目指せ!追放√

紅野 雪菜

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第一章 schola

me miserum

「おい」

「……」

意識が段々と戻って来るのを感じると、目の前に佇んでいるヘラクロス教官の姿が映った。

「おっ、起きたか…こんな所で寝てて、大丈夫なのか?」

心配そうな顔を覗かせて、ガタイの良い体を窮屈そうに屈めている男が一人。

そうか、いつの間にか眠りコケていたのか…
は恐らくユノの前日譚の…、…

「こんな時間授業中に大回廊の長椅子に座ってる奴が居て、どんな奴かと思ったらお前だったとはな!」

相変わらず煩い…。

…寝起きの緩やかな思考の中で、騒音の集合体に喋られると若干の苛立ちを覚える。
言うなれば、安全運転を心掛けている小舟の傍でフロントドアの窓を全開にして、爆音でEDMを流している高級車と並走されてる気分…。

「はは…」

どう言った言葉を返せば良いのか分からず、陰キャ特有の乾いた愛想笑いが出る。

「体を動かすのは久方振りだったか?それなら、疲れて寝てしまっても仕方が無いな!!」

ハハハ!と豪快に笑っては、大回廊に声を響かせているヘラクロス教官。
俺の肩に触れてバシバシと遠慮無く叩くのは、ユノ平民プレブスだからだろうか。冷気を放つ大回廊の寒気と今の俺の気分が一つに成りつつあるのを感じる。

「んー、次の授業まで後、27分あるな!」

その金メダルに見えなくもない、黄金色の懐中時計を取り出して、何やら時刻を確認しているヘラクロス教官を他所に、あー今の時間は草学だったなーと思い出す。


遅刻し過ぎると、一周回って謎の余裕が出来るのはこれ如何に?


「良し!俺の処に来るか!!」



「はへぇ?」

間抜けな声が出たのは言うまでも無く。

ココ大回廊じゃ、寒いだろ?次の授業室に寄ってくのに、顔見知りをこんな所で待っとかせるのも忍びないしな!」

「うぇぁああああ?!!」

躊躇も無く突然と胴体を担ぎ上げられ、一瞬で視界の視点が切り変わった事に、取り繕う暇も無く素の声を上げてしまう。

まずっ…

「行くか!」

行くか!じゃねーよ!!この脳筋肉達磨!をこんな粗雑に扱うとか、イカれてんじゃねーの??!正気か?

「う"ぇっ…」

仮にも女の子やってるのに、蛙が潰れた感じの声が吐き出てしまった。

てめー、覚えとけよ…



▼△▼△



ぐらぐらと揺られ、気が付くと何処かの部屋に入っていた。部屋に入るとソファっぽい所に降ろされ、やっと解放される。

頭がぐわんぐんすりゅ…

支点が一つしかない所為か、自重で気持ち悪くなって車酔いした気分になり、それに合わせて、歩いてる振動がダイレクトに腹に畳み掛けて来るのは流石に死にそうになった…。
何なら、昼食の飯を胃からリリースする所だった気さえする。

「ぅっ…、はーぁっ」

「ゆっくり寛いでくれ!」

その前に何故、俺が担ぎ上げられたのかを知りたい。

ヘラクロスの野郎が部屋の奥へと消えて行くのを見届けると、平衡感覚を正すべく起き上がって部屋を見渡すと、そこには目を疑う様な光景が視界を覆っていた─

何と、常人なら卒倒するレベルのヤバい器具が壁に均一して、並べ掛けられているではないか。

「?!?!」

何だこの部屋は…

一瞬、頭に過ぎったのは拷問部屋と言う、斯くも恐ろしい単語であった。

部屋の隅をよく見ると、用途が不明過ぎる物まで…


「まぁ、特に何にも無い処だが、自分の部屋だと思ってのんびりすると良い!」


俺が部屋のアレコレで硬直していると、いつの間にか小脇に何か抱えて、戻って来たヘラクロスに開いた口が塞がらない。

この部屋の何処を見て、のんびり出来るのか教えてくれ。

今なら奴が腰に据えている乗馬用の鞭が意味深に見えて来る…


男とが密室で二人…何も起きない筈が無く─

「どうだ!一杯やってくか?丁度コレしか無くてなー」

そう言って、机にドンッと小瓶と酒瓶を置き、熊の如し巨体を丸め、俺の直ぐ隣りに座った。

お?へ?何を???

脳筋教官はちょっと待ってろよーと、意気揚々に酒杯を取り出してバックス産らしき酒瓶の栓を抜き、何か始めている。

此処に来ても、バックス家のワインである。昼食ブランディウム振りだな。

「な、何してるんですか…?(震え声)」

「ムルスムを作っている!」 

????

「え???」

「高級品だから知らないか!ワインと蜂蜜を混ぜたものだ!」

おっとー、コイッァはクレイジーですよぉ。真っ昼間から酒を煽るその根性は一体、何処から来るんですかねぇ…

しかも、禁酒年齢13の子供に酒飲まして、何おっ始める気だよテメー。

犯罪性の有り寄りの有りじゃねーか!

「へー……(小声)」

ドン引きである。いや、流石にアルコールは飛ばすのでは??と思っていたら普通に、そのままワインと蜂蜜を撹拌した酒杯を指し出された。

気は確か?と、在り得ないモノを見る目で顔を見れば、眩しい笑みを輝かせている気狂い教官。

benigne.ご親切に

「そ、そんな…戴け無いですぅ…」

「良いから、良いから!貰える時に貰っとけ!!こんな機会クリエンテス被庇護者のお前でも、滅多に無いと思うぞ?な?」

いや、そうだけど!

「じゅぎょぅがぁるのでぇ…」

教官も流石に分かったのか、つまらなさそうに酒杯の縁に口に付けた。

「そうか……そんなに断るなら…こうだ!」

?!

「ぅんっ…?!!!!!!!」

突如として、信じられない場景が目の前に広がった─

夢か幻か、ユノの唇をまるで悪戯を仕掛ける子供の様に、目の前に居る悪漢が搔っ攫って行ったのである。

「?!ンっ…ふッ…!!」

ぐちゅりと小さな音を立てて、口内へと闖入ちんにゅうして来た舌と共に、甘味な液が喉奥へと伝い落ちる。

腰に腕、後頭部に手を回して逃げられない様に押さえ付けられ、互いの体を縫い付けるみたいに密着させられる。必死に体を引き離そうと抵抗を試みるが、鍛え上げられた肉体の前では益体やくたい無く終わり、更に押さえ付けられる力だけが増した。

「はぁっ…!むっ、んっ……♡」

クチュ♡…ぐちゅ♡♡…ぢゅッ♡


……う、上手い。


じゃ、無かった!
何じゃコイツ…!無駄に力つよいし、いきなりベロチューとか何考えてんだ……!!??

「ゃ…あっ♡…ん゙!! ぐぅっ♡♡~ッ」

ぐちゅ♡…ちゅろぉ~♡♡

ヤバいっ…この儘なし崩しになる前に、早く何とかしないと…今の俺は、アルテミス神の信徒ユノ!貞潔を守らなくては、神罰が下るッ……!!

ちゅむっ♡……ぢゅぱっ♡♡

い、いき、出来なっ…い…

「んぉッ♡♡……んぐっ!!♡♡」

長くて分厚い舌で喉を突かれば、広がりを見せた咽頭に雪崩込んで来るアルコール混じりの唾液に、喉がカッと熱くなって生理的な涙がじわりと溢れた。

親鳥が雛鳥に餌を与える光景を彷彿とさせる、口移しの給餌。事知らぬ他人からすれば、体格差のある男女の密事にしか見て取れない行為だが、決してそう云う関係では無い。

えぇ、本当に

アルコールのせいで、あたまふわふわしてきた…
アウロラもいつも、こんなかんじなのかな……??
なんか、クスリやってるひとみたい…


「ふぁ♡♡」


散々甘い汁を撒き散らして、口内を蹂躪して周った舌が、てらてらと銀色に光る橋を掛けて離れて行く。
互いに別れを惜しむ様に、舌を突き出してみるけれど、ある地点でぷつんと、橋がこぼれた。

「…どうだ?旨いだろ?」

何も悪怯れた様子も無く、活気に問う男の手によって、その日、ユノのファーストキスは呆気なく取られてしまったのだった。

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