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57 修行①
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私たちは陰ながら守ってくれる大勢の護衛のおかげで順調に旅を進め、目的地であるダムギュア王国へと辿り着いた。
ここダムギュア王国では、ユンカナンの国内のように良く見掛ける獣人の姿を見ることはなかった。
もしかしたら、どこかに住んでいたとしても、これでは日の当たる場所には出て来られないのかもしれない。
「……なんだか、嫌な感じね」
「それは、仕方ない。俺も上司からの命令でなければ、この国には来ていない」
人の多いダムギュア王国の王都。大通りを歩く人々から白い目で見られようが、デュークの態度は泰然として飄々としたものだ。
デュークが獣人であることは、ひと目見れば誰だってわかる。
彼の頭には獣耳が付いているし、背中に続く腰の位置でふさふさの黒い細長い尻尾も生えている。
フードを被ったとしてもすぐにバレるし無駄な抵抗だと言って、デュークは耳を隠そうともしなかった。
ただ、デュークは、この場所に居るだけだと言うのに……この良くわからない冷たい態度は、何なの。彼に家族でも殺されたと言うの。
私は思わず、周囲の人たちの向ける視線に眉を寄せた。
こちらをジロジロと不躾に見て、不快感のある視線を送って来る輩に一言言おうかと息を吸い込んだら、さっと伸びて来たデュークの大きな手に口元を押さえられた。
「ふはっ……あにしゅるの」
口を押さえられたままで、デュークを不満げに見上げれば彼は肩を竦めた。
「ごめん。これを先に言えば良かった。俺は別に気にしていない。なんとも思わない。こんなのどうでも良いし時間の無駄だから、早く行こう」
デュークは遠くに見えるダムギュア王城を指差して、さあ目的地行こうと言わんばかりに面白くない顔をした私の背中を押した。
彼は要請された仕事でダムギュアへと来ている訳だから、それを終えなければユンカナンに帰れない。さっさと済ませて帰りたい。
デュークの言わんとしていることは、私だって理解出来る。
彼の言いたいことはわかってはいるけど、私は自分の大好きな人があんな理不尽な目に遭っているのに、黙っていられるほどお利口でもない。
「……本当に?」
隣を歩きながら彼の本意なのかと疑わしい眼差しを向けた私に、デュークは苦笑した。
「本当。例えばの話。アリエルも、その辺の石ころが話すことが出来たとするじゃん? 石ころが自分に悪口を言っていても、特に気にならないだろ? あー、なんか言ってるな。くらい。それと一緒。俺は自分に不利益なことをした段階で、そいつはもう雑に扱って良い存在にしている。ああいった連中に、思い直してくれなんて何を言っても時間の無駄。無駄な時間は使いたくない。これが俺の気持ち」
デュークの淡々とした言葉を聞いて、私は一瞬息を止めた。
だって、悲しい結論に辿り着くまでに、彼がどれほど多くの言われたくないことを言われて来たんだろうと思ったからだ。
大きな苦悩を抱えて、それをそう思うことで乗り越えたかを思えば……どうしても辛い。
だって、私はデュークのことが好きだから。彼にもちょっと怖いと言われてしまうくらいに。
「デューク」
「……まあ。だから、アリエルがヘンドリック大臣から俺を守ってくれているってのは、もうわかったけど……あの人がああいう人だから、俺は正直に言うとあんまり、気にしてなかった。あの人は俺のことを庶民上がりで礼儀のないどうしようもない存在であると、何かを話す前から決めつけてかかっていた。そして、俺は彼のそんな考えを覆そうとも思わなかった。そう思いたければ、思えば良い。別に俺は困らないと」
「デューク……けど、そんなの悲しいわ。私はデュークが……そんな辛い思いをしていると辛いもの」
デュークが話している事は、効率の良い割り切った考えであると思う。
冷遇をされていも、彼が別段困ってもいないのなら、私が彼を守ろうとしてしたことは無駄だったのかもしれない。
けど。
ここダムギュア王国では、ユンカナンの国内のように良く見掛ける獣人の姿を見ることはなかった。
もしかしたら、どこかに住んでいたとしても、これでは日の当たる場所には出て来られないのかもしれない。
「……なんだか、嫌な感じね」
「それは、仕方ない。俺も上司からの命令でなければ、この国には来ていない」
人の多いダムギュア王国の王都。大通りを歩く人々から白い目で見られようが、デュークの態度は泰然として飄々としたものだ。
デュークが獣人であることは、ひと目見れば誰だってわかる。
彼の頭には獣耳が付いているし、背中に続く腰の位置でふさふさの黒い細長い尻尾も生えている。
フードを被ったとしてもすぐにバレるし無駄な抵抗だと言って、デュークは耳を隠そうともしなかった。
ただ、デュークは、この場所に居るだけだと言うのに……この良くわからない冷たい態度は、何なの。彼に家族でも殺されたと言うの。
私は思わず、周囲の人たちの向ける視線に眉を寄せた。
こちらをジロジロと不躾に見て、不快感のある視線を送って来る輩に一言言おうかと息を吸い込んだら、さっと伸びて来たデュークの大きな手に口元を押さえられた。
「ふはっ……あにしゅるの」
口を押さえられたままで、デュークを不満げに見上げれば彼は肩を竦めた。
「ごめん。これを先に言えば良かった。俺は別に気にしていない。なんとも思わない。こんなのどうでも良いし時間の無駄だから、早く行こう」
デュークは遠くに見えるダムギュア王城を指差して、さあ目的地行こうと言わんばかりに面白くない顔をした私の背中を押した。
彼は要請された仕事でダムギュアへと来ている訳だから、それを終えなければユンカナンに帰れない。さっさと済ませて帰りたい。
デュークの言わんとしていることは、私だって理解出来る。
彼の言いたいことはわかってはいるけど、私は自分の大好きな人があんな理不尽な目に遭っているのに、黙っていられるほどお利口でもない。
「……本当に?」
隣を歩きながら彼の本意なのかと疑わしい眼差しを向けた私に、デュークは苦笑した。
「本当。例えばの話。アリエルも、その辺の石ころが話すことが出来たとするじゃん? 石ころが自分に悪口を言っていても、特に気にならないだろ? あー、なんか言ってるな。くらい。それと一緒。俺は自分に不利益なことをした段階で、そいつはもう雑に扱って良い存在にしている。ああいった連中に、思い直してくれなんて何を言っても時間の無駄。無駄な時間は使いたくない。これが俺の気持ち」
デュークの淡々とした言葉を聞いて、私は一瞬息を止めた。
だって、悲しい結論に辿り着くまでに、彼がどれほど多くの言われたくないことを言われて来たんだろうと思ったからだ。
大きな苦悩を抱えて、それをそう思うことで乗り越えたかを思えば……どうしても辛い。
だって、私はデュークのことが好きだから。彼にもちょっと怖いと言われてしまうくらいに。
「デューク」
「……まあ。だから、アリエルがヘンドリック大臣から俺を守ってくれているってのは、もうわかったけど……あの人がああいう人だから、俺は正直に言うとあんまり、気にしてなかった。あの人は俺のことを庶民上がりで礼儀のないどうしようもない存在であると、何かを話す前から決めつけてかかっていた。そして、俺は彼のそんな考えを覆そうとも思わなかった。そう思いたければ、思えば良い。別に俺は困らないと」
「デューク……けど、そんなの悲しいわ。私はデュークが……そんな辛い思いをしていると辛いもの」
デュークが話している事は、効率の良い割り切った考えであると思う。
冷遇をされていも、彼が別段困ってもいないのなら、私が彼を守ろうとしてしたことは無駄だったのかもしれない。
けど。
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