異世界転生?いや面倒だから異世界の方がこっちに来い

川崎俊介

文字の大きさ
3 / 12

天使降臨

しおりを挟む
進はそれを見るや否や、弾かれたようにリビングを飛び出し、部屋へとこもった。

すると数秒後、1階から二人分のおぞましい悲鳴が聞こえてきた。

「ま、まさかあれは人を食うのか?」

恐る恐る階段を降り、1階の様子を覗いてみる。すると、凄惨な光景が目に飛び込んできた。

それは、両親の死体だった。

首を噛みちぎられ、絶命している。進は血の海を目の前にして絶叫した。今日は休日で二人とも家にいたのが仇となったか。

いや、あのモンスターは外から来た。もはやどこにも安全な場所などないのかもしれない。

進は急いで部屋へ駆け戻ろうとする。悲しみなど感じている余裕は無かった。とにかく、どうにかして生き残らなければ。例のモンスターは進の気配を追って2階まで上って来たようだ。そして、部屋のドアを爪で引っ掻く音が響き渡る。

窓から外へ逃げるか?

そう思って外を見ると、同じような見た目のモンスターがうようよしていた。これでは逃げられない。

進はドアに鍵をかけると、クローゼットの中に隠れた。そして祈る。

「神様、神様、いるのなら私を助けてください。お願いです。今すぐ助けてください」

手を擦り合わせ、そう何度も繰り返し呟く。

すると、突然家が黄金色の光に包まれた。それは、クローゼットの中からでも確認できるほど強烈な光だった。

そして、閉じているはずの窓をすり抜け、一人の人間が部屋へと入ってきた。よく見ると、その人には翼があり、頭には光る輪っかがついている。そして身に纏っているのは古代ギリシャ人のような白いトーガ。

これはまさか……

「て、天使?」

「はい、その通りです! 私、神様から進さんを助けるよう言われて参りました。あなたの専属守護天使、エラールと申します」

天使はそう名乗った。

「さて、ではまず部屋の外のモンスターを片付けちゃいますか」

そう言うとエラールは光の弓矢を構え、ドア越しに3発の矢を放った。それはかなりの威力で、ドアを貫通し、モンスターに突き刺さったようだ。外からはモンスターの呻き声が聞こえてくる。

「はい、もう大丈夫ですよ」

そう言ってエラールはドアを開ける。ドアの向こうには、頭と両目を撃ち抜かれたモンスターが転がっていた。
これは助かったな。まさか本当に神への祈りが届くとは。願ったり叶ったりだ。

「さて、進さんの親御さんにも、蘇生魔法をかけてしまいましょう」

そう言ってエラールは1階へと降りていく。進の両親は急所を一撃でやられていた。本当に蘇生なんてことができるのか?

「天上魔法【レザレクション】」

エラールがそう唱えると、光の滝が降り注いだ。その黄金の光は進の両親の首元に降り注ぎ、傷を癒していく。流れ出た血液も、元の場所へと戻っていった。やがて、傷は完全に塞がり、何事も無かったかのように元通りになった。

「まさか……本当に蘇生を?」

「えぇ、できましたよ。今は二人とも眠っているだけです。確認してみてください」

 エラールはそう言って微笑む。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...