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聖母()
聖告Ⅳ
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『Mobius Cross_メビウスクロス徒然:聖告Ⅳ』
聖母、マタニティブルーになる。
「はあぁぁぁあ~こわい!出産こわい…。
どうすりゃいいんだ…」
聖母ヤリマは親戚の出産に立ち会い、出産に対してビビりまくっていた。
「も~;今更どうにもてきませんから;
エリザも言ってたでしょう?貴女は問題なく産めますから…!;」
「こわすぎて…
タマってる筈なのに男をひっかける気にもなんねー!」
(…一生妊娠していた方が良いのでは…
…ハッ!;
いけないいけない!;それじゃ人類が滅ぶ!;主よお赦しを;)
「くそっ!コイツ!
堕りろ!俺を開放しろ!できるだけ楽に!」
ドスドスと腹を殴るヤリマ。
「うぅ…イテテ…」
「ちょッ!!バカなことはやめてください!!;」
「ちくしょう…なんでコイツ殴りたいのに俺が代わりに痛みを負わなきゃいけないの…いてぇ…いてぇ…」
『…いたい…いたい…』
「…?
…ジブリエラ、何か言った?」
「今のは赤ちゃんの声ですよ。」
「は?!?
胎児って喋んの??!」
「神の子ですから!」
「ッきっっもちわるっっ!!!バケモンじゃねーか!!シね!母の為にシね!」
ヤリマが再び拳を振り上げると…
『気の毒だ』
と腹の子が言った。ヤリマがピクリと止まる。
『お袋様が気の毒だ…。
私を宿したばかりに…。
わかるんだ…
お袋様の怒りも…戸惑いも…恐怖も…
全て私に流れ込んでくるから…。
ごめんよお袋様…。迷惑ばっかりかけて…依存してばかりでごめんよ…。』
「…てめぇ…栄養だけじゃなく感情も吸ってやがったのか…。」
『ごめん…。
…だからこそわかるんだ…
お袋様が強いこと、優しいこと、愛の内在値が高いこと…。
私のせいでどれだけ苦しんでいるかも…』
「慈悲深い子なのです…。余計に苦しめてはなりません、ヤリマ…。」
「…痛…。生まれてもないくせにナマ言ってんじゃないわよ…。
…お前…、“心”はいつ頃生まれたの…?」
『…生まれたというか…
始めはお袋様そのものだった。
そこに神の種がやって来て、一部をつまみ上げて混ざるのを客観的に見ていた。
そのつまみ上げた部分にも意識を注げるようになった。
自由に行き来できたそこは次第に私の居心地が良い場所になった。
気づいたらお袋様とは別の意識が有って、いつしかそれが“自分”になっていた…。
だから“この時に生まれた!”とは言えないなぁ…』
告知天使であり、この世のおおよそ全ての事を知っているジブリエラでさえ、興味深い話だった。
生命はどの段階で“自分”足り得るのか。
胎児として脳が形成された時か、もしくは卵子、あるいは精子として親の体内で分裂を果たした時か、はたまた、生まれる遙か前から実は自分という存在は有ったのか…
神の子に限らず、全ての生命が自我の誕生の記憶を自由自在に遡れたなら…
“全能”…とは言わずとも、“全知”には辿り着けるのかも知れない…
『私の記憶はほぼお袋様の記憶…いつだったか…しいて…私が初めて明確に“わからない”と思ったお袋様の言葉は…』
ジブリエラは津々と聴き入る…!
『「まーいーや。
ほどよく萌えたし○○ってひと眠りするか」だよ。』
ッブーーーーーッ!!!!!!;;;;;;;;;;;
ジブリエラ盛大に吹き出す
「っコラっ!!///;;神の子っ!!///;;」
『お袋様わからないんだ。○○るってナニ??』
「賢者の哲学だよ。」(即答)
『さすがお袋様だなぁ。』
「見所あるなお前。またお前にも教えてやるよ。イテテ…」
「た、胎児にそんなこと教えないで下さいっ!!///;;」
「っるせえなあ。。生き物なんて食って寝て○○ってヤッてりゃじゅーぶんでしょ。…シー…いっった…。。」
「?…ヤリマ?大丈夫ですか?」
「ぁー…ん…。おっかしいな…強く殴り過ぎたか…? (笑)
…いてて…」
「!…ヤリマ…まさか…!!」
『!お袋様!なんか変だ…!
私…
なんだか急に…
猛烈に…
此処に居たくない…!!!』
「ヤリマに陣痛…!?
生まれるのは近日正午の筈…
い、いえ!今はそんなこと言ってる場合じゃない…!」
旅路の夜更け。
近くに宿や家は無かったが、家畜小屋を見つけて駆け込んだ。
褥草を集めて拵えたベッドに座り込むヤリマ。
陣痛の波は寄せては返し…徐々に間隔を短くしてくる…
「ハア…!ハア…!
ジブリエラ…!痛い…どうしよう…どんどん痛くなる…!死ぬ…!死ぬ…!!」
「大丈夫ですヤリマ!貴女は強い女性です!必ず乗り越えられられます!落ち着いて、浅く吸って、深く吐いてを繰り返してください。そうすれば必ず開放されます!」
「ひ、ひぃ…!!
ほ、骨がぁ…!股の骨が割れるぅ…!!」
「大丈夫!圧迫されてるだけです!終わりの兆候です!
それより、人を呼びますので少し手を離してください!;」
「い、イヤ…!一人にしないで…!!」
「もうっ!今貴女は一人じゃないでしょう!
ごめんなさい!」
そう言ってジブリエラは、ヤリマの小指を握って引き剥がすように手を離させた。
どうせ鎖の長さしか離れられないがそれで十分!
ジブリエラは小屋の外に体を出し、息をすっと吸い込み祈った。
すると…
__キカアアアアーーーーッッ!!!!__
ジブリエラの体が光り輝き夜を照らす!その輝きに誘われて、不寝番をしていた羊飼い達が恐る恐る近づいてきた。
「恐れるな民達よ。
今宵この場で奇跡の子が誕生する。
あなたとあなたは私と共に中へ、あなたは仲間や助産の知恵がある者を呼びなさい。」
羊飼い達は小屋の中に入り、ヤリマの姿を見て大層驚いたが、すぐに駆け寄って手を握ってくれたり、背中をさすったりしてくれた。
「ヤリマ!皆奇跡の子の誕生を助けてくれようとしています!」
ジブリエラも励ますが、ヤリマの痛みはいまだレベルを上げ続けていた。
「ぐハッ…!ハッ…!!もうダメッ…!!死ぬ!ほんとに死ぬ…!」
恰幅の良い羊飼いは声をかける
「嬢ちゃん大丈夫だ!今皆が来てくれる!安心して産め!」
「い、痛いの…!腹裂けて死ぬ…!こんなの…!」
「痛みわかってやれねえのが辛えが嬢ちゃん!勇気出せ!俺の顔見ろ!」
「ハァッ…!ハァ…
…
い、イイ男ぉ……!♡
な、なんであなた達…
見ず知らずのわたくしの為に、そこまで…?」
…奇跡の子だから…??
「何言ってんだい!“人類皆きょうだい”だろ!きょうだいが生まれようとしてんだ、助けるのは当たり前だろ!」
ヤリマは思った!
…あぁ…生き延びたらこの男も抱こう…
そうこうしているうちに、さらに女達も駆けつけてきた!
「よっしゃ!男共は出な!湯を沸かしてぬるくしとくんだよ!
お嬢ちゃん私らが来たからには安心しな!合計で二十人は産んでるベテランさね!」
ぅゎベテランこころづょぃ!
ヤリマはちょっと笑ってしまった!
それにしても…痛みはまだまだ強くなる!
…なんでこんなに痛いんだ!
なんで女が!
なんでわざわざ!
こんな苦しい思いして産むように造った!!
バカか?神!!
ジブリエラも再びヤリマの手を握り勇気づける!
「ヤリマ!間もなく山場です!赤ちゃんの頭が小袋の口を抜けます!そこを耐えれば勝利は目前です!」
「ひ痛"ぁぁあ!!ひ、ひ、ヒギィィィッ!!!」
「頑張るのです!
赤ちゃんの方が辛いのですよ!!」
…なんだって…?!
ヤリマは声を殺し、腹の子の声に意識を向ける…
すると感じ取れる…!
…さっきから黙ってると思ったらコイツ、俺が感じてるお産の痛みを共有しながら、
自分の頭蓋が押しつぶされる痛みを同時に感じてやがる…!!
しかもそんな中でコイツ…
『ごめんよお袋様…!こんなに痛い思いをさせて…こんなに苦しい思いをさせて…
私なんてできなければよかったんだ!
それでも宿してくれた恩に報いる為に、例えこの頭が潰れても、お袋様を楽にしてあげるんだ!限界まで絞るんだ…!』
…んなこと考えてやがったか…
「…へ!…へへッ…!
ナメんなよ!
羊水臭いガキに気い使わせるほど、堕ちちゃいねえんだよ…!!
黙ってひり出されてな!!
おおおお!いっってえええてなああああああちくしょッ!!!!!!」
『お袋様…!お袋様!!有り難う!有り難う!!』
「黙れっつってんだ!」
ボコ!
ヤリマの拳が出た!
「ヤリマ!?出産中に我が子を殴るなんて!」
___言いかけてジブリエラは気づく!
…違う!ヤリマは自分の足を殴っているんだ!
痛みに耐える為、自分を、吾が子を鼓舞する為…!
「ヤリマ!鼻が抜けました!いけます!!」
「いっっでぇええけど合わせろガキ…!!」
『お袋様ッ!!今いくよ!お袋さ…!!!』
『オギャアッ!オギャアッ!オギャアッ!」
…
ヤリマは汗ぐっしょりな前髪の中、薄目を開け、疲労困憊ながら、全てから開放されたような顔で息をしていた。
ジブリエラによって持ち上げられたその子が、ヤリマの顔の横に寝かされる。今までずっと一緒に居たわけだが、“こちら”では初お目見えなわけで…
そのしわっくちゃな小さな小さな顔…目も開けずに口を動かしてる。
ふやけきってるのか干からびてるのか、とにかく小さな手、こっちの指を力強く握ってくる。
「…なんだよ…
思ったより…
イイ男じゃないの…」
ヤリマは何故だが涙が止まらなかった。
その夜その家畜小屋からは、祭でもやってるのかというくらいの歓声が隣村まで聞こえたという。
程なくして、目を腫らしたジブリエラが祝福する。
「聖母ヤリマ。よくがんばりました。神も祝福しています。
その神の子は紛れもなく、世を救い人を救う、救世主となるでしょう。
神から名を授かっています。
その子の名は…」
「ランスだ…。」
「え…?ちょっ…と違いますね。。;
神から与えられた、全てを肯定し祝福するかのような名が…」
「バカねえ?
神の名なんて知らないわよ…俺は教養が無いんだ…
俺が産んだ俺の子なんだから、俺が名付けるでしょ…」
「…わかりました…。
神には私から言っておきます…。
…ランス…
それも素敵な名ですね…。
どのような意味を込めてその名を?」
…また学が無いから大した意味は無い…なんて言うんだろうなと想像しながらジブリエラは問いかけた。
するとヤリマは、全てを悟った天人のような表情でこう答えた。
「決まってるじゃない…
槍のようなイチモツで数多の女をヒイヒイ悦ばせる!そんな男にふさわしい名!
がんばれっ!ランス!」
(…oh my God…)
Please don't continue(;^ω^)
⚠注意⚠
※この聖母には独自の解釈が含まれています!!実際にちゃんと敬って尊んでおられる方々にケンカを売る意図は八百万の神に誓ってございません!
聖母、マタニティブルーになる。
「はあぁぁぁあ~こわい!出産こわい…。
どうすりゃいいんだ…」
聖母ヤリマは親戚の出産に立ち会い、出産に対してビビりまくっていた。
「も~;今更どうにもてきませんから;
エリザも言ってたでしょう?貴女は問題なく産めますから…!;」
「こわすぎて…
タマってる筈なのに男をひっかける気にもなんねー!」
(…一生妊娠していた方が良いのでは…
…ハッ!;
いけないいけない!;それじゃ人類が滅ぶ!;主よお赦しを;)
「くそっ!コイツ!
堕りろ!俺を開放しろ!できるだけ楽に!」
ドスドスと腹を殴るヤリマ。
「うぅ…イテテ…」
「ちょッ!!バカなことはやめてください!!;」
「ちくしょう…なんでコイツ殴りたいのに俺が代わりに痛みを負わなきゃいけないの…いてぇ…いてぇ…」
『…いたい…いたい…』
「…?
…ジブリエラ、何か言った?」
「今のは赤ちゃんの声ですよ。」
「は?!?
胎児って喋んの??!」
「神の子ですから!」
「ッきっっもちわるっっ!!!バケモンじゃねーか!!シね!母の為にシね!」
ヤリマが再び拳を振り上げると…
『気の毒だ』
と腹の子が言った。ヤリマがピクリと止まる。
『お袋様が気の毒だ…。
私を宿したばかりに…。
わかるんだ…
お袋様の怒りも…戸惑いも…恐怖も…
全て私に流れ込んでくるから…。
ごめんよお袋様…。迷惑ばっかりかけて…依存してばかりでごめんよ…。』
「…てめぇ…栄養だけじゃなく感情も吸ってやがったのか…。」
『ごめん…。
…だからこそわかるんだ…
お袋様が強いこと、優しいこと、愛の内在値が高いこと…。
私のせいでどれだけ苦しんでいるかも…』
「慈悲深い子なのです…。余計に苦しめてはなりません、ヤリマ…。」
「…痛…。生まれてもないくせにナマ言ってんじゃないわよ…。
…お前…、“心”はいつ頃生まれたの…?」
『…生まれたというか…
始めはお袋様そのものだった。
そこに神の種がやって来て、一部をつまみ上げて混ざるのを客観的に見ていた。
そのつまみ上げた部分にも意識を注げるようになった。
自由に行き来できたそこは次第に私の居心地が良い場所になった。
気づいたらお袋様とは別の意識が有って、いつしかそれが“自分”になっていた…。
だから“この時に生まれた!”とは言えないなぁ…』
告知天使であり、この世のおおよそ全ての事を知っているジブリエラでさえ、興味深い話だった。
生命はどの段階で“自分”足り得るのか。
胎児として脳が形成された時か、もしくは卵子、あるいは精子として親の体内で分裂を果たした時か、はたまた、生まれる遙か前から実は自分という存在は有ったのか…
神の子に限らず、全ての生命が自我の誕生の記憶を自由自在に遡れたなら…
“全能”…とは言わずとも、“全知”には辿り着けるのかも知れない…
『私の記憶はほぼお袋様の記憶…いつだったか…しいて…私が初めて明確に“わからない”と思ったお袋様の言葉は…』
ジブリエラは津々と聴き入る…!
『「まーいーや。
ほどよく萌えたし○○ってひと眠りするか」だよ。』
ッブーーーーーッ!!!!!!;;;;;;;;;;;
ジブリエラ盛大に吹き出す
「っコラっ!!///;;神の子っ!!///;;」
『お袋様わからないんだ。○○るってナニ??』
「賢者の哲学だよ。」(即答)
『さすがお袋様だなぁ。』
「見所あるなお前。またお前にも教えてやるよ。イテテ…」
「た、胎児にそんなこと教えないで下さいっ!!///;;」
「っるせえなあ。。生き物なんて食って寝て○○ってヤッてりゃじゅーぶんでしょ。…シー…いっった…。。」
「?…ヤリマ?大丈夫ですか?」
「ぁー…ん…。おっかしいな…強く殴り過ぎたか…? (笑)
…いてて…」
「!…ヤリマ…まさか…!!」
『!お袋様!なんか変だ…!
私…
なんだか急に…
猛烈に…
此処に居たくない…!!!』
「ヤリマに陣痛…!?
生まれるのは近日正午の筈…
い、いえ!今はそんなこと言ってる場合じゃない…!」
旅路の夜更け。
近くに宿や家は無かったが、家畜小屋を見つけて駆け込んだ。
褥草を集めて拵えたベッドに座り込むヤリマ。
陣痛の波は寄せては返し…徐々に間隔を短くしてくる…
「ハア…!ハア…!
ジブリエラ…!痛い…どうしよう…どんどん痛くなる…!死ぬ…!死ぬ…!!」
「大丈夫ですヤリマ!貴女は強い女性です!必ず乗り越えられられます!落ち着いて、浅く吸って、深く吐いてを繰り返してください。そうすれば必ず開放されます!」
「ひ、ひぃ…!!
ほ、骨がぁ…!股の骨が割れるぅ…!!」
「大丈夫!圧迫されてるだけです!終わりの兆候です!
それより、人を呼びますので少し手を離してください!;」
「い、イヤ…!一人にしないで…!!」
「もうっ!今貴女は一人じゃないでしょう!
ごめんなさい!」
そう言ってジブリエラは、ヤリマの小指を握って引き剥がすように手を離させた。
どうせ鎖の長さしか離れられないがそれで十分!
ジブリエラは小屋の外に体を出し、息をすっと吸い込み祈った。
すると…
__キカアアアアーーーーッッ!!!!__
ジブリエラの体が光り輝き夜を照らす!その輝きに誘われて、不寝番をしていた羊飼い達が恐る恐る近づいてきた。
「恐れるな民達よ。
今宵この場で奇跡の子が誕生する。
あなたとあなたは私と共に中へ、あなたは仲間や助産の知恵がある者を呼びなさい。」
羊飼い達は小屋の中に入り、ヤリマの姿を見て大層驚いたが、すぐに駆け寄って手を握ってくれたり、背中をさすったりしてくれた。
「ヤリマ!皆奇跡の子の誕生を助けてくれようとしています!」
ジブリエラも励ますが、ヤリマの痛みはいまだレベルを上げ続けていた。
「ぐハッ…!ハッ…!!もうダメッ…!!死ぬ!ほんとに死ぬ…!」
恰幅の良い羊飼いは声をかける
「嬢ちゃん大丈夫だ!今皆が来てくれる!安心して産め!」
「い、痛いの…!腹裂けて死ぬ…!こんなの…!」
「痛みわかってやれねえのが辛えが嬢ちゃん!勇気出せ!俺の顔見ろ!」
「ハァッ…!ハァ…
…
い、イイ男ぉ……!♡
な、なんであなた達…
見ず知らずのわたくしの為に、そこまで…?」
…奇跡の子だから…??
「何言ってんだい!“人類皆きょうだい”だろ!きょうだいが生まれようとしてんだ、助けるのは当たり前だろ!」
ヤリマは思った!
…あぁ…生き延びたらこの男も抱こう…
そうこうしているうちに、さらに女達も駆けつけてきた!
「よっしゃ!男共は出な!湯を沸かしてぬるくしとくんだよ!
お嬢ちゃん私らが来たからには安心しな!合計で二十人は産んでるベテランさね!」
ぅゎベテランこころづょぃ!
ヤリマはちょっと笑ってしまった!
それにしても…痛みはまだまだ強くなる!
…なんでこんなに痛いんだ!
なんで女が!
なんでわざわざ!
こんな苦しい思いして産むように造った!!
バカか?神!!
ジブリエラも再びヤリマの手を握り勇気づける!
「ヤリマ!間もなく山場です!赤ちゃんの頭が小袋の口を抜けます!そこを耐えれば勝利は目前です!」
「ひ痛"ぁぁあ!!ひ、ひ、ヒギィィィッ!!!」
「頑張るのです!
赤ちゃんの方が辛いのですよ!!」
…なんだって…?!
ヤリマは声を殺し、腹の子の声に意識を向ける…
すると感じ取れる…!
…さっきから黙ってると思ったらコイツ、俺が感じてるお産の痛みを共有しながら、
自分の頭蓋が押しつぶされる痛みを同時に感じてやがる…!!
しかもそんな中でコイツ…
『ごめんよお袋様…!こんなに痛い思いをさせて…こんなに苦しい思いをさせて…
私なんてできなければよかったんだ!
それでも宿してくれた恩に報いる為に、例えこの頭が潰れても、お袋様を楽にしてあげるんだ!限界まで絞るんだ…!』
…んなこと考えてやがったか…
「…へ!…へへッ…!
ナメんなよ!
羊水臭いガキに気い使わせるほど、堕ちちゃいねえんだよ…!!
黙ってひり出されてな!!
おおおお!いっってえええてなああああああちくしょッ!!!!!!」
『お袋様…!お袋様!!有り難う!有り難う!!』
「黙れっつってんだ!」
ボコ!
ヤリマの拳が出た!
「ヤリマ!?出産中に我が子を殴るなんて!」
___言いかけてジブリエラは気づく!
…違う!ヤリマは自分の足を殴っているんだ!
痛みに耐える為、自分を、吾が子を鼓舞する為…!
「ヤリマ!鼻が抜けました!いけます!!」
「いっっでぇええけど合わせろガキ…!!」
『お袋様ッ!!今いくよ!お袋さ…!!!』
『オギャアッ!オギャアッ!オギャアッ!」
…
ヤリマは汗ぐっしょりな前髪の中、薄目を開け、疲労困憊ながら、全てから開放されたような顔で息をしていた。
ジブリエラによって持ち上げられたその子が、ヤリマの顔の横に寝かされる。今までずっと一緒に居たわけだが、“こちら”では初お目見えなわけで…
そのしわっくちゃな小さな小さな顔…目も開けずに口を動かしてる。
ふやけきってるのか干からびてるのか、とにかく小さな手、こっちの指を力強く握ってくる。
「…なんだよ…
思ったより…
イイ男じゃないの…」
ヤリマは何故だが涙が止まらなかった。
その夜その家畜小屋からは、祭でもやってるのかというくらいの歓声が隣村まで聞こえたという。
程なくして、目を腫らしたジブリエラが祝福する。
「聖母ヤリマ。よくがんばりました。神も祝福しています。
その神の子は紛れもなく、世を救い人を救う、救世主となるでしょう。
神から名を授かっています。
その子の名は…」
「ランスだ…。」
「え…?ちょっ…と違いますね。。;
神から与えられた、全てを肯定し祝福するかのような名が…」
「バカねえ?
神の名なんて知らないわよ…俺は教養が無いんだ…
俺が産んだ俺の子なんだから、俺が名付けるでしょ…」
「…わかりました…。
神には私から言っておきます…。
…ランス…
それも素敵な名ですね…。
どのような意味を込めてその名を?」
…また学が無いから大した意味は無い…なんて言うんだろうなと想像しながらジブリエラは問いかけた。
するとヤリマは、全てを悟った天人のような表情でこう答えた。
「決まってるじゃない…
槍のようなイチモツで数多の女をヒイヒイ悦ばせる!そんな男にふさわしい名!
がんばれっ!ランス!」
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