10 / 16
第10話
しおりを挟む
「ふーむ、これが瑚岳の森かぁ……」
瑚岳の森は、8層の4分の1ほどを占める非常に大きな森だ。
このゲームは下に降りれば降りるほど層の大きさが広くなっていて、8層の4分の1ほどと言えば、大体1層と同じくらいの大きさだ。
その1層と同等の大きさの森には、大小様々な木々が鬱蒼と生い茂っている。階段を下ってくるときに見たのだが、1層や2層で見たような森に比べて全体的に黒っぽい色をしていた。
6層のよう分からんネタボスを倒し、7層を突破するまでに大分時間が掛かってしまい、くろねを待たせてしまっている。
6層までは楽々突破出来たのだが、7層になってくるとフィールドを移動するのが大変で、出てくるモンスターも強くなってきているので一苦労だった。
7層は初めの町からボス部屋までの距離が遠くて、マップ左下スタートで上側中央がボス部屋。移動に大分時間が掛かったのだ。
途中クエストに引っかかり、橋が落ちてその復旧クエストで大分時間を取られてしまった。まあスキルを手に入れられたので別に良いのだが。
ちなみに8層はそれよりかはマシで、下寄り中央スタートの上寄り中央がゴールだ。
瑚岳の森は左下の方に広がっている森なので、普段のボス部屋一直線ルートでは通らない場所にある。あまり道から逸れて、いや、道を逸れまくって一直線でボス部屋まで行くという攻略方式をとっていたせいで、こういった森にはあまり来られていなかったのだ。
こういう機会だし、思う存分楽しみながら攻略したいと思っている。
いざ森へやってきたが、森内部は樹海のようになっていた。
苔むした美しい森だが、所によっては薄く霧がかっていて、どこか不気味な雰囲気を醸し出している。
森の中にはオオカミの声が響く。おそらくこれが私が狙っている黒牙狼の鳴き声なのだろう。
森の中央部には岩場が広がっていて、そこにはゴーレムが出没するらしい。ただ、今回はあまり興味がないので立ち寄らず、さっさと黒牙狼を討伐する。ちなみに、ゴーレムは通常のロックゴーレムの他に特殊ゴーレムが存在している。
特殊ゴーレムの例としてアイアンゴーレムや、ジオードゴーレムなんかが当てはまる。
これらは生産職向けに非常に高く売れるそうなので、お金に困ったら是非討伐に来ようかなと思っている。
硬く倒すのが大変で、武器によっては耐久値の減りが凄いことになるそうなのだが……。
この森には影が多い。したがって影移動を利用する点が多く、非常に戦闘しやすい。入り組んだ木々や、薄い霧も女忍者にとっては戦いやすいフィールドだ。
ただ、岩が露出し、そこに苔が生えている森の中は、つるつるとして歩きにくい。そのため、ここはスキルを使って効率的に移動をすることにした。戦闘時も足を滑らせないよう、気をつける必要がありそうだ。
「テレステップ」
8層へやってくるまでの間に新しくテレステップというスキルを入手した。例のクエストのクリア報酬である。
テレステップというのは、簡単に言うと影移動の影に潜らないバージョンと行った所だろうか。視界の範囲に自由にテレポートみたいに飛ぶことができる。
クールタイムはテレポートした距離によって変わるのだが、このように木々が生い茂っている地形の場合、クールタイムを加味してもこれでステップ移動をした方が早い。
今までの影移動と違って視界が真っ黒にならないので非常に扱いやすい。問題は体勢が固定されてしまうということだろう。椅子に座った状態で発動すれば、空気椅子状態の完成だ。尻もちをついてしまう。
そのため、使いどころは考える必要がありそう。少しジャンプしながら発動すると良さそうだ。
森の少し奥にやってきた。女忍者特有の感覚なのだろうか。付近に敵がいる気配を感じる。
周辺の巨木の枝に上がり、そこでじっと耳を澄ませると、目を閉じていても森の中の様子を把握出来る。
ガサガサと揺れる木々の音の隙間、ゴソゴソと地面を何者かが歩く音がする。
数は2、いや3だろう。大きさはそこそこ。全長は私より大きいだろう。ゴーレムほど大きくはなさそうだ。おそらくコイツが黒牙狼なのだろう。
黒牙狼は瑚岳の森においては昼夜問わず出没するのだ。
私の背中、茂る木々の合間合間にこちらを様子をうかがう視線。一気にけりをつける。
私の今のレベルは27。8層の推奨レベル、出てくるモンスターの平均レベルを考えても十分対応出来る。オオカミ型のモンスターは既に戦闘済みだ。
気をつけるは口元に付いた大きな牙。噛まれるところによれば一気にHPを持って行かれるだろう。
ならば噛まれなければ良いだけ。
よしっと気合いを入れ、一気に後方へとステップを踏む。
「見えた! 3匹!」
自慢の脚力により飛び上がった際、体をひねらせて視界の中央に真っ黒なオオカミ型のモンスターを3匹捕らえた。
特徴的な真っ黒い2本の牙は、そいつらが黒牙狼で間違いないことを教えてくれている。
私が飛び上がったのを見て、上方向への攻撃に弱いオオカミ型のモンスターは、ずるっと地面を踏ん張るように後ずさりした。その目は私を追っている。
大きく体をひねらせ、空中で姿勢を変えると、そのままテレステップを発動して3体の黒牙狼の付近にある木の幹にとんだ。
そのまま太い幹を蹴り上げて一気に1匹の黒牙狼めがけて突っ込んでいく。
必要な牙の数は2本。ドロップ率を考えても十分3匹で事足りる!
くろねにもらった純白の美しい日本刀が、木漏れ日を反射しキラリと光る。その光は、吸い込まれるように黒牙狼の漆黒へ埋まっていき、そのまま首をかり落とす。
「おお、切れ味えぐ……」
あまりの切れ味に驚いていると、他の2体がこちらめがけて飛び込んできたので、スキルを使わず一気に後ろへ飛び上がる。
服の内側からクナイを取り出すと、それを黒牙狼めがけて投げる。
惜しくも外れたクナイは、地面に突き刺さるとそのまま私の手の中へと戻ってきた。
それが戻ってくると同時に、影移動を発動して黒牙狼の影へと潜ると、飛び上がるように勢いよく飛び出し、肉を切り裂いた。
「えぇ……、んなことある??」
すぐに終わった戦闘。キラキラとエフェクトを出しながら消滅した3体の黒牙狼。
ドロップ率80%を超える黒牙狼の牙が1つもドロップしなかった。
「なんでぇ?」
瑚岳の森は、8層の4分の1ほどを占める非常に大きな森だ。
このゲームは下に降りれば降りるほど層の大きさが広くなっていて、8層の4分の1ほどと言えば、大体1層と同じくらいの大きさだ。
その1層と同等の大きさの森には、大小様々な木々が鬱蒼と生い茂っている。階段を下ってくるときに見たのだが、1層や2層で見たような森に比べて全体的に黒っぽい色をしていた。
6層のよう分からんネタボスを倒し、7層を突破するまでに大分時間が掛かってしまい、くろねを待たせてしまっている。
6層までは楽々突破出来たのだが、7層になってくるとフィールドを移動するのが大変で、出てくるモンスターも強くなってきているので一苦労だった。
7層は初めの町からボス部屋までの距離が遠くて、マップ左下スタートで上側中央がボス部屋。移動に大分時間が掛かったのだ。
途中クエストに引っかかり、橋が落ちてその復旧クエストで大分時間を取られてしまった。まあスキルを手に入れられたので別に良いのだが。
ちなみに8層はそれよりかはマシで、下寄り中央スタートの上寄り中央がゴールだ。
瑚岳の森は左下の方に広がっている森なので、普段のボス部屋一直線ルートでは通らない場所にある。あまり道から逸れて、いや、道を逸れまくって一直線でボス部屋まで行くという攻略方式をとっていたせいで、こういった森にはあまり来られていなかったのだ。
こういう機会だし、思う存分楽しみながら攻略したいと思っている。
いざ森へやってきたが、森内部は樹海のようになっていた。
苔むした美しい森だが、所によっては薄く霧がかっていて、どこか不気味な雰囲気を醸し出している。
森の中にはオオカミの声が響く。おそらくこれが私が狙っている黒牙狼の鳴き声なのだろう。
森の中央部には岩場が広がっていて、そこにはゴーレムが出没するらしい。ただ、今回はあまり興味がないので立ち寄らず、さっさと黒牙狼を討伐する。ちなみに、ゴーレムは通常のロックゴーレムの他に特殊ゴーレムが存在している。
特殊ゴーレムの例としてアイアンゴーレムや、ジオードゴーレムなんかが当てはまる。
これらは生産職向けに非常に高く売れるそうなので、お金に困ったら是非討伐に来ようかなと思っている。
硬く倒すのが大変で、武器によっては耐久値の減りが凄いことになるそうなのだが……。
この森には影が多い。したがって影移動を利用する点が多く、非常に戦闘しやすい。入り組んだ木々や、薄い霧も女忍者にとっては戦いやすいフィールドだ。
ただ、岩が露出し、そこに苔が生えている森の中は、つるつるとして歩きにくい。そのため、ここはスキルを使って効率的に移動をすることにした。戦闘時も足を滑らせないよう、気をつける必要がありそうだ。
「テレステップ」
8層へやってくるまでの間に新しくテレステップというスキルを入手した。例のクエストのクリア報酬である。
テレステップというのは、簡単に言うと影移動の影に潜らないバージョンと行った所だろうか。視界の範囲に自由にテレポートみたいに飛ぶことができる。
クールタイムはテレポートした距離によって変わるのだが、このように木々が生い茂っている地形の場合、クールタイムを加味してもこれでステップ移動をした方が早い。
今までの影移動と違って視界が真っ黒にならないので非常に扱いやすい。問題は体勢が固定されてしまうということだろう。椅子に座った状態で発動すれば、空気椅子状態の完成だ。尻もちをついてしまう。
そのため、使いどころは考える必要がありそう。少しジャンプしながら発動すると良さそうだ。
森の少し奥にやってきた。女忍者特有の感覚なのだろうか。付近に敵がいる気配を感じる。
周辺の巨木の枝に上がり、そこでじっと耳を澄ませると、目を閉じていても森の中の様子を把握出来る。
ガサガサと揺れる木々の音の隙間、ゴソゴソと地面を何者かが歩く音がする。
数は2、いや3だろう。大きさはそこそこ。全長は私より大きいだろう。ゴーレムほど大きくはなさそうだ。おそらくコイツが黒牙狼なのだろう。
黒牙狼は瑚岳の森においては昼夜問わず出没するのだ。
私の背中、茂る木々の合間合間にこちらを様子をうかがう視線。一気にけりをつける。
私の今のレベルは27。8層の推奨レベル、出てくるモンスターの平均レベルを考えても十分対応出来る。オオカミ型のモンスターは既に戦闘済みだ。
気をつけるは口元に付いた大きな牙。噛まれるところによれば一気にHPを持って行かれるだろう。
ならば噛まれなければ良いだけ。
よしっと気合いを入れ、一気に後方へとステップを踏む。
「見えた! 3匹!」
自慢の脚力により飛び上がった際、体をひねらせて視界の中央に真っ黒なオオカミ型のモンスターを3匹捕らえた。
特徴的な真っ黒い2本の牙は、そいつらが黒牙狼で間違いないことを教えてくれている。
私が飛び上がったのを見て、上方向への攻撃に弱いオオカミ型のモンスターは、ずるっと地面を踏ん張るように後ずさりした。その目は私を追っている。
大きく体をひねらせ、空中で姿勢を変えると、そのままテレステップを発動して3体の黒牙狼の付近にある木の幹にとんだ。
そのまま太い幹を蹴り上げて一気に1匹の黒牙狼めがけて突っ込んでいく。
必要な牙の数は2本。ドロップ率を考えても十分3匹で事足りる!
くろねにもらった純白の美しい日本刀が、木漏れ日を反射しキラリと光る。その光は、吸い込まれるように黒牙狼の漆黒へ埋まっていき、そのまま首をかり落とす。
「おお、切れ味えぐ……」
あまりの切れ味に驚いていると、他の2体がこちらめがけて飛び込んできたので、スキルを使わず一気に後ろへ飛び上がる。
服の内側からクナイを取り出すと、それを黒牙狼めがけて投げる。
惜しくも外れたクナイは、地面に突き刺さるとそのまま私の手の中へと戻ってきた。
それが戻ってくると同時に、影移動を発動して黒牙狼の影へと潜ると、飛び上がるように勢いよく飛び出し、肉を切り裂いた。
「えぇ……、んなことある??」
すぐに終わった戦闘。キラキラとエフェクトを出しながら消滅した3体の黒牙狼。
ドロップ率80%を超える黒牙狼の牙が1つもドロップしなかった。
「なんでぇ?」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
親がうるさいのでVRMMOでソロ成長します
miigumi
ファンタジー
VRが当たり前になった時代。大学生の瑞希は、親の干渉に息苦しさを感じながらも、特にやりたいことも見つからずにいた。
そんなある日、友人に誘われた話題のVRMMO《ルーンスフィア・オンライン》で目にしたのは――「あなたが求める自由を」という言葉。
軽い気持ちでログインしたはずが、気づけば彼女は“ソロ”で世界を駆けることになる。
誰にも縛られない場所で、瑞希は自分の力で強くなることを選んだ。これは、自由を求める彼女のソロ成長物語。
毎日22時投稿します。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。
branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位>
<カクヨム週間総合ランキング最高3位>
<小説家になろうVRゲーム日間・週間1位>
現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。
目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。
モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。
ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。
テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。
そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が――
「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!?
癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中!
本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ!
▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。
▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕!
カクヨムで先行配信してます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる