目指せ!追放√

紅野 雪菜

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第二章 domus

nox

「くぅー!とんでもない目に合わされたぁ!!」

 あーもう、辺り一面メタクソ真っ暗で草。女子一人を夜中に出歩かせるとか、山&森育ちのユノじゃなかったらクソ危な過ぎるだろ。こんな暗くなるぐらい抑留よくりゅうしたんだから、宿舎まで送ってくのが礼儀だろうが。ユノたんが平民だからこんな雑な扱いなのか??そうなのか!!ああん??つか、今何時だよ!

 慣れない事をした所為か、令矢の表面張力の如く張り詰めた疲れが、堰堤えんていが決壊した様に流れ出した。そして、同時に自身から漏れ出す魔力が幻蝶げんちょうとなってぶわりと溢れ出す。

 うおっ、やべ。

 この光景はよく見覚えが有るものだ。色取り取りの幻蝶はユノの感情が高ぶった時、魔力放出として具現化するもの。色、形、種類様々な蝶達が舞う場景は幻想的と言っても良いが、この場合あまりよろしく無い。何故なら、何の意味も無く無意識下で具現化させると、偶に攻撃的なヤツ当たりを引いてしまうからだ。今は周囲に人っ子一人居ないから大丈夫だったが、最終章でユノの断罪シーンで今迄の数々の悪行が陽の目に曝された時、抑えが効かなくなったユノが無意識に魔力放出をしてしまって、プロセルピナを硬直化させてしまった事により更に評価が、タルタロス並みの深さまで落ちたエピソードが有る。

 …消さないと。あ、で~も~この蝶、なんか若干発光?してるから灯火代わりにはなるか。よし、今だけ許可しよう。足元暗いし転んだら危ないよね。

 多色多様の蝶達はヒラヒラと花弁が落ちて行く様に翅をはためかせ、仄かな光を発しながらユノの廻りを飛んでいる。蝶を暫く目で追っていると、ふと手の内に有る手触りの良い布に包まれた青い包みに目が止まった。



 ▲▽▲▽



「も…申し訳ありませんっっ!!!ケーレス様ッ!!!!」

「うん?怒ってないし、別に謝らなくて良いわ。私は、どおして“そうなった”かの原因を聞いているのよ?ヴォルプタ」

 ヴォルプタと呼ばれたアカンサス・モリス色の髪を持つ少女は、ケーレスの座す前で地べたに膝をつき、祈る様に両手で片手を包む形で組み、カタカタと縮こまった全身を震わせていた。

「ああ、あっ、あのッ!あの媚薬兼催淫薬はですね、一応あの、仮薬としてですが、完成はしていたんですが、未だ治験前のモノでして、混ぜた後に味や匂い、副作用で何かしらに影響が無いか試す為、あの日、フェロニア様と共同で仮薬入りのパニス・クァドラトゥスを作成した所は良いんですが、後から来たヘラクロス教官に誤食させてしまい……仮薬、全てが…あのっ!本当にごめんなさい!すみません!!」

 必死の弁解でヴォルプタは、今にも泣き出してしまいそうな涙目で、考えを巡らせる様にあちこちへ目を泳がせている。

「…そうなのね。折角、学費や研究費を援助してるのに、こんな事になるなんて残念よ。高級娼館の娘と云うから、期待してパトロナスになったと云うに…悲しいわ、計画の決行はもう無理そうね」

 ケーレスは困り果てた顔で晩餐のメロンを一匙掬い、口に入れた。

「で、でも、ちょっとした成果も有るんです…」

 ヴォルプタの震える声にケーレスは食指をピタリと止め、耳を傾けた。

「なぁに?聞かせて?」

叱責は無いものの、確実に信用は落ちた今、何とか挽回しようとヴォルプタは弁解を始める。

「ヘラクロス教官が誤食した後、どうしようも無くなって仕方なく効果の程を見る為に尾行してみたのですが、効き目が有ったのかあの後、通り掛かりにアロの女子生徒を半ば強引に連れ去って、淫猥行為に至ったのを盗聴魔術でバッチリ確認出来ました…ただ、当初想定していた被験者の体重と体格が別格だった所為で、効き目は薄かった様に見えましたが、ですのであの仮薬の調合で十分効果はあったかと…」

「へぇ、じゃあぁそれなりにちゃんと効いたって訳ね?まぁ、此処まで投資しているのだからそうでないと、困るわ。はぁ、フェロニアにも協力してもったのに、あの子ったら何をしてたのかしら?」

 “フェロニア”と言う言葉を耳に入れた途端、ヴォルプタの小刻みに震えていた腕がピタリと硬直する。

 いけない。あの人は巻き込んでは行けない人だ。

 胃が縮こまりそうな空気の中、ヴォルプタは今にもこの場から逃げ出したい気持ちを押し殺し、彼女の機嫌を伺う事に徹した。

「いえ、全て私めが不甲斐無い所為で、この様な事態に成ってしまい…」

「謝らないで?もう起きてしまった事はしょうがないでしょ?だから良いの。でも、今から新しくアレを作るにしても、アレを作るのにネプトゥヌスと前々から色々と交渉して、外の方に自生している珍しい薬草やらを多額の支援で取り寄せて、既に事を進めている事として構想を立てていたから、薬草の在庫はもう無いし“本当に困った”わ」

 ケーレスの明け透けな言葉責めにヴォルプタは、よくもまぁと思ってしまうが今回の非は全て自分に有るのだから、ヴォルプタは何も言えない。ケーレス・ウェスタと言う女は、そう云う性情なのだ。生まれ持った大らかで朗らかな、容姿と気品溢れる話し方で一見、聖人とも想起させられるがその実、毒蛾の様な気質を度々伺わせる女である。私、ヴォルプタも一度は善人を体現した様なケーレス様に心を開いてしまったが、直ぐ様に間違いだと気が付いた。

「ま、待って下さい。一つ。代わりになる物は有るには有るんです!これは効果が短期間の簡易的な催淫薬です」

 そう言ってヴォルプタは、一枚の紙をケーレスに渡す。

「それで?」

「古いレシピです。これを完成させるには、ある葡萄酒とある薬草を煎じて抽出したもの二つがいるのですが、上手く行けば今際中には完成させられるかと。ただ、簡素で限定的なモノなので媚薬では無く催淫薬での既成事実で事を進めなくては行けませんが…」

 流石に今回の事は範囲外だったが、こんな中途半端な所で支援を打ち切られる訳には行かない。何の為に今日迄、頭が捻り切られる様な勉学の日々を過ごしたか!

「じゃぁ、もうこれで良いわ。今から取り掛かってちょうだい、もう暗いし今日はここ迄にしましょう。気を付けて帰るのよ?」

 なんとか機嫌を取り戻したのか、その何とも言えない笑みを浮かべたケーレスは、受け取った紙をヴォルプタに返して〝お願いね〟と、そう言った。


 ▲▽▲▽



 足取りが重い…死にたい。もうヤダ。

 そんな言葉を思い浮かべながら、ヴォルプタは催淫薬の材料となる夜にしか咲かないある植物を探しに外へと繰り出す。そして歩き出して、暫くしない内にヴォルプタは在る異変に気が付いた。

 何、アレ?外灯が一箇所だけ付いている…?ん?違う?複数の灯光とうこうが動いてる…って事は人が集まって…でも、色が可笑しい。

 不気味な灯光にヴォルポタは、怪訝に思いながも慎重にその光原に足を進めて近づくと、其処には銀の懐中時計を眺めてる一人の少女が居た。そして、その周りを飛び交う、色取り取りの蝶が薄い翅越しに光を放ちながら少女を照らしている光景が目に入って来る。

 あの人は…あの時のヘラクロス教官に襲われた生徒…ぁあ!私、謝らなきゃ。あの時は保身しか頭になかったから、傍観してしまったけど。
 私の過ちで、無関係の人の貞節が揺らぐ原因を作ってしまったんだ。絶対に謝らなきゃ。

ぼ、ボヌムヴェスペルム~こ、こんばんは~

 少し、異様な光景にも関わらずもその少女を見て私は、あの時の過ちを清算するべく声を掛けた。少女は、私が声を掛けて初めて私を認識した様で、ビクリとした様子を見せて手に持っていた銀の懐中時計の蓋をパチリと閉めてポケットにしまいながら、こくりと頭を下げる。アロの生徒だと示す白のスカーフを身につけていた少女の首元の襟には、何やら蔓の様な奇妙な刺繍が施されてた事に気が付いた。

 何だろ…?アレって私たち女子生徒にも男子生徒にも無いよね?上級生にすら見た事無いし、どう云う事だろ?

「こんな時間に何してるの?」

 ああ。いえ、これから宿舎に帰る所です。と少女は応えた。通常、普段ならばアロ生は身の安全を考慮して辺りが暗くなる前の夕方頃に、宿舎に帰らなければいけない門限が有るが、今際に限ってその制限は一時的に解放される。だから、今この時間帯にアロ生がフラついて居ても、何の問題は無いけれど泥酔した上級生に絡まれたり、夜間は色々と面倒に巻き込まれ易いから単独行動はあんまり良く無いんだけれど。

「そう。じゃぁ、他に用事が無いなら、少し…良い?」



 ▽▲▽▲



 私は、その少女に仮薬の事を全てでは無いが、話し謝罪をした。少女は勿論、驚いていたけれど謝罪に来てくれたし、悪気の無い事故と云う事で許してくれた。
 それから、お互いの話になって私がこれから、夜の間にしか開花しない花を摘んで行く所だと、言うと興味を示した様で、その花の話しを少し話して私達は別れた。
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