異世界転生?いや面倒だから異世界の方がこっちに来い

川崎俊介

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急襲

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 実際、二人のこめかみに手を当ててみると、脈があった。どうやら本当に生き返ったようだ。何にせよ、助かった。大事な家族の命が助かって。

「エラール……さん? でしたっけ。ありがとうございます。家族の命を救ってくださって」

 進はそう礼を言う。

「いえいえいいんですよ、このくらい。それに、助けてくれと祈ったのはあなたですよ? 私は神様を通してその祈りを受け取り、応えただけ。あなたが救ったようなものです」

「そ、そうなんですか……」

 ただ怯えていただけだったのだが、それに効果があったらしい。だがそれにしても、天使や神様が実在したとは……自分で神に祈っておいて思うのもなんだが、驚きだ。

「さて進さん、今世界は大変なことになっています。それを元に戻すにはあなたの協力が必要です。今すぐ私と……」

 エラールがそう言いかけた時、家の二階部分が吹き飛んだ。突然の轟音に、進は驚き縮こまる。見上げると、天を衝くような巨人が立っていた。さっきのは腕で二階部分を薙ぎ払ったのか。

「大丈夫です、進さん! あなたのことは必ず私がお護りします!」

 そう言うと、エラールは巨人の顔に向けて二発同時に矢を放った。その光の矢は精確に巨人の両目に突き刺さり、視界を奪った。

「グオァァァ!」

 巨人は苦痛のあまりめちゃくちゃに暴れまわる。

「天上魔法【セイントシールド】」

 エラールがそう唱えると、黄金色のバリアが展開され、進とその両親の3人を守った。巨人の腕が迫るが、このシールドに弾かれて通らなかった。これで安心だな。

 だが、二撃、三撃とエラールが矢を打ち込んでも、巨人はなかなか倒れない。

「このままじゃ埒があかないですね。では、この短剣で」

 そう言うと、エラールは腰に差した鞘から短剣を引き抜き、巨人の首元へと羽ばたく。すると、短剣には黄金の光が収束していく。どうやら天使のする攻撃は何でも金ピカらしい。そして、エラールがその光る短剣を振り抜くと、巨人の首は両断された。暴れ回っていた巨人の動きは、ようやく止まった。

「ふぅ、終わりましたね。さっきの話の続きですが、どうやら世界中でこのようなモンスターが跋扈しているようなのです。そして、この状況を造り出したのはおそらく……」

 エラールがそう言いかけた時、突然窓を蹴破る音がした。見ると、迷彩服に黒の防弾ベストを着こんだ女が立っていた。そして彼女はなぜか、背中にはヴァイオリンケースを背負っている。

「それはあなたよ」

 女はそう告げた。

どういうことだ? 世界をこんなにしたのは俺だというのか?
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