死神の業務日報

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違和感の答え②

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「いや・・・えっ?」

 蒼星は見間違えではないかと何度も文字盤を確認したが、時計はまぎれもなく16時45分を指しており、

 秒針はまるで時間が止まっているかの様にカチカチと同じ所を往復していた。
 
自分でも何が起こっているのか把握できず、蒼星は急いで外へ出ようと振り返った、
すると棚の横にあるドアの向こうから、人の声がすることに気が付いた。

「・・・よかった」

 人がいる事がわかって少しホッとした蒼星は、とにかく時間を確認しようと扉に手を掛けた、扉には

『貴重本書庫につき、関係者以外立ち入り禁止』

と書かれていたが、そんな事よりも今は時間を確認する方が優先だと、重い金属の扉を開いた。

 部屋の中は本でびっしり埋まっている書庫になっており、奥の方が見えないほど広い空間だった、

 それぞれの棚には三桁の番号が振られており、見るからに貴重そうな本がびっしりと並んでいた。

「・・・す、すみませーん」
「・・・」

 蒼星は話しかけようと声を上げたが、聞こえないほど奥の方で作業をしているのか返事はなかった。

 仕方がないので、蒼星が恐る恐る棚の奥の方へと歩いていくと、声は少しずつ大きくなり声の主の元に近づいている事が分かった、

声質からして声の主は女性の様だったがだんだんと近づいていくにつれ、蒼星は自分の背筋がピリピリするのを感じた。

「・・・泣いてる?」

 どうやら声の主は普通に話しているのではなく、かみ殺すように泣き声をあげている様子で、内容までは分からないものの、彼女が誰かと会話しているのではなく一人で泣いているという事は分かった。

 怖くなった蒼星はこのまま引き返そうかとも考えたが、何故かどうしても彼女が泣いている理由が気になってしまい、ゆっくりと声のする方へと歩みを進めた。

 両側に本棚のある中央の通路を進んでいくと、泣き声は一番奥の棚の中から発せられているという事がわかり、蒼星は恐る恐る棚の前に立った。

 本棚には『番号000 エスカ』と書かれており、並んでいる本はかなり分厚い装丁でどれもどこの言語か分からない言葉で書かれていた。

「・・・だ、大丈夫ですか? あとすみません、今何時かわかりますか?」
「・・・ヒッ・・いや・・・だよぉ・・・なんで・・・私が」

 蒼星が棚の中へ入り恐る恐る声を掛けると、彼女はまるで蒼星の声が聞こえていない様で、

変わらず苦しそうな声で泣いていた。
蒼星は反応が無い事にやきもきしながらも、彼女の姿を探して棚の奥へと進んだ、だが棚の一番奥の壁が見えても、そこに彼女の姿はなかった。

「・・・えっ」

 驚いた蒼星は、彼女を探そうと辺りを見回したがどこにも彼女の姿はなく、ただ彼女の泣き声だけが広い書庫に響いていた。
 
蒼星は、自分が棚を間違えたのかもしれないと目を瞑り耳を澄ませた、すると泣き声は蒼星の左手に位置する本棚の、一冊の本から発せられている事が分かった。
 
いやいやどういう事だよこれ、マジさっきからあり得ない事ばっかり起こってんぞ、もしかして俺頭おかしくなったか? いやでも時計は間違いなく16時45分を指してるし。

 ゴクリッ

 蒼星はゆっくりと唾を飲み込むと、恐る恐る声を発している本に手を掛けた・・・その瞬間突然視界が白い光に包まれ、再び視界が戻った時目の前に現れたのは、真っ白な空間にポツンと置かれている仰々しい椅子と、そこに座る一人の小さな銀髪の少女だった。


「・・・やぁ! こんにちは、遊佐蒼星くん」

 少女はキメ顔でそう言った。
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