
「まあ」
それも普通の恋人であっても時や状況が合わなければ別れることがあるのだから『運命の番』だって、そうなのかもしれない。
「も、し身分差で結ばれないくらいなら、俺は一人でここを去って生きます。姫は俺が居なくなっても、すぐに代わりが出来るでしょうが……獣人にとっての『運命の番』はそれほどにまで拘束力があるものなので」
彼がたとえたのは『私がデュークの運命の番だった場合』の話だ。
それはちゃんと理解しているはずなのに、なぜかデュークは苦しそうだった。
してはいけない期待だと、わかっていた。けれど、胸がときめいた。
「……私も、一生デュークだけを想うと誓ったら?」
「だから、そういうのは重いですって……姫は、才色兼備で身分もある。俺には本当に……勿体無いっすよ」
デュークは物のわかった大人だし、私は彼にわがままを言っているだけ……いつまでもそんな関係でなんて居たいはずがない。
168
あなたにおすすめの小説
【完結】タジタジ騎士公爵様は妖精を溺愛する
雨香
恋愛
【完結済】美醜の感覚のズレた異世界に落ちたリリがスパダリイケメン達に溺愛されていく。
ヒーロー大好きな主人公と、どう受け止めていいかわからないヒーローのもだもだ話です。
「シェイド様、大好き!!」
「〜〜〜〜っっっ!!???」
逆ハーレム風の過保護な溺愛を楽しんで頂ければ。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜
雨香
恋愛
美しく優しい狼獣人の彼に自分とは違うもう一人の番が現れる。
彼と同じ獣人である彼女は、自ら身を引くと言う。
自ら身を引くと言ってくれた2番目の番に心を砕く狼の彼。
「辛い選択をさせてしまった彼女の最後の願いを叶えてやりたい。彼女は、私との思い出が欲しいそうだ」
異世界に召喚されて狼獣人の番になった主人公の溺愛逆ハーレム風話です。
異世界激甘溺愛ばなしをお楽しみいただければ。
贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる
マチバリ
恋愛
貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。
数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。
書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
【完結】たれ耳うさぎの伯爵令嬢は、王宮魔術師様のお気に入り
楠結衣
恋愛
華やかな卒業パーティーのホール、一人ため息を飲み込むソフィア。
たれ耳うさぎ獣人であり、伯爵家令嬢のソフィアは、学園の噂に悩まされていた。
婚約者のアレックスは、聖女と呼ばれる美少女と婚約をするという。そんな中、見せつけるように、揃いの色のドレスを身につけた聖女がアレックスにエスコートされてやってくる。
しかし、ソフィアがアレックスに対して不満を言うことはなかった。
なぜなら、アレックスが聖女と結婚を誓う魔術を使っているのを偶然見てしまったから。
せめて、婚約破棄される瞬間は、アレックスのお気に入りだったたれ耳が、可愛く見えるように願うソフィア。
「ソフィーの耳は、ふわふわで気持ちいいね」
「ソフィーはどれだけ僕を夢中にさせたいのかな……」
かつて掛けられた甘い言葉の数々が、ソフィアの胸を締め付ける。
執着していたアレックスの真意とは?ソフィアの初恋の行方は?!
見た目に自信のない伯爵令嬢と、伯爵令嬢のたれ耳をこよなく愛する見た目は余裕のある大人、中身はちょっぴり変態な先生兼、王宮魔術師の溺愛ハッピーエンドストーリーです。
*全16話+番外編の予定です
*あまあです(ざまあはありません)
*2023.2.9ホットランキング4位 ありがとうございます♪
番探しにやって来た王子様に見初められました。逃げたらだめですか?
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はスミレ・デラウェア。伯爵令嬢だけど秘密がある。長閑なぶどう畑が広がる我がデラウェア領地で自警団に入っているのだ。騎士団に入れないのでコッソリと盗賊から領地を守ってます。
そんな領地に王都から番探しに王子がやって来るらしい。人が集まって来ると盗賊も来るから勘弁して欲しい。
お転婆令嬢が番から逃げ回るお話しです。
愛の花シリーズ第3弾です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる