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聖母()

聖告Ⅲ

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『Mobius Cross_メビウスクロス徒然:聖告Ⅲ』


聖母·マリァ…じゃなかった
 ヤリマ★聖母は、身重でありながら遠くに住む身重の親戚に挨拶に行く!


「ごきげんようエリザおばさま!念願の赤ちゃんおめでとうございますわ♪」
今日のヤリマはこっちのキャラから始まる。

「え?!ヤリマかい?!なんでここに…
それにその腹…!」

「えぇ…お恥ずかしながら…///」

「それであんたの家からここまで?! (推定距離150kmくらい)
しかもあんた隣におられるのはまさか…」


「かいました♪」
ヤリマはニッコリ微笑み鎖の繋がれた腕輪をチャリ…と見せた。


「ナッ!?

……はぁ~~…。
お前たち、ちょっと3人っきりにしてくれるかい?」
エリザは頭を抱え、助産婦達を退室させた。
そして優しい顔でヤリマを呼ぶ。
「ヤリマァ?こっちへいらっしゃぁい?」

「やだ。殴られるから。」
乙女キャラ終了。


「ッこんの罰当たりもんがい!!御使い様を捕まえる奴があるかい!!」

「え。おばさんジブリエラ知ってんの?」

「あたしらんとこにも来られたわい!
ああジブリエラ様…身内が非道いことを…どうかお赦しを…」

ヤリマと鎖で繋がれた告知天使ジブリエラは困ったように笑った。
「ぁハハ…エリザ、あらためておめでとう;
私はまあ大丈夫ですよ;」


 そのあと無事 めっ☆(拳骨)されたヤリマだったが、エリザに“お産を見届けて欲しい”と頼まれ、暫くやっかいになることに。


「まあなんにせよ、ありがとうよヤリマ。あんたが同じ時に妊るなんて、とんだ奇跡だねぇ。」

「俺の方は余計でしょ。。コイツのせいでナンパはできないし、栄養吸われて歯とか髪とかボロくなるし最悪よ。
おばさんはやっぱ嬉しいもん??」

「そりゃそうさ!長年子宝に恵まれなかったあたしにやっと主がお授けくださったんだよ…。有り難くて有り難くて何度も泣いたさ。この子と一緒に居れる今この瞬間が人生で一番幸せさ。」


「ふーん…。

…よぉおばさんの腹の子。
お前幸せもんだなぁ。おばさんの為にも元気に生まれて来いよ?」
ヤリマはエリザのお腹を触らせてもらいながらその子に話しかけた。
すると…



…モコン、ポコン。


「わ!コイツ踊った?ハハッ元気そーね♪」
ヤリマは嬉しそうに笑った。

それを見て、感じて、エリザは言う。
「あんたに会えて嬉しいってさ。仲良くしてやっとくれ。」


「!まさかイケメンか?!おばさん、イケメンだったら俺、トりに行くわ!
可愛い赤ちゃん♡? おねいさんが (イケメンだったら)イロイロ教えてあげるからね♡??」


「お、女の子ですッ!!;
胎児を母親の前でナンパしないでください…;」
ジブリエラが遮った。

「えー女~?おばさんの娘とか美人確定じゃ~ん…。俺のトり分減ったらどうすんのよ~
…お前あんまちょーし乗んなよ?(威圧)」

「胎児と母親の前で男を取り合わないでください…;」


「ハハ!ヤリマは相変わらずだねえ!いい姐さんになりそうだ!あたしに何かあったら、この子のこと頼むよ!」

「はあ?おばさんに何かなんてありねーわ(笑)」
そう言っておどけるヤリマに、エリザは少しトーンを落とした声で言った。


 「あたしはお産で死ぬかもしれん。」



「…し、死…?んな大げさな…。」

「大げさなもんかい。人間っていう か弱い生き物にとってお産ってのはね、命がけなんだよ。あたしくらいの歳になれば尚更さ。
今のうちに言っとくよ?あんたは若いから大丈夫。子供と自分を信じて元気に産んでやりな。」



 その話以来ヤリマは、片時もエリザの側を離れなくなった。

 そしてついにその時が訪れる。



 今夜もエリザのベッドに突っ伏したまま寝てしまったヤリマをジブリエラが切迫して起こす。
「…リマ…
…ヤリマ…!起きてください!
始まりました!本陣痛です!」

 ガバッと起きると、エリザが額にとてつもない量の汗を浮かべて苦しんでいた。

「丁度助産婦が交代に行っています!急いで呼びに
「!!!!!ッオイ助産婦ども!!!!!
!!!!!生まれっぞッ来い!!!!!」


キャラ作りも忘れたヤリマの凄まじい怒号が家を揺らした。

助産婦全員が駆けつけ、騒がしく声を掛け合いながら、ナイフ?!や松明??が持ち出され部屋が戦場めく。

…やべ…呼んだは良いものの何すりゃいいのかわからん…!
ヤリマはただただ必死でエリザの手を握り、様子を見た。物凄い力と震えと手汗でこちらまで焦る。

「おばさん!しっかりしろ!そんなに痛えのか?!大丈夫だ!産むだけだよ!!おばさんの力なら一発でしょ!?」

見るとエリザの股座からは大量の血が流れ出していた。

…こんな…!“月のもの”の比じゃない…!
ハラワタ裂けてんじゃ…!?

焦って腹や腰や背中など色々な所をさすってあげるが、エリザの表情や声は強張り続ける。鼻の穴が潰れるほど頬が力み、瞼を潰れそうなほど食いしばり、歯茎が見えギャリギャリと音が鳴るほど歯を食いしばっている。
その口元からも血が…!

「おいおばさん歯ァ割れてんぞ…!?
力み過ぎだ口開けろ!おい!」

口を開かせようとエリザの上唇と下唇の奥に指をかけ力を込める!しかしまったく歯が立たない!

「ま、まず息しろ!ほんとに死んじまうぞ!?」

ヤリマの言葉が聞こえたのか、
…っずはーっっ…
と息を吸うエリザ!

「いいぞ!開いた…!」



「ヤリマ、ダメッ…!!」
ジブリエラが叫ぶ!



ガブリ!!



「ッ"…!!!」

咄嗟に入れたヤリマの指が噛み締められる!


「ヤリマ抜いて!骨まで噛みちぎられる!」

「ダメだッ!!
今抜いたら、おばさんが舌を噛み切っちまう!」

「でもそのままじゃ、ヤリマの指が先に切れてしまう!」

「知るかッ!
おばさん救う為なら俺の血肉の一片でも十片でもくれてやる!!」

ヤリマは指をさらに口の奥までねじ込んでいく…!食い込んだ歯が指の肉を削ぎ、拳の関節を直に擦り越え、手の甲に達する!

めくれ上がった指の皮と肉を追うように血が溢れ出すので、誤嚥しないようにシーツを歯の隙間から入れて吸わせた。

ヤリマの力も手伝って、エリザは顔の角度をやや上向きにして気道に余裕ができ、グフーッグフーッと呼吸していた。


「いいぞおばさん!
聞いてるか?

頭、見えたってよ…!

 生きろおばさん!最愛の娘なんでしょ?!生きて会え!生きて育てろ!」


その言葉が聞こえたのだろうか、
エリザの目が開かれ、苦痛の黒目に勇敢な光が灯った!

広角を上げ、口の力を制御し、ヤリマが手を抜くと再びシーツを噛み締め、鼻と口で荒く呼吸しながら何度も息んだ!


 そこからですら何時間闘っていたのだろう…
外は白み、地平から太陽が顔を出した直後…ついに…


「オキャー!オキャー!」
 とその子は元気な産声を上げた…!


助産婦に取り上げられ、火と酒で清められたナイフで臍の緒を切られ、キレイな湯で洗われ、エリザの胸に抱かれる。

 皆が喜び讃え合う中、ジブリエラがエリザとその子に祝福を述べた。
「おめでとうエリザ。よくがんばりましたね。主も祝福します。
その子もまた、世を救い、人を祝福する善き人となるでしょう。
主から名を授かっています…。
その子の名は……」

 そんなことよりヤリマは、赤ちゃんのあとに押し出されてきた胎盤を見て“うわグロッ!え?なに子袋って使い捨てなの??”と肝を冷やしていた。



 翌日。
疲れ果てたエリザが目を覚ますと、ヤリマとジブリエラはもう家を出ていた。


「…まったく…慌ただしい娘だよ、ほんっとに…。
てっきりここで産んでくれるもんとばかり…。
あたしだってその子に会いたいし、あんたに恩を返したいってのに…

ねー?♪」

 エリザは幸せそうに微笑みながら、その腕に抱く愛娘に話しかける。


「もっと遊んでほしかったでしゅねえ?♪あなたはあ~んなバタバタした女になっちゃダメでしゅよ~?♪

ね??

 シャハネちゃん♪」






 どこかへ急ぐヤリマと引っ張られるジブリエラ。
「ちょちょ、ちょっとヤリマ。どうしたんですか?;もっとエリザの家で過ごしたらよかったのに…;
あそこならお産を手厚くサポートしてくれたのに…;
お産に焦りは禁物ですよ?;いくら新しい命の誕生に心動かされたからって♪ね?♪」

「…ゎぃ…」

「…え?なんです?」


 「…こゎぃこわいこわいッ!!何あれッ!!;出産ってあんな痛いの?!
嫌だ!逃げなきゃ…逃げなきゃ…!」

「ええ?!;ちょ、まさか、こわいから逃げ出しちゃったんですか?!;猫ですか貴女は!;」

「知らないかもしれないけどおばさんだってけっこう強いのよ?!それがあんなに痛そうに…
無理無理無理!!;俺には無理!!;」

「っだからって逃げてどうなるんです!;
っ戻りますよホラっ!;
っホラ…!;
っ…ああもう!力が強いっ!!;」

「ふえぇん…こわい…出産こわいよぉ…
( ´;ω;` )」


善くも悪くも止められないこの聖母に、今日も嘆くジブリエラ
(…oh my God…)

Please don't continue(;^ω^)
⚠注意⚠
※この聖母には独自の解釈が含まれています!!実際にちゃんと敬って尊んでおられる方々にケンカを売る意図は八百万の神に誓ってございません!
洗礼者と救世主の関係性は原典通りです。
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