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03 素敵な辺境伯①
「……ヴィクトル。今、大変なはずだ。デストレ辺境伯の君が、何故ここに居る?」
信じられないと言わんばかりな表情の王子様リアム殿下は、私が転んで伏せていた短い間に階段を下りていた。
私にとっては初対面に近い人なので、ここでどんなに嫌われていたり恨まれていたりしようが、心は痛むはずはない。だって、婚約破棄済みだし、好かれることはないと言い切れる。
正直、美形王子様で、目の保養で素敵ー♡ とは、なってしまうけど、芸能人と一緒で、顔と名前を知っているだけだもの。
「……急な勅命で陛下に呼ばれたもので、王太子たるリアム殿下にも、こうしてご挨拶に。僕は臣下として十分に、礼は尽くしているはずです。殿下のこのような場に居合わせてしまうとは、驚きでした」
挑戦的なヴィクトルさんの言いように対し、リアム殿下は不快そうに眉を顰めた。
「……ヴィクトル。レティシアを降ろせ。彼女は罪を犯した。僕たち二人はこの後、話し合いをしなければならない……足を痛めて歩けないのならば、僕が代わろう」
あ……話し合い? 悪事についての取り調べとか、婚約破棄後の処遇を話し合うとか?
正直、困る……だって、何話したら良いの。私は前世含め婚約破棄されたのはこれで初めてだから、何分手続きがわからないけれど、そういうものなのかもしれない。
「……レティシア・ルブラン公爵令嬢に罪があるとするならば、先ほど十分に罰は受けたはずです。王太子から公衆の面前での婚約破棄? 未婚の貴族令嬢ならば、それは死刑宣告に近いではないですか……なんと、非道な……」
婚約破棄ってそういうものだしと、逆に冷静な私は変な知識があり過ぎなのかもしれない。怒っているヴィクトルさん対し、不機嫌なリアム殿下は重ねて言った。
「くどいぞ。ヴィクトル。先程の俺の言葉が、聞こえなかったのか? 今すぐにレティシアを離せ」
リアム殿下が近付いて手を広げたので、王族の彼がここまで言うのなら降りるべきかと、私は抱き上げてくれていたヴィクトルさんの腕から降りようと身じろぎした。
けれど、ヴィクトルさんは、腕に抱いた私を抱きしめたまま離さない。
……え? 王族に逆らって、この人は大丈夫なの?
指示に従わないヴィクトルさんは、淡々とした口調で続けた。
「リアム殿下。非常に申し訳ありませんが、それは出来ません。それに、現在レティシア・ルブラン公爵令嬢は、婚約破棄され貴方の婚約者ではない」
「……なんだと」
「つまり、このような状態で私的な交流を持つことは、適切ではないかと。何か書類が必要ならば、ルブラン公爵家へ後ほど届けさせてください。取り調べならば、僕も同席を望みます」
「では、これは命令だ。ヴィクトル。レティシアを離せ」
「確かに彼女も僕も、陛下や殿下に仕える貴族ではありますが、要請に対し拒否権のない使用人でもありません。それに、女性にこのような酷い仕打ちをしておいて、すぐに二人での話し合いも何もないと思われますが……紳士的な殿下はその辺は、どう思われますか?」
私は息を呑んだ。鼻で笑ってないけど笑ってそうなヴィクトルさん、強い。権力者であるはずの王子様へ、弁護士ドラマの弁護士並みな、まくし立て方をしている。
「ヴィクトル……」
婚約破棄したばかりの女性に対し、そんな命令などありえないと肩を竦めたヴィクトルさんに、リアム殿下は鋭い目つきで睨んだ。
「……それでは、これで失礼します。もし、このように故意に傷付けた彼女に何か伝えたいことがあれば、第三者を通してご連絡ください」
「殿下、しっ……失礼します!」
私はヴィクトルさんに続いて、リアム殿下に退出の挨拶をした。何故か、それを聞いて彼は信じられないといった表情になった。
……なっ……何? 悪役令嬢なのに、私、礼儀正しかった?
私の性格が今までどうだったかは知らないけど、普通挨拶は基本だよね?
信じられないと言わんばかりな表情の王子様リアム殿下は、私が転んで伏せていた短い間に階段を下りていた。
私にとっては初対面に近い人なので、ここでどんなに嫌われていたり恨まれていたりしようが、心は痛むはずはない。だって、婚約破棄済みだし、好かれることはないと言い切れる。
正直、美形王子様で、目の保養で素敵ー♡ とは、なってしまうけど、芸能人と一緒で、顔と名前を知っているだけだもの。
「……急な勅命で陛下に呼ばれたもので、王太子たるリアム殿下にも、こうしてご挨拶に。僕は臣下として十分に、礼は尽くしているはずです。殿下のこのような場に居合わせてしまうとは、驚きでした」
挑戦的なヴィクトルさんの言いように対し、リアム殿下は不快そうに眉を顰めた。
「……ヴィクトル。レティシアを降ろせ。彼女は罪を犯した。僕たち二人はこの後、話し合いをしなければならない……足を痛めて歩けないのならば、僕が代わろう」
あ……話し合い? 悪事についての取り調べとか、婚約破棄後の処遇を話し合うとか?
正直、困る……だって、何話したら良いの。私は前世含め婚約破棄されたのはこれで初めてだから、何分手続きがわからないけれど、そういうものなのかもしれない。
「……レティシア・ルブラン公爵令嬢に罪があるとするならば、先ほど十分に罰は受けたはずです。王太子から公衆の面前での婚約破棄? 未婚の貴族令嬢ならば、それは死刑宣告に近いではないですか……なんと、非道な……」
婚約破棄ってそういうものだしと、逆に冷静な私は変な知識があり過ぎなのかもしれない。怒っているヴィクトルさん対し、不機嫌なリアム殿下は重ねて言った。
「くどいぞ。ヴィクトル。先程の俺の言葉が、聞こえなかったのか? 今すぐにレティシアを離せ」
リアム殿下が近付いて手を広げたので、王族の彼がここまで言うのなら降りるべきかと、私は抱き上げてくれていたヴィクトルさんの腕から降りようと身じろぎした。
けれど、ヴィクトルさんは、腕に抱いた私を抱きしめたまま離さない。
……え? 王族に逆らって、この人は大丈夫なの?
指示に従わないヴィクトルさんは、淡々とした口調で続けた。
「リアム殿下。非常に申し訳ありませんが、それは出来ません。それに、現在レティシア・ルブラン公爵令嬢は、婚約破棄され貴方の婚約者ではない」
「……なんだと」
「つまり、このような状態で私的な交流を持つことは、適切ではないかと。何か書類が必要ならば、ルブラン公爵家へ後ほど届けさせてください。取り調べならば、僕も同席を望みます」
「では、これは命令だ。ヴィクトル。レティシアを離せ」
「確かに彼女も僕も、陛下や殿下に仕える貴族ではありますが、要請に対し拒否権のない使用人でもありません。それに、女性にこのような酷い仕打ちをしておいて、すぐに二人での話し合いも何もないと思われますが……紳士的な殿下はその辺は、どう思われますか?」
私は息を呑んだ。鼻で笑ってないけど笑ってそうなヴィクトルさん、強い。権力者であるはずの王子様へ、弁護士ドラマの弁護士並みな、まくし立て方をしている。
「ヴィクトル……」
婚約破棄したばかりの女性に対し、そんな命令などありえないと肩を竦めたヴィクトルさんに、リアム殿下は鋭い目つきで睨んだ。
「……それでは、これで失礼します。もし、このように故意に傷付けた彼女に何か伝えたいことがあれば、第三者を通してご連絡ください」
「殿下、しっ……失礼します!」
私はヴィクトルさんに続いて、リアム殿下に退出の挨拶をした。何故か、それを聞いて彼は信じられないといった表情になった。
……なっ……何? 悪役令嬢なのに、私、礼儀正しかった?
私の性格が今までどうだったかは知らないけど、普通挨拶は基本だよね?
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