VRMMOの世界に私だけ閉じ込められてしまいました

べちてん

文字の大きさ
9 / 16

第9話

しおりを挟む
 くろねから装備を借り、早速8層へ向かって進むことにした。
 彼女曰く、彼女は既に10層まで到達しているらしく、本当なら付いていきたいところだったのだが、生憎用事があるそうで付いては来られないらしい。
 代わりにということで、瑚岳の森までへの行き方や注意点などを教えて貰った。

 昨晩しっかりと休んだため、体の疲労は回復している。
 くろねから借りた装備はなかなかに性能が良い。明らかに手に馴染むのだ。どうやらこれは彼女が趣味で作っていた装備らしい。彼女は職業が鍛冶師でありながら普段は別のことをゲーム内で行っているらしい。
 そのため、あまり店自体も開いていないのだとか。ただ、時間を見つけては店を開き、暇なときは趣味で武具を制作しているのだとか。そういったのが所属しているギルドの倉庫に山積みになっているそう。
 今回は先日作ってまだ持って行っていっていなかったものを貸してくれた。

 ちなみに、連絡が取れた方が便利だからということで、彼女とフレンド登録を済ませた。私のフレンド第1号だ。素材の採集が終わったら連絡して欲しいと言うことだ。
 フレンドになると、連絡を送り合えるほか、ログイン状況や名前、職業にレベル、所属ギルドなどを確認できる。
 ちょっくらくろねのものを見てみる。
 名前の横に付いている白い丸は、彼女がログイン状態であることを示している。この丸が黒くなればログアウト状態であるということを示している。

『○ 三嶋くろね【総合装備職人(鍛冶)】Lv.48 /〔三嶋商業会〕』

「総合装備職人?! な、なにこれ……」

 あまり聞くことのない本当に珍しい職業だ。
 このゲームには生産職のみ上位職が存在している。それもいくつか存在していて、その人のプレイスタイルによってその変化が変わっていく。
 彼女の場合は総合装備職人。これは、装備や武器を作る生産職の上位職の1つだ。簡単に言えば、元々選択していた職業が生産出来るもの以外にも生産ができるようになるという職業だ。
 つまりは、通常鍛冶師は金属系統のみで、布などで作る装備は作れないが、上位職になれば布などの装備も作れるということだ。
 装備全般が作れるようになる職業。これが総合装備職人だ。

 ちなみに、くろねは元々鍛冶師だったらしい。

 ていうかレベル48っていうのも明らかにおかしい数値だし、どういうことなのだろうか……。本当に凄腕の職人だったのだろう。
 生産職は戦闘職に比べてLvの上がり方などが異なるため、純粋に私のレベルとの比較は不可能だが、それでも十分に凄いのだ。

 そんな彼女から受けた依頼。こなしてみせようではないか。








 まずはさっくりと6層、7層を攻略していく。

 6層のボス部屋への入り口は、実はこの町の中にあるのだ。この町の中央に広がる大きな湖、この中にボス部屋への入り口がある。
 この中にといっても、潜っていくというわけではなく、湖の中央にぽつりと浮かんでいる島に行くだけだ。
 島へ行く方法はいくつかあって、1つは泳ぎ系統のスキルを獲得して泳いでいく、2つ目はクエストをクリアして船を借りるかのせて貰う。
 クエストの例としては、町の漁師に話しかけたら魚の数が減ってしまった的なことをいわれて、それを解決するとか、そういった感じ。いろいろ種類があるし、日によって変わるとか、運だとかいろいろあるらしい。

 3つ目は、その他だ。

 私は今回その他で行かせて頂く。

 偶然だが、攻略中に水蜘蛛というスキルを獲得しまして、これが水上歩行のスキルなのですな。そう、楽勝なのである。








 ぺちぺちと音を立てながら水上を歩き、湖の中央にある小島にやってきた。
 その小島には小さな神殿のようなものが建っていて、そこから地下へ向けた階段がのびている。
 島の大きさは本当に広くない。100人乗ったら大丈夫ではないレベルだ。そのため、本当に神殿を置くために、ボス部屋へ続く階段を作るためだけに作ったもののようだ。

 ちなみに、この湖は相当広いため、スキル無しで泳いでくるというのは不可能だと思う。
 おそらくそれができないようにゲームシステムでも調整が行われているはずだ。私は運が良かった。

「じゃあ、サクッと攻略しますか」








 くろねから聞いていたとおり、6層のボスはよく分からない魚の擬人化であった。
 鯛のような魚が頭を上にして立っていて、足と手が生えている。非常に気持ちが悪い。
 あんなに町は美しいのに、このボスモンスターで台無しだ。

 弱点はえらということで、えらの中に手を突っ込んで引きちぎれば倒せるそうなのだが……。

「いや、グロいでしょ」

 それをやった後の図があまりにもグロすぎて、私にそれはムリであった。どうやらくろねはなかなかにメンタルが強いらしい。



 地面には30センチほどの水が敷かれていて、溺れるというわけでは決してないのだが、足を取られて動きにくい。そのため、私は水蜘蛛のスキルを常時発動することになった。

 鯛型のモンスター、名前はオヨギタイというモンスターらしい。

「知らんわッ! 勝手に泳いどけ!!」

 どうやらひれの部分が手と足になっていて、上手く泳げないらしい。
 足を大きくバタバタさせながらこちらに向かってくる。その様子が非常に気持ち悪く、思わず1歩後退あとずさってしまった。



 この気持ち悪さに気を奪われていては話が進まないということで、借りたいつもより多少長めの忍者刀を握り、一気にそいつに向かって駆け寄っていく。
 途中、クナイを一発目ん玉めがけて投げてみたが、狙いがずれて躱されてしまった。

 横向きであれば太い図体も、正面から見れば非常に細い。市場であれば目利きから外れるような個体であり、極めて平のだ。

 こいつの実力が分からない以上、30分のクールタイムがある影移動はここぞというタイミングで使いたい。ここぞというミングでね。



 女忍者自慢の跳躍力を利用し、一気に詰めていく。そこで、若干横に逸らしながら相手の側面を突けるように意識する。
 タイは水をバシャバシャとまき散らしながら動き、手を水につけたかと思うと、その手の周辺には魔方陣が浮かび上がってきた。
 そして、私が歩行していた部分の水が一気に盛り上がると、思いっきり勢を崩されてしまう。

 このままではただ地面に打ち付けられてしまうだけ。それはできるだけ避けので、ここでさっさと影移動を使ってしまうことにした。
 せっかく借りたかっこいい忍者刀を、まさか魚を捌くのに使うことになるとは思っていなかったが、それも仕方がない。
 私は魚系お料理チャンネルをよく見ていたのだ。きまぐれに料理をするチャンネルをよく見ていた!
 いつもそれを見ては勝手に捌ける気になっていた。捌いたこともないのに。ではその腕、見せてやろうではないか。



 水蜘蛛のスキルを解除し、影移動を発動する。相手の行動が読めないので、影の中でとどまったりはせず、さっさと地上に上がる。
 上がってきた場所は鯛の真下で、私が上がると同時に鯛は空中に打ち上げられた。

「秘技、三枚おろしッ!!」

 私は動画で培った知識で、おなかを裂き、頭を下ろして三枚おろしにした。



 ボスを倒したことにより解除された実績が、私の画面の右上に表示された。

『アチーブメント:捌いていくっ! を解除しました』

「やかましいッ!」
   
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

親がうるさいのでVRMMOでソロ成長します

miigumi
ファンタジー
VRが当たり前になった時代。大学生の瑞希は、親の干渉に息苦しさを感じながらも、特にやりたいことも見つからずにいた。 そんなある日、友人に誘われた話題のVRMMO《ルーンスフィア・オンライン》で目にしたのは――「あなたが求める自由を」という言葉。 軽い気持ちでログインしたはずが、気づけば彼女は“ソロ”で世界を駆けることになる。 誰にも縛られない場所で、瑞希は自分の力で強くなることを選んだ。これは、自由を求める彼女のソロ成長物語。 毎日22時投稿します。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...