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第一章 schola
閑話 Ⅰ
──ふと、思い出す。
始まりは、ほんの僅かな温かさ。優しさ。ちょっぴりの苦しさ。
只々、ひたすら野山を越え、獣達の命をまるで花を手折るみたいに刈り取って行くあの山での日々を。
寒空の下、凍えた体を温める為に安酒を口にして疲れた体を休める。暫くすれば足先からポカポカとじんわり広がる温度が眠気を誘う。
幼い頃から体に叩き込まれた、弓の術と山菜の鑑別眼が私だけの世界で、唯一の自慢だった。
平民だから文字は読めないが、物心が付く頃に覚えていた数字だけは自然と読めた。街に聳え立つあの大きな時計塔の秒針が指す行方と、商店の値札に書かれた数字だけさえ読めれば、後は何も─
……だけれど何故か自分の名前すら書けない、分からない。其れだけが少し胸に痞えていた。
◇◆◇◆
周りの女の子達は皆、裁縫や機織りをして一人前の女としての作法を教えて貰っていたのと反対に、家が狩猟家系と云う理由で、女の子らしい事も一切せず、平民からも嫌煙される野蛮な狩猟をして、世間から隔絶された田舎町で幼少期を過ごした。
『肉体労働は男がするものだ』と皆、口を揃えて言うけれど、私の家には私と父しかもう、居なかった。若くして世を去った母が、産む筈だった男子の代わりに放つ矢。幼い体には酷な強弓を引く。肩が、腕が、指が、どうしようもなく痛かったけど、弱音を吐く事はプライドが許さなかった。自分にはコレしか無かったから。
それでも、男の仕事を女がしているのは異端でしかなかったらしい。
12の時、父の伯母に勧められて短期間だったけど、編み物教室に通った。
今迄、弓矢しか握った事が無かった手には、糸と針が2つ。経験が無い作業は複雑極まって、何度も投げ出しては狩りに走ったけど、母も生前、生まれて来た私の為に編み物をしていたと、父に聞かされていたからか、不思議と屡々弓矢を握っては又、糸と針に手を延ばしていた。
◆◇◆◇
冬の終わり。
同じ教室に通う同世代の女の子達は、慣れた様子で難しい編み物を編み上げては、自慢し合っていたのを横目に、焦心しきった私は不器用ながらも不細工な襟巻きを編んでいた。
そんなある日、あの人に出逢ったのだ。
愛おしいあの人に…
其れは─
狩りをしに山に入った時、ふと見上げる星だった。
─たった一夜だけ、夜が明けるほんの数時間、貴方と話した時間を強烈に今も覚えている。
読み書きも出来ず、自分の名前すら書けない平民の私に優しく、私の名前を教えてくれた貴方。
乾いた土で綴られた文字を頭に焼き付けて、貴方が居なくなった日から反復する様に綴った自分の名前。
叶うなら、もう一度会いたいと願う。
今度は綺麗に編んだ襟巻きを贈って。そして、伝えたい。
あの夜、教えてくれた文字だけ私は
『救われたんだ』と──
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