異世界転生?いや面倒だから異世界の方がこっちに来い

川崎俊介

文字の大きさ
5 / 12

美少女vs天使

しおりを挟む
 すると次の瞬間、女の背後から、例のトカゲ型のモンスターが襲い掛かってきた。

「危ない!」

 進は思わずそう叫ぶ。が、

「邪魔」

そうとだけ呟くと、女はモンスターの頭に鉄拳を叩き込み、粉砕してしまった。それも前を向いたまま。

なんつー膂力をしてやがる。

そして、手を血塗れにしたまま、こちらへと歩み寄ってくる。

「不動進で間違いないわね?」

「は、は、はい!」

「悪いけど、あなたには少し眠っててもらうわ」

そう言って女はハンカチを取り出し、進の口にあてがおうとする。クロロホルムか何かだろうか?だが、

「はい!ストップストーップ!」

そこへエラールが割って入る。さすがは俺の守護天使。助かったぜ。

「進さんに危害を加えようとする者は私が許さないのです。あなた、いったい何者なのです?」

「私はAWF社傭兵部隊【レギオン】の隊長、水野春香よ」

女はそう名乗った。

「え、AWF社……?」

「詳細を話している暇はない。今はとにかく新たな異世界の召喚を防ぐため、その男の意識を絶たなければならない」

「気絶させるということですね。そうはいきません。私は進さんの身に一切の危害が加わらないようお守りするように神様から仰せつかっているのです。させるわけには……」

「ふぅん。じゃああたしとやろうってわけね」

 春香は好戦的な口ぶりでそう言う。

「そうするしかなさそうですね」

 エラールの方もやる気みたいだ。これは逃げないとな。

 春香はずんずんとこちらへ歩み寄り、進に手を伸ばそうとする。だがエラールがその腕を掴んだ。

「邪魔ね」

 そうとだけ言うと、春香はエラールの顔面に向けて強烈なパンチを繰り出した。だがすんでのところでエラールも避ける。

「ふん。モンスターの頭を粉砕するほどパンチでも、当たらなければ……」

 などとエラールが言っていると、春香は腰に向けて素早い蹴りを繰り出していた。エラールは避け切れず、進の部屋の壁を突き破り、隣の民家まで吹き飛ばされた。何という力だ。

 すると、土煙の向こうから光の矢が数本飛んできた。エラールの放ったものだろう。だが、春香は腰に付けた謎の装置のボタンを素早く押し、即座にバリアを展開した。その翡翠色のシールドのようなものに阻まれ、光の矢は折れて地に落ちた。

「聖魔法【サンクチュアリ】。このバリアの前ではあらゆる攻撃は意味をなさない」

「へぇ、聖魔法とは……人間風情がよくやりますね」

「言ってる場合? 炎魔法【フレイムバースト】」

 春香はベルトから短杖を取り出し、なんと炎魔法を放って見せた。巨大な火球が現れ、エラールを襲う。たしかどっかの傭兵部隊の隊長とか言ってたよな? そのいでたちは特殊部隊の隊員そのものだが、魔法まで使えるのか。

「天上魔法【エーテルキャンセラー】」

 だがエラールも負けてはいない。エラールがそう唱えると、灰色の障壁がドーム状に展開され、炎魔法をかき消した。

「へぇ、これが噂に聞く天上魔法ね。魔法を無効化するとは……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...