重いと言われても、止められないこの想い。~素敵過ぎる黒獅子騎士団長様への言い尽くせぬ愛~

待鳥園子

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62 振り②

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「ええ。そうですね。理由を知りたいでしょう。ですから、教えて差し上げましょう。そこの黒獅子に僕は親友を殺されたんですよ。身分はない騎士でしたが、僕にとってはかけがえのない存在で……ユンカナン王国に行った時に見て驚きました。強い強いと言われているのに、姿は痩せた長身の男だ」

「……戦争にはそういうことが付きものだと思うわ。それを言うならば、我が国に戦争を仕掛けなければ良かったのではないの? お父様を止めることは、貴方ならば出来たでしょうに!」

 結局のところ戦争というのは、戦闘員は使って両国の王族が戦っているのだ。ダムギュア王国が戦闘員を使って攻め込むのならば、我が国だって応戦せざるをえない。

「僕だって……僕だって、戦争は止めたさ! ユンカナンには獣人という化け物が居るんだから、手を出さない方が良いんだと! 父は何を言っても、聞かなかったんだ!」

 声を荒げて叫び出したルイ様を見て、私は今ある状況を冷静に考えていた。デュークさえ目覚めてくれれば、私がさっき香炉を投げ捨てた窓から飛び降りて貰えるはず。

「化け物ではないわ。失礼なことを言わないで。私にとっては、大事な自国民よ。けれど、別にその意識を正すつもりもないわ。だって、ダムギュアで起こることは、私の責任の範疇にはないもの」

「獣にその身を変えることが出来るなどと……結局のところ、獣の姿が本性なのだ。気味の悪い化け物だ」

 眉を顰めてそう言われても、彼とは違う教育を受けてきた私には、全くわかってあげられない気持ちだわ。

 あの興奮状態で我を忘れていたデュークに変貌してしまった理由が、私にはわからない。あのお香のせいであるならば、すっかり空気が入れ替わった今では効果はなくなってしまっているはず。

 けれど、別の理由であれば、すぐに意識を取り戻すことは難しいかもしれない。

 何かで話を引き延ばして、時間稼ぎが必要なのかしら。

「……私はこの国に残るから、私の護衛騎士たちとデュークを解放してちょうだい」

「なんだと?」

 ルイ様は私が何を言い出したのか、すぐに理解は出来なかったようだ。

「あら。以前にお会いした時に、私に結婚を申し込みに来たことを忘れたのかしら? つまり、婚約者候補として私の希望でダムギュア王国へ留まってあげるから、彼らを解放しろと言っているの」

 もちろん。ルイ様と結婚する気なんて、毛頭ないけれど、今この場をどうにかしようと思ったら、それしかない。

 私の身には利用価値がある。けれど、彼らはすぐに殺されてしまうかもしれない。

「アリエル姫の護衛騎士は確かに、全員捕らえている。近くの部屋に居る」

「……そう」

 やはり交渉道具にしようと命は助けていたらしい。私はほっとした。自分のせいで誰かが死んでしまったと思えば、あまり気持ちは良くないものだ。

「護衛騎士は、解放しても良いだろう。だが、黒獅子は駄目だ」

「あら。どうして?」

 私は内心とても焦った。実際のところ、私が自分の身を引き換えにしてでも、一番に逃がしたい人物がデュークなのだ。

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