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66 adonis(2)

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 三人で神殿の前に帰り着き、折り良くロミオは神殿長に呼ばれて出て行ったので、ミルドレッドはアランと二人になった。

「良いねー……首飾り。あいつの目の色の。これは、良く似たの見つけたなー……ミルドレッドさんに、似合ってる」

 二人してロミオの部屋に入り、ミルドレッドが花瓶に花を活けていると揶揄うようにアランがそう言ったので、彼女は頬を赤くした。照れた様子を微笑ましく見て、彼は何処か遠くを見てありし日を思い返すように目を細めた。

「この前に、話が途中になったんだけど。まあ、あいつ勇者だし。ああいう見てくれだし。そこそこモテてたんだけど、一切女を相手にしなかったから、なんでかなー? とはいつも思ってたんだよね。けど、付き合ってすぐに、こうして婚約の証を渡すくらいだから本当に本気なんだなー……」

「モテてた……?」

 しみじみとした言葉の一部分に引っ掛かりを感じて、彼が居る方向を見てミルドレッドが呟くと、アランはにやにやとして揶揄うように言った。

「うん。だって、あいつ勇者だよー? 世界に一人しかいない、希少な職業だし。後、顔は大事だよね。俺も好みの美人には弱い。人類皆ほぼそうだから、仕方ない」

 うんうんと一人納得したように頷くアランに、ミルドレッドは複雑な気持ちを抱いた。

「……あの……」

(ロミオにどんなモテていた過去があるのか。気になる……でも、それを聞くのはあまり良くないかもしれない)

 それを聞けば嫌な気持ちになることは間違いないのだが、どんなものだったかも気になる。

 もやもやとした気持ちを押し隠すようにミルドレッドは、お茶の準備へと向かった。茶菓子で用意されているクッキーを並べて、アランの座っているテーブルにつけば、彼はそんな女心を正確に読んだように言った。

「大丈夫だよ。あいつ。ベッドで裸の女に待たれて居ても、食わなかった男だから。俺の寝ているベッドに入り込んできたから、うわまじか貞操の危機かと思ったら、その女に譲り渡して来たから、単に自分の寝るベッドがなかっただけだった。俺、別に男色の気はないんだけど。ちょっとだけ。ガッカリしたのは、内緒な?」

 アランが悪戯っぽく微笑んだので、ミルドレッドは茶化して面白くしようとした彼の意図を理解してつられるように笑顔になった。

「うんうん。女の子は笑顔の方が良いよー。そういえば、今日偶然会ったリーシャも幸せそうだったな。良かったよ」

「……リーシャさん? 白魔法使いの?」

 それはロミオと縁談があったという相手ではないかと、慌てたミルドレッドが立ち上がったのでアランは落ち着いて座るようにと手を振った。

「あー。いやいや。あいつも一緒に魔王倒したメンバーだし。パレードの後で、いきなりいなくなった勇者のロミオが生きてたって聞いて、嬉しそうだった。あー……まあ、予想ついてたけど。勇者が魔王を倒した後に、正気をなくしてしまうことは……言えないんだな。俺もあいつがいなくなった訳を言おうとしたけど、生きていることしか伝えられなかった。神殿の中でしか、これは話せないようになっているんだと思う。まあ。そういうことだな」

「あ……あれを、国民に知られると……」
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