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第11話
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この世の中には“物欲センサー”と言うものが存在していることは、誰しもが知っている真実であろう。
もちろんそのセンサーを私が例外的に保持していないと言うことはなく、本日も遺憾なくその実力を発揮していた。
80%以上の確率でドロップするはずの黒牙狼の牙は、3匹倒してもドロップしなかった。そのため、やむなく森の中をさらに彷徨うことになったわけだが、その肝心の黒牙狼が一切現れなくなったのだ。
通常、黒牙狼は昼夜問わず出没するはずだが、まったく現れなかった。
ゲーマーとして、何か特殊なイベント、例えばエリアボスなどが現れるのではないかという思考が頭をよぎったが、まだ先行リリースという段階のため、それらはないという風に公言がなされている。従って、これは物欲センサーによる弊害なのだ。
さっさと2本の牙を手に入れて戻ろうと考えていたのにもかかわらず、結局2時間ほど森の中を彷徨うことになってしまった。
2本手に入れた段階ですぐくろねに連絡を入れる。名前の横にログイン表示があったことから、すぐにメッセージが帰ってきた。
先に店で待機しているということだったので、急いで6層へテレポートし、広場から走ってくろねの店へと向かった。商人は自分の店にテレポート出来るというものがあり、連絡を入れてすぐに店へと向かうことができる。つまりは待たせてしまっている可能性があるというわけだ。
ちなみに、そのテレポート機能は使えない場所などがあったりするので、ダンジョンからの緊急脱出用とか、そういったことにはあまり意味を成さないらしい。おとなしく脱出用アイテムを利用するそうだ。
店に入ると、以前のすす汚れの付いた鍛冶用の服とは違い、ダボッとしたかわいらしい服を着たくろねが、店の中に僅かに展示してある武器を見ながら立っていた。
「お疲れ。大分時間が掛かったね~」
「うん。行くまでに時間かかっちゃってね。でもちゃんと取ってきたよ」
「おお、ありがとありがと!」
そういうと、てとてとと足音を鳴らしながら店の中を移動し、いつもの定位置のようにカウンターの奥に立った。
その台の上に結局6本も入手することになった黒牙狼の牙を置くと、くろねはうれしそうに感嘆の声を漏らした。
森の中でアイテムボックスから取り出して見たときよりも艶があり、より漆黒に見えるのはこの室内が明るく照らされているからなのだろう。
6つ置かれた牙の内の1つを手に取ると、じっくりとなめ回すように全体を見回した。
「うんうん、品質も良いね。倒し方によってドロップ品は品質が変わるから。倒し方が上手だったみたいだね!」
「おお、ありがと。ていうか倒し方で品質変わるんだ」
「そうそう。例えば皮が欲しいのに、オオカミを真ん中でぶった切ったらそれは使えないでしょ? ドロップしてすぐにアイテムボックスに入っちゃうからあんまり分からないんだけど、実は1個1個ものが違うんだよ~」
知らなかった事実を聞いて、純粋に勉強になったと思った。
黒牙狼の口から大きく飛び出していたその牙は、確かに戦い方によっては傷が付いてしまいそうだと思った。戦う前から傷が付いていることもあるのだろう。
私の場合は1回目の戦闘である程度黒牙狼の攻撃パターンを学習したため、効率よくすぐに倒したのだ。あまり戦闘時間も長くなかった。
攻撃したのも首付近だったので、牙にはほとんどダメージが入らなかったらしい。どれも一定以上の品質を保っているそうだ。
「本当は2本で良いんだけど……、6本とも買い取っていいかな……?」
「全然良いよ! 使い道もないし。買い取ってくれるならうれしい!」
「ありがと~!」
そういうと頬を緩めて軽くぴょんと跳ねたくろねは、6本すべてをアイテムボックスにしまうと、お金の入った麻袋を私に差し出した。
そして、カウンターから身を乗り出して私に何かささやこうとしているが、身長が足りないみたいだったので私からその口元に耳を近づけた。
「ちょっと色付けといたよ」
そういうと、にひひとうれしそうに笑った。
「で、仕上がりまでどんくらい掛かりそう?」
「んーっとね、注文全部合わせると4日くらいかな? いつもはちゃちゃっと省略しながらやっちゃうんだけど、せっかくだからしっかり行程踏んで作りたいんだ!」
「わかった。丁寧に作ってくれるならこっちとしてもありがたいよ。じゃあできたらメッセ送って?」
「わかった!」
完成までの間は引き続きこの武器達は貸し出してくれるらしいが、しばらく動きっぱなしだったので、さすがに休暇を取ることにする。
しばらく休暇を取っても、一般リリース開始までには10層には十分到達可能だ。レベル上げをしていてもいいが、やはりここまでレベルが上がってくると1レベル上げるのにも相当時間が掛かってしまい、たとえこのまま10層へ向かってそこでレベル上げをしたとしても効率はあまり良くない。
ならばレベル上げも一般リリースが開始してからもっとモンスターの強い層で行うべきだ。戦闘戦闘であまりゲーム内の町なんかを回れていなかったので、この機会にいろいろ回ってみることにする。
もちろんそのセンサーを私が例外的に保持していないと言うことはなく、本日も遺憾なくその実力を発揮していた。
80%以上の確率でドロップするはずの黒牙狼の牙は、3匹倒してもドロップしなかった。そのため、やむなく森の中をさらに彷徨うことになったわけだが、その肝心の黒牙狼が一切現れなくなったのだ。
通常、黒牙狼は昼夜問わず出没するはずだが、まったく現れなかった。
ゲーマーとして、何か特殊なイベント、例えばエリアボスなどが現れるのではないかという思考が頭をよぎったが、まだ先行リリースという段階のため、それらはないという風に公言がなされている。従って、これは物欲センサーによる弊害なのだ。
さっさと2本の牙を手に入れて戻ろうと考えていたのにもかかわらず、結局2時間ほど森の中を彷徨うことになってしまった。
2本手に入れた段階ですぐくろねに連絡を入れる。名前の横にログイン表示があったことから、すぐにメッセージが帰ってきた。
先に店で待機しているということだったので、急いで6層へテレポートし、広場から走ってくろねの店へと向かった。商人は自分の店にテレポート出来るというものがあり、連絡を入れてすぐに店へと向かうことができる。つまりは待たせてしまっている可能性があるというわけだ。
ちなみに、そのテレポート機能は使えない場所などがあったりするので、ダンジョンからの緊急脱出用とか、そういったことにはあまり意味を成さないらしい。おとなしく脱出用アイテムを利用するそうだ。
店に入ると、以前のすす汚れの付いた鍛冶用の服とは違い、ダボッとしたかわいらしい服を着たくろねが、店の中に僅かに展示してある武器を見ながら立っていた。
「お疲れ。大分時間が掛かったね~」
「うん。行くまでに時間かかっちゃってね。でもちゃんと取ってきたよ」
「おお、ありがとありがと!」
そういうと、てとてとと足音を鳴らしながら店の中を移動し、いつもの定位置のようにカウンターの奥に立った。
その台の上に結局6本も入手することになった黒牙狼の牙を置くと、くろねはうれしそうに感嘆の声を漏らした。
森の中でアイテムボックスから取り出して見たときよりも艶があり、より漆黒に見えるのはこの室内が明るく照らされているからなのだろう。
6つ置かれた牙の内の1つを手に取ると、じっくりとなめ回すように全体を見回した。
「うんうん、品質も良いね。倒し方によってドロップ品は品質が変わるから。倒し方が上手だったみたいだね!」
「おお、ありがと。ていうか倒し方で品質変わるんだ」
「そうそう。例えば皮が欲しいのに、オオカミを真ん中でぶった切ったらそれは使えないでしょ? ドロップしてすぐにアイテムボックスに入っちゃうからあんまり分からないんだけど、実は1個1個ものが違うんだよ~」
知らなかった事実を聞いて、純粋に勉強になったと思った。
黒牙狼の口から大きく飛び出していたその牙は、確かに戦い方によっては傷が付いてしまいそうだと思った。戦う前から傷が付いていることもあるのだろう。
私の場合は1回目の戦闘である程度黒牙狼の攻撃パターンを学習したため、効率よくすぐに倒したのだ。あまり戦闘時間も長くなかった。
攻撃したのも首付近だったので、牙にはほとんどダメージが入らなかったらしい。どれも一定以上の品質を保っているそうだ。
「本当は2本で良いんだけど……、6本とも買い取っていいかな……?」
「全然良いよ! 使い道もないし。買い取ってくれるならうれしい!」
「ありがと~!」
そういうと頬を緩めて軽くぴょんと跳ねたくろねは、6本すべてをアイテムボックスにしまうと、お金の入った麻袋を私に差し出した。
そして、カウンターから身を乗り出して私に何かささやこうとしているが、身長が足りないみたいだったので私からその口元に耳を近づけた。
「ちょっと色付けといたよ」
そういうと、にひひとうれしそうに笑った。
「で、仕上がりまでどんくらい掛かりそう?」
「んーっとね、注文全部合わせると4日くらいかな? いつもはちゃちゃっと省略しながらやっちゃうんだけど、せっかくだからしっかり行程踏んで作りたいんだ!」
「わかった。丁寧に作ってくれるならこっちとしてもありがたいよ。じゃあできたらメッセ送って?」
「わかった!」
完成までの間は引き続きこの武器達は貸し出してくれるらしいが、しばらく動きっぱなしだったので、さすがに休暇を取ることにする。
しばらく休暇を取っても、一般リリース開始までには10層には十分到達可能だ。レベル上げをしていてもいいが、やはりここまでレベルが上がってくると1レベル上げるのにも相当時間が掛かってしまい、たとえこのまま10層へ向かってそこでレベル上げをしたとしても効率はあまり良くない。
ならばレベル上げも一般リリースが開始してからもっとモンスターの強い層で行うべきだ。戦闘戦闘であまりゲーム内の町なんかを回れていなかったので、この機会にいろいろ回ってみることにする。
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