異世界転生?いや面倒だから異世界の方がこっちに来い

川崎俊介

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逆異世界召喚

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それより1時間前、不動進(ふどうすすむ)は、日課のオンラインゲームをプレイしていた。進が高2のときに引きこもりになってから3年。毎日欠かさずログインしていた。

勉強と人間関係。

どちらもついていけず引きこもりニートになった。

別に確固たる意志があってそうしたわけではない。

勉強の方は地道に努力をするということが徐々にできなくなってついていけなくなった。別に、勉強したって将来何の役にも立たないじゃないかとか、そういう信念があって止めたわけじゃない。

人間関係もそうだ。友達を作り、それを維持するという行為がだるくなって止めた。別に、友達なんかいらないとか、馴れ合いたくないとか、そういう特別な信条があったわけではない。

だからか、オンラインゲーム内でも彼はうだつが上がらなかった。地道なレベル上げといった努力もかったるいし、プレイヤー同士の暗黙のルールなどに気を遣うのも面倒だった。結局、ダメな奴はゲームの中でもダメだということだ。

そして呟く。

「あーあ、異世界に転生して活躍できたらな」

一度死んだ人間が努力もせずチートなスキルを得て異世界で無双する物語は、進の好みであった。だが、現実にそんなことがあり得るはずもない。それに、もしそれが実現するとしても、動きたくはないな。

「活躍はしたいけど、部屋からは出たくないんだよなぁ」

再びそう呟く。矛盾したことだ。

「あーあ、いっそ、異世界の方がこっちに来てくれないかな」

自分で言いつつも意味不明だと思う。異世界の方がこっちに来ようが、自分が異世界に転生しようが、同じことだ。

だが、それから30分後、進は明らかな異変に気付いた。

「これは……黒い雨? 火山灰か?」

よく見てみると違った。降り注ぐ火山灰のように見えたそれは、土の雨だった。既に道路に1mほど降り積もっていた。

「噴火……じゃないみたいだな。何だこれ?」

進は、窓の外に見える光景に戸惑っていた。今までこんな事例は見たことも聞いたこともない。

すると、ガシャン、と何かが潰れるような音がした。

見ると、向かい側の家が巨大な岩に潰されていた。進は驚きのあまり悲鳴をあげる。

何だかよく分からないが、今すぐ逃げないとヤバそうだ。進は1階のリビングへと下りる。降り積もった土は1階の窓の下半分ほどを覆い隠していた。この分じゃ、ドアも開かないだろう。

そんなことを考えていると次の瞬間、窓を蹴破って何者かが部屋に侵入してきた。

いや、人じゃない。動物だ。しかも見たことがない動物。

トカゲを巨大化させたような体躯に、銀色に光る鎧のような鱗。動物というよりモンスターだな。
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